Underwater Photographers from Around the World(第6回)

光と影の水中マジシャン 水中写真家、ヨーコ・サマー 〜Magician of Light and Shadow Underwater ~

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ウミウシ

今回、ご紹介させていただくのは、台湾人の水中カメラマン・ヨーコ・サマー (Yorko Summer)さんです。

ヨーコさんは、水中写真家だけでなく、 シニアダイビング・インストラクターやトラベル・ジャーナリストとして活躍しており、国際水中写真コンテストの審査員にも選ばれたことがあります。

さまざまな国や熱帯地域を旅するヨーコさんは、カラフルな水中環境や地平線のかなたにある多くの人類文化をカメラでとらえるのが最も好きだと言います。

また、水中生物などの被写体は特に派手で立派に見えるため、The Magician of Light and Shadow Underwater (光と影の水中マジシャン)というニックネームまでついています。

そんな「水中マジシャン」にじっくりお話を聞きました。

ヨーコ・サマー (Yorko Summer)

ヨーコ・サマー (Yorko Summer)

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The Magician of Light and Shadow Underwater、素敵な名前ですね。どういうきっかけでそんな名前がついたのでしょうか。

ヨーコ・サマー

どうでしょう、自分の水中写真がどんどん広まってから自然に生まれたニックネームだと思います。
写真の中で光をうまくとらえていて、それが魔法のようだと言われたこともありますので、おそらくそこからきていますが、実は今あまり使わない名前です。
魔法について何も知らないので、そんなニックネームがついて少し恥ずかしいのですが、自己紹介やプロフィールには一応入れるようにしています。

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どこでダイビングをはじめたのでしょうか。

ヨーコ・サマー

水中写真のキャリアはパラオで始まりました。

2002年から2007年までパラオにいて、その後 もっと多くの有名なダイビングスポットで写真を撮るようになり、フルタイムで水中写真家になったのです。
ダイビング本数はもう数えていないけど、5000本以上だと思います。

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長年に渡り写真はいっぱい撮っていますね。この写真について少し話してくれますか。

インドネシアのラジャ・アンパットで撮ったコロダイの群れ

ヨーコ・サマー

これは、インドネシアのラジャ・アンパットで撮ったコロダイの群れです。
忠犬のように、集まって近づいてきてくれました。

最近リバーボードでラジャ・アンパットに何回か行っていますが、さまざまな魚がいっぱいいますので、最も気に入っているダイビングスポットの一つです。

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魚の群れなどの被写体が好きなのでしょうか。

ヨーコ・サマー

いや、他にもいろいろな生き物の写真を撮っています。
例えば、このザトウクジラの写真を見てみてください。

ザトウクジラ

ヨーコ・サマー

クジラが好きじゃないダイバーっていないですよね!
水中でクジラに出会うその瞬間は、本当にワクワクするような感じでとても貴重な経験です。
このクジラはトンガで撮り、写真に見えるような泡を出してどんどん深いところまで泳いでいくと、一緒に についていきたいといつも思います。

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クジラが去っていく瞬間は悲しいですよね。一方でこのカメはすごく近くから撮っていますが、近づいてきたのでしょうか。

阿嘉島のカメ

ヨーコ・サマー

僕は、(一財)沖縄観光コンベンションビューロー(Okinawa Convention & Visitors Bureau, OCVB)と一緒に活動していて、 「Be. Okinawa Underwater Photo Workshop」という水中写真ワークショップの講師になって欲しいとの依頼が来ました。

そのきっかけで何回か沖縄で潜るようになり 、このカメの写真は阿嘉島 (Aka Island)で撮りました。

阿嘉島は魚だけでなく、カメに出会える可能性がとても高いです。
カメが呼吸するために水面に向かっていた瞬間にカメラのシャッターを押しました。

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ヨーコさん、日本で潜っているのですね。他に、日本や沖縄で撮った写真はありますか。

石垣島のcoral goby

ヨーコ・サマー

はい、この写真は沖縄の石垣島で撮ったcoral gobyという、ハゼの一種です。
沖縄は、こういう魚を撮りたい人にとっては天国ですよ。

砂地やサンゴにはいろんな種類が住んでいますが、撮るのにものすごく時間がかかります。

理想の瞬間をうまくとらえるには時間と我慢強さが必要です。

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細かい特徴や表情まですべてうまく撮っていますね。この魚の個性がすごく分かります。

ヨーコ・サマー

表情といえば、沖縄にはさまざまなウミウシもいます。
沖縄に近い台湾にもウミウシはいますが、沖縄は種類が非常に多い感じがします。

僕が一番好きなのは、ヒオドシユビウミウシ (Bornella Anguilla)です。
表情豊かな顔をしていて、目玉模様もはっきりしていますよね、この写真でも分かるように。

ウミウシ

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こんな角度から撮ったウミウシの写真は多分初めて見ました。普段のウミウシの写真とは違う、こういう撮り方もいいですね!ヨーコさんは、マックダイビングのような潜り方やマクロが好きですか。

ヨーコ・サマー

そうですね、一番好きな場所はバリ島のトゥランベン(Tulamben)です。

潜る時は、ワイドやマクロなどにこだわらないで、見たものをすべて撮るようにしていますが、考えてみるとやっぱりマクロが一番好きです。
一年に何回かトゥランベンで潜っていて、僕にとって、第二の故郷です。

(編注:マックダイビングとは砂泥の水底を這うように潜ること)

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日本は、ヨーコさんにとってどんなところですか。

ヨーコ・サマー

台湾からそんなに遠くないからとても行きやすい場所です。
日本のダイビングにすごく興味があり、多くの日本人水中写真家からインスピレーションを受けています。

さっきも言ったように、(一財)沖縄観光コンベンションビューロー の水中写真ワークショップを指導し、沖縄の海洋環境を宣伝しています。

沖縄の様々な島にも行ったことがあり、海は台湾の東海岸とすごく似ています。

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どんなところが似ていますか。

ヨーコ・サマー

黒潮が沖縄と台湾の東海岸を両方通るので、ハゼのようなユニークな海洋生物が多いと思います。

生物が似ていますね。沖縄で潜るのはとても好きです。

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(一財)沖縄観光コンベンションビューローとの水中写真ワークショップについて少しお話できますか。

ヨーコ・サマー

沖縄のダイビングを海外で宣伝したことがありますが、主に水中写真のワークショップの講師として一緒に活動しています。

沖縄観光コンベンションビューローは、沖縄が世界に誇る観光資源として、美しい海洋環境とそこに住む生物をPRするために昨年6月5日から9日まで僕を講師として招き、Be. Okinawa Underwater Photo Workshop 2015を開催したのです。

1日に2回潜り、ワークショップを開催しました。
それが3日間続きました 。
実は、2016年5月にも同じイベントが開催されますよ。

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いいですね、私も参加したいです。昨年の参加者からはどんな声が上がりましたか。

ヨーコ・サマー

大好評でした! 沖縄の海の美しさに感動の声ばかりでした。
その参加者を通して沖縄の海が幅広く伝えられればと思います。

ただ、台湾、香港、中国出身のダイバーが対象で、ワークショップは台湾語や中国語で行われるんですよ。

沖縄観光コンベンションビューローにワークショップ機会を与えられて大変感謝しており、オーシャナを通して改めて感謝できればと思います。

また、オーシャナの皆さんも、僕の写真に興味を持ってくださり、本当にありがとうございました。

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こちらこそ、素敵な写真をシェアしてくれてありがとうございます。ヨーコさん、頑張って下さい!

ヨーコさんの作品を見ていた時、こんな写真を「撮りたい!」と、強く思いました。

水中写真家のスキルの一つは、作品を見る人に「同じような写真を撮りたい!」と思わせる写真を撮ることだと感じました。

ウミウシのユニークな表情など、普段はあまり見ない写真を撮るのがどれだけ重要か、ヨーコさんと話して改めて実感しました。

ヨーコさんは沖縄で何回も潜っていますが、外国人にとって日本のダイビングはまだあまり知られていないと思います。

このため、ヨーコさんのような外国人水中写真家は日本にとってとても大事です。
彼の作品を通して多くの外国人が沖縄だけでなく日本全体に興味を持ってくれればと私は思います。

■ヨーコさんの写真に関して詳しくは、下記のリンクをご覧ください。

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PROFILE
イギリス生まれ、8歳から13歳まで日本で育ったイギリス人と日本人のハーフ。

2006年に再度来日し、ナレーター、翻訳者、ライターとしてNHKテレビ、ラジオ、日本駐在外国人向けのウェブサイトなどで活躍。
2010年ニューカレドニアで体験ダイビングをしたのを機にライセンスを取り、2011年以降定期的に日本で潜っている。

日本の海の魅力、多様な生物や地形等に感動し、海外であまり知られていない日本のダイビングを紹介する目的で、2011年にブログ(Rising Bubbles)を立ち上げた。

外国人向けのサイトや海外のダイビングサイトで日本のダイビングスポットを定期的に紹介しており、スコットランドのセントアンドリューズ大学で水産養殖も勉強中。

「ダイビングをきっかけに、日本の海がどれだけ魅力的なのかをすごく実感しました。この連載では、たくさんの情報を届けていきながら、海外からのトピックを取り上げ、日本と海外の違いや海外の視点等をシェアするのを楽しみにしております」
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