ダイバーが最もヒヤリとする場面は「はぐれた時、はぐれかけた時」
こんにちは。高野です。
前回は、「ヒヤリ・ハットを感じたときの状況」についてお話をさせていただきましたが、今回は、ヒヤリ・ハットを経験したことがあると回答いただいた方に、「どんなことに対してヒヤリ・ハットを感じたのか」について回答いただいた結果をもとにお話しをさせていただきます。
それでは、インストラクターから見てみましょう。
質問は、前回の活動内容と同じく、インストラクターとして活動中にゲストに対して感じたヒヤリ・ハットとして質問しています。
選択項目は、以下の内容です。
Q:ゲストに対して「ヒヤリ・ハット」を感じたときの状況についてお答え下さい。
(複数回答可)
a.ゲスト器材故障
b.レンタル器材故障
c.突然の体調不良
d.突然の不安感
e.過呼吸
f.耳ぬきトラブル
g.生物による負傷
h.海水誤飲
i.水中拘束
j.天候悪化
k.船舶との接触
l.人との接触
m.器材のセッティングミス
n.流されたまたは、流されかけた
o.エア切れまたは、切れそうになった
p.はぐれたまたは、はぐれかけた
q.器材操作ミスによる急浮上または急潜降 r.その他( )
インストラクターの結果です。
「はぐれた、またははぐれかけた」とういう回答が最も多く、次に、「器材操作ミスによる急浮上または急潜降」、「耳抜きのトラブル」となっています。
次に、一般ダイバーです。
一般ダイバーにつきましても前回と同様、予備調査を行う中で、幅広く活動している可能性が考えられたことから、活動状況を問わずに質問しています。
Q:「ヒヤリ・ハット」を感じたときの状況についてお答え下さい。
(複数回答可)
a.マイ器材故障
b.レンタル器材故障
c.突然の体調不良
d.突然の不安感
e.過呼吸
f.耳ぬきトラブル
g.生物による負傷
h.海水誤飲
i.水中拘束
j.天候悪化
k.船舶との接触
l.人との接触
m.器材のセッティングミス
n.流されたまたは、流されかけた
o.エア切れまたは、切れそうになった
p.現在位置が分からなくなった
q.バディとはぐれたまたは、はぐれかけた
r.インストラクター・ガイドとはぐれたまたは、はぐれかけた
s.器材操作ミスによる急浮上または急潜降
t.その他(自由回答)
「インストラクター・ガイドとはぐれた、またははぐれそうになった」という回答が最も多く、次に「バディとはぐれた、またははぐれかけた」、「エア切れまたは切れそうになった」、「耳抜きのトラブル」、「突然の不安感」の順となっています。
ヒヤリ・ハット経験で最も多かったのは、インストラクター、一般ダイバーともに「はぐれた・はぐれかけた」という結果でした。
回答として最も多かった「はぐれ」について見ていきますと、ダイビングにおける過去の裁判事例や事故事例を分析していく中で、「はぐれた」後、発見されたときには結果死亡に繋がっている、またそのことが裁判に発展し、引率者の責任が問われているケースが少なからずあります。
もちろん死亡の要因・原因は様々で、本人の疾患が考えられることもあれば、パニックや溺水が考えられることなどもあります。
本来、エントリーレベルのC-カード取得講習(オープンウオーターやスクーバダイバーなど、指導団体により名称は異なる)でダイバーとして認定されれば、はぐれた場合の対処法はもちろんのこと、バディで安全にダイビングが楽しめるだけの知識・技術は身につけているはずですし、インストラクターはダイビングの素晴らしさを含め、その指導をしていると思います。
(※あえてあるべき論で書いています。コース基準等に記載されていない指導団体はその限りではありません)
しかし、スキルの習熟度に関する調査結果を見ると、そこには安全に潜るための知識や技術が“身についていない”可能性があり、それも事故誘因の一つとして考えられます。
次回はその辺を探っていきたいと思います。
ヒヤリ・ハットを「事故の芽」という言い方をされている方もいますが、その言葉をお借りすると、我々は事故の芽が出ないようにすること、また出たときのためにその対処法を身につける、つけさせる必要があるのではないでしょうか。
いわゆる“死なないため”のスキルです。
では、どうして芽が出てしまうのか……なぜ対処出来ないダイバーがいるのか……その芽の下にある「事故の根(誘因)」を考えて見直しをしていかなければ、いつまでも同じような事故が繰り返される可能性があります。