イルカは海の中でどうやって寝ているのか

御蔵島のイルカ(撮影:小木万布)

寝ている状態のイルカの群れ。寝ているときは群れサイズが大きくなりがちです。ほとんどヒレを動かさないのに、すーっと静かに進んでいきます

御蔵島に来るお客様からよく受ける質問の一つに「イルカってどこで寝ているのですか?」というのがあります。

「どこで?」と聞く方は、なにかイルカにも巣の様なものがあってそこに帰るのかな?とイメージされているようです。

しかし、イルカは巣のような決まった場所を持っていません。
あえて言っちゃえば、御蔵島全体が巣のような物かもしれませんね。

では、イルカはどうやって寝ているのでしょう?

御蔵島のドルフィンスイムで、イルカが人にほとんど興味を示さずスーっと泳ぎ去っていくことがあります。
そんな時、ガイドや船頭さんは「このイルカは、寝ちゃってるね」などと言うことがあります。
そう、イルカは泳ぎながら眠るのです。

泳ぎながら?

そもそも、イルカは陸上の動物が普通にするような寝方はしません。
野生動物は陸上でも、皆それなりに警戒しながら寝ていると思うのですが、ガッツリ寝込んでしまって捕食者に襲われることはあっても、息が出来なくなる!ということはありません。

でも、水中に暮らすイルカは呼吸のために必ず水面に行かなければならないのです。
そのため、陸生哺乳類ではあまり考えられない特異な寝方をするように進化しました。

すなわち、脳の半分ずつ寝ているのです。

脳の半分が寝ても、もう半分は起きていて、活動レベルは下がるものの遊泳しながら呼吸が出来るようになっています。
そんな時イルカは、片方の目だけ閉じてゆったり泳いでいるのです。
あまり多くの人がガシャガシャ泳いだり、船で追いかけたりすると起きてしまいますが、そーっと静かに近づくことができれば、御蔵島でも目をつぶってゆっくり泳いでいるイルカを観察することができます。

一度、とても愉快な経験をしたことがあります。
調査でイルカの撮影に行った時、どうしても寝ているイルカをそのまま撮影したくなりました。

イルカを発見してから、出来る限り遠くで船を止めて、エンジンを切って一人静かに入水。
イルカが通るだろう、と読んだ場所(海底)で、岩に挟まって待っていると、本当に目を瞑ったままのイルカがやってきました!

その距離、1m。
そっとビデオのスイッチを入れた時、相手もなにか気づいたのでしょう、ゆーっくり目が開いたかと思うと全身でビックーーーーー!と驚いて泳ぎ去ってしまいました。

あのときのイルカの目、普段の倍くらい大きくなっていたのは、本当に印象的でした。
イルカも驚くと目が大きくなるんですねー。

参考文献 調べてみよう!生きもののふしぎ イルカのねむり方 関口雄祐・幸島司郎監修 金の星社

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PROFILE
山形大学農学部で、テントウムシの産卵生態を研究をしていたが、「もうちょっと大きな動物を研究したいなぁ」と路線変更。
三重大学大学院在学中に、御蔵島をフィールドとしてイルカの行動研究を始める。

2004年、御蔵島で観光協会設立に関わり、同大学院を中退。
現在、御蔵島観光協会勤務。

観光案内業務、エコツーリズムの普及活動、イルカの調査取りまとめを行っている。

■著書:
「イルカ・ウォッチングガイドブック」水口博也(編著)144pp. ウォッチングと生態研究の両立-御蔵島のイルカをめぐって
「クジラと日本人の物語―沿岸捕鯨再考」小島孝夫(編集) 第4章クジラと遊ぶ..
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