沖縄に残された2頭のジュゴンを守るために

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ジュゴン。
イルカのような尾鰭に可愛らしい顔付きで、人魚のモデルとも言われている。
海外のみにしか生息されていないと思われがちであるが、実は日本国内にも生息している。かつては、奄美諸島や八重山諸島でも観察されていたという記録が残っているが、近年では沖縄本島周辺の海域だけに限定されてしまった。個体数が激減した主な理由は、人間の乱獲だと言われている。

ジュゴンの生態について

ジュゴンとは、海に住む哺乳類で、海牛目に分けられる仲間の一種。体長は2.4~3.0m、体重は250~400kgにもなり、亜熱帯の浅い海を好んで生息している。
同じ海牛目のマナティーとよく似ているが、生息地や尾鰭の形などと異なる点が多く違う生物である。

脅かされる生息地

ジュゴンはアマモなどの海に生えた草だけを主食としており、昆布やワカメといった海藻類とは異なる。
海草類(うみくさ)は、花を咲かせて種子をつくる海産の種子植物の仲間で熱帯から亜熱帯の浅場で育つことから、ジュゴンの生息地もその海域に限られる。
しかし、彼らの好む浅い海域は陸から近いため、米軍基地などの土地開発や農地から海に流れこむ土砂の影響を受けやすい。
餌場が埋め立てられてしまい、ジュゴンの生息地が人工物により脅かされているという事実が理解できる。

3頭から2頭へ

混獲や生息地の減少から、年々ジュゴンの個体数は減っていき、沖縄本島周辺ではかつて3頭のジュゴンが生息していると言われていたが、2015年以降にそのうちの2頭が行方不明となり、2019年に残りの1頭の死が確認されたというニュースがある。
食痕など、彼らが生きている手がかりが見つかっていることから、沖縄県は現在も一丸となって彼らの捜索とともに、保全活動を続けている。

今から2年ほど前までは3頭のジュゴンが沖縄周辺で確認されていたが、うちの1頭が死体となって発見された。
全身傷だらけの状態で見つかったジュゴンの死因は、はっきりとはわかっていない。
死骸が見つかったのは、辺野古とは反対側の沖縄本島西海岸で、基地建設との関連性が薄いとみられたため、工事は勧められたという。
残酷な姿で現れた最後の姿は、私たちに警告を発しているようにも見えたと琉球朝日放送記者は記している。

参考文献:https://webronza.asahi.com/politics/articles/2019041700003.html?page=1

沖縄の取り組み

沖縄は人為的な影響を低減する取り組みとして、以下のことを呼びかけている。

1.主要海域周辺における船舶等の航行時のジュゴン存在確認や低速度による航行
2.土地の造成や農作業による赤土等流出の防止
3.工場排水や農業廃水の水質改善
4.家庭排水等による河川や水質汚濁の低減
5.沿岸域への建物建設等に伴う潮流の変化を低減する
参考文献:https://www.pref.okinawa.jp/site/kankyo/shizen/dugong.html

私たちにできることとして、生活排水による汚染を防ぐため、汚れた食器は拭き取ってから洗ったり、シャンプーやリンスは適切な量で賄ったりなどと小さな心がけから始めてみよう。
私生活を見直すことで保護活動に貢献していると言えるはずだ。

日本に生息するといわれているたった2頭のジュゴンですら消息をたっている状況。
彼らが残す小さな手がかりだけが、保全活動に力を入れる人々の光なのだ。
姿は見えなくとも、存在する2つの命を絶ってはいけない。
ジュゴンと共に生きられる環境を守れるのはわれわれ人類だけなのだから。

Text:Natuski Matsuda

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