データでわかるダイビングの本音と建て前(第3回)

調査データで分かる「ダイビング中にヒヤリ・ハットを感じる時」

この記事は約4分で読めます。

年間ダイビング活動人口の把握の重要性

セブ島のツバメウオの群れ(撮影:越智隆治)

こんにちは。高野です。

1月25日に開催されました「データでわかるダイビングの本音と建て前」セミナーにお越しをいただきました皆様、お疲れ様でした。
そして、ありがとうございました。

やどかり仙人さんにもお越しをいただき、ダイビングを始めたばかりの方からインストラクターの方まで、幅広い経験層の方々からのご質問や貴重な情報をいただけて、とても有意義なひと時でした。

今回、会場でもお話しをさせていただきましたが、調査データの結果…今回そこから考えられることは、可能性の一つです。
今後は地域別に調査・分析を行い、ヒヤリ・ハット誘因を精査していく必要性があると考えています。

また、事故分析はもとより、ダイビング業界としての発展、健全性の確立、各ダイビング事業者の経営戦略を考えていく上での分母となる、より正確な「地域別の年間ダイビング活動人口の把握」も必要と感じています。

それらの調査を行うためには、私一人では限界があります。
多くの方のご理解とご協力が必要不可欠です。

今後も調査において、お願いすることが多々あるかと思いますが、何卒宜しくお願い申し上げます。
(もちろん調査結果は統計的に処理し、個々が特定されないように致します)

その分析結果を、ocean+αをはじめとする業界全体にフィードバックができれば嬉しいです。

ヒヤリ・ハットを感じた時の状況

さて、今回は連載の第2回目となります。

前回は、「どのくらいの方々が、ダイビング活動中にヒヤリ・ハットを感じたことがあるか」についてお話をさせていただきましたが、今回は、「ヒヤリ・ハットを感じたときの状況」について、調査結果を基にお話しをさせていただきます。

早速、インストラクターから見てみましょう。

インストラクターとしての活動中にヒヤリ・ハットを感じた時の活動内容について聞きました。

選択項目は、以下の4つで複数回答可としました。

a.ガイド中
b.Cカード取得講習中
c.ステップアップ講習中
d.その他(フリーアンサー)

今回の調査は、教育・指導の観点から行なっていますので、選択項目は上記に絞らせていただきました。

インストラクターのヒヤリ・ハット体験の結果

ダイビング時のヒヤリ・ハットアンケート調査

ヒヤリ・ハット時の活動内容(インストラクター)(n=221)

ガイド中にヒヤリ・ハットを感じている方が55%と最も多く、次いで講習中という結果でした。

次に、一般ダイバーです。

一般ダイバーにつきましては、予備調査を行う中で、幅広く活動している可能性が考えられたことから、選択項目を10項目とし、ヒヤリ・ハットを感じた時の活動内容について聞きました。
こちらも複数回答可としています。

a.ガイド付きファンダイビングに参加中
b.バディ潜水中
c.ダイビングサークル活動中
d.単独潜水中
e.水中調査中
f.水中撮影中
g.水中作業中
h.Cカード取得講習に参加中
i.ステップアップ講習に参加中
j.その他(フリーアンサー)

一般ダイバーのヒヤリ・ハット体験の結果

ダイビング時のヒヤリ・ハットアンケート調査

ヒヤリ・ハット時の活動内容(一般ダイバー)(n=447)

ガイド付きファンダイビング参加中が52%と最も多く、次いでバディ潜水中という結果でした。

ここでのインストラクターと一般ダイバーのヒヤリ・ハットを感じた活動内容の共通点は、「ガイド(している・してもらっている)中」という結果が最も多いということですね。

皆さんは、予想していた通りの結果でしたか?

それでは、この結果から見えることは何か…。

この結果から見えることは、「ガイド中」そして「ガイド付きファンダイビング参加中」にヒヤリ・ハット経験をしている人が多いという、一つの裏付けが取れたことのみです。

なぜ、「ガイド中」そして「ガイド付きファンダイビング参加中」が多いという結果になったのか……。

そこには、今回の調査・分析データの基となる伊豆半島に訪れるダイバーは、ガイドを付けて潜る、いわゆるガイド付きファンダイバーが多い傾向があることも、結果の一因として考えられます。

それでは、どんなことに対してヒヤリ・ハットを感じたのか・。

次回は、ヒヤリ・ハットを感じた内容の調査結果も踏まえて、なぜ「ガイド中」そして「ガイド付きファンダイビング参加中」のヒヤリ・ハットが多い結果になったのかについて、考えられる可能性を探っていきたいと思います。

では、次回(2月11日・火曜日)にまたお会いしましょう。

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PROFILE
大学にて法学を学び、卒業後、某一部上場企業にて人事採用・研修を担当していたが、「人は自然と共に生きていくことが本来の姿である」と思ってしまい…退職。

都市型ダイビングショップを経験後、静岡県の熱海を専門に水中ガイド、コースディレクターとしてインストラクター養成などを行う。
また、潜水士として、海洋調査・水中撮影・ナマコ潜水漁・潜水捜索救難などでも活動している。
 
ある時、業界の発展、健全性の確立を考えるようになり、大学院へ進学してスポーツマネジメントについて学ぶ(学位:体育学修士)。
現在は、教育・指導の観点から、ダイビングのマネジメントについて研究している。
 
■「筑波大学 大学院」 体育系研究員 高度競技マネジメント研究室(山口香研究室)
■「文部科学省所管 財団法人社会スポーツセンター」マリンスポーツ振興事業部 専門職員
■「NPO熱海・自然の学校」理事 安全対策委員長
■「NPOユニバーサルダイビングネットワーク」理事 潜水捜索救難協会トレーニングディレクター
■「Office 海心(うみこころ)」代表
 
【学会発表・論文】
■「SCUBAダイビングにおける裁判事例から見た事故分析」
■「SCUBAダイビングにおけるヒヤリ・ハット調査から見た事故分析 -ハインリッヒの法則に基づいた観点から-」
■ 「SCUBAダイビング指導者育成における教育課程に関する研究 -中高齢者事故予防の観点から-」
他
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