自然の写真をどこまで加工していいの?~海の色、心の青~

初めてサイパンに来ています。
「雑誌で見たことある~」とダイバーお上りさん状態(≧▽≦)

サイパンの海中

さて、“マリアナブルー”に抱かれた瞬間、「気持ちいい~」と至って普通の感想を持ったわけですが、一緒に潜ったモデルのルコちゃんは「水がないみたい」と思ったそう。
そして、皆で写真を見せ合えば、機種によってまったく海の色が異なっていて、人それぞれのマリアナブルーがあり、人それぞれだからこそのマリアナブルーなんだな~と改めて感じたわけです。

色々な海の色、海の青

海の色といえば青色ということになるのでしょうが、ダイバーの皆さんならご存知のように、海によって色々な青色があります。

蒼、藍、蒼……と漢字も色々なら、ターコイズブルー、インディゴブルーと英名も多彩な顔ぶれで、エメラルドグリーンとなるとすでに緑だし、鈍色の海にいたっては、もはや何色を足しても青にはなりません。

それでも、みんな海の色。

そんなカオス(?)な海の色をいいことに、僕らライターが眠くなった時にやりがちなのが、エリア名+ブルーという安易なキャッチフレーズ。

ボニンブルーはひねりがあってカッコいいし、マリアナブルーはなんだかオリジナルで安定感があって素敵なわけなんですが、ケラマブルーやパラオブルーとなると急に二番煎じ感が出てきて、伊豆海洋公園ブルーとかいうと語呂が悪いんじゃね?とセンスを疑われ、新人のころ、舟をこぎながら城ヶ島の海につけた海の色、グラングリーンとなると、とにかくもう、止めてくれた先輩に感謝するほかないわけです。

海の色といっても色々あって、その表現も色々ってことです。

十人十色の心の青、そして表現方法

ダイビング雑誌にいたころは、とにかく毎月毎月、ルーペでポジフィルムを見まくるわけで、そんなことを10年も続けていると、写真の海の色を見れば、だいたいどのあたりの海かわかるようになってきます。
(一枚だと難しいですが、フィルムを通しで見るとわりと確実)

雑誌に掲載する場合も、ポジの色に近づくように修正・指示をするので、その海の色の特徴がよく出ていました。

しかし、デジタルカメラ全盛の今、海の色はどうとでもできる時代となりました。
それこそ、白を黒にするという話じゃないですが、緑の海を真っ青な海にするなんてことは、自前のデスクトップで簡単にできてしまいます。
海の色を見ただけで、なかなかどこの海かを見分けるのは難しくなってしまいました……。

逆に、編集者として悩むのは、どこまで画像処理をしていいものか?

紙でもWEBでも、特集を見たダイバーが潜りにいって「海の色、違うじゃん!」「ヤラセだよ」となってしまわないものか。
「でも、さすがに、この雨で濁った緑の海はちょっと青にしてあげたいし……」。

見たままがよいのか、きれいに仕上げるのがよいのか……。

そんなジレンマで悩んでいた時期もあったのですが、自分の中に割と基準ができてきた今は割と悩んでいません。
その基準をひと言で表すなら……海と心象の最大化、といった感じです。

海は、潜ってきれいな時もあれば濁っているときもあります。
たまたま潜った時が汚いときだった場合、自分の中では、その海が最高であろう状態までの処理をしようと思います。
まったくあり得ない海の色にするのはNG。
もちろん、魚を付け足したりしたらヤラセ(笑)。

つまり、画像処理することによってその海の最大化をするということで、これはヤラセではなく脚色。

その“最高であろう状態”がどうやってわかるのかといえば、これは経験がものをいいます。
死ぬほどポジで海の色を見てきたので、この海の色はここまでOKというモノサシが自分の中にあったりします。

そういう意味では、「どういう写真がよい写真なのかわからない」「写真が上手になるには?」とよく聞かれますが、人の写真をたくさん見るのが一番よいと思います。

人によって見えている風景も違います。

なので、自分が感じたその海、そのシーンの心象風景を最大化するための加工なら積極的にしてもいいのでは? と思います。
サンゴに揺らめく波影が美しいと思えばコントラストを上げて影を強調してみたり、逆に、サンゴと太陽の気持ちよさを協調したくて明るく飛ばしてみたり。

デジタルになって、目で見た風景だけはなく、心で見た風景も表現しやすくなりました。

とはいうものの、「いじり過ぎだろ!」と思う写真をよく目にする一方、逆に「もうちょっと何とかすればいいのに」と思う写真もあるので、これはもう個人の好みやさじ加減、アウトプットする環境にもよるのでしょう。
プロカメラマンの画像でも、やり過ぎだよな~と思うこともありますしね。

もともと、人によってまったく異なってみえる海の色、風景。
カメラの機種や海の状況、技術だけでなく、好みやセンス、そして心の風景やポリシーみたいなものまで投影できるデジタル全盛の今の状況は、むしろそれぞれの個性が出て面白いと思います。

皆さんの海の色はどんな色でしょうか?

\メルマガ会員募集中/

週に2回、今読んで欲しいオーシャナの記事をピックアップしてお届けします♪
メールアドレスを入力して簡単登録はこちらから↓↓

writer
PROFILE
法政大学アクアダイビング時にダイビングインストラクター資格を取得。
卒業後は、ダイビング誌の編集者として世界の海を行脚。
潜ったダイビングポイントは500を超え、夢は誰よりもいろんな海を潜ること。
ダイビング入門誌副編集長を経て、「ocean+α」を立ち上げ初代編集長に。

現在、フリーランスとして、ダイバーがより安全に楽しく潜るため、新しい選択肢を提供するため、
そして、ダイビング業界で働く人が幸せになれる環境を作るために、深海に潜伏して活動中。

〇詳細プロフィール/コンタクト
https://divingman.co.jp/profile/
〇NPOプロジェクトセーフダイブ
http://safedive.or.jp/
〇問い合わせ・連絡先
teraniku@gmail.com

■著書:「スキルアップ寺子屋」、「スキルアップ寺子屋NEO」
■DVD:「絶対☆ダイビングスキル10」、「奥義☆ダイビングスキル20」
■安全ダイビング提言集
http://safedive.or.jp/journal
  • facebook
  • twitter
FOLLOW