パラオのダイビングショップが採っている潜水事故時の対応策とは

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パラオでは、過去の漂流事故を教訓にして、BTA(Belau Tourism Assosiation)に所属する、日系ダイビング&スノーケリング事業所が組織するBTA Japanで、ダイビング事故時の緊急連絡網が確立されている。

パラオの海面とボートとフロート(撮影:越智隆治)

その内容は、以下の通り。

  • ダイビングを行なっているボートのキャプテンが、エキジット予定時刻から1時間経過しても、自分のゲストダイバーの見つけられない場合、まず自社事業所に連絡をする。
  • 連絡を受けた事業所は、BTA Japanで作られている連絡網で、各事業所(ダイビングショップ等)へ、事故発生の旨を電話とメールで連絡。
  • この時点で、事故を起こした事業所が対策本部となり、そこに集まった各事業所の代表者の中から、総指揮者(事故を起こした事業所以外の人で、パラオ在住歴が長く、こうした事故の対応に慣れている人が付くことが多い)を決定する。
    総指揮者は、集まった事業所の他の代表者から記録班、現場情報収集班、ボート協力班などを任命する。
  • このとき、事故を起こしたボートキャプテンの連絡を基に、どのような状況で事故が起こったのかを、BTA Japanで作成した事故報告シートに記載し、その報告を基に、可能性のあるエリアの捜索を行う。
  • まずは、すでに捜索準備可能で、すぐに出発できるボートを「先発ボート」としてすぐに現場に向かわせる。
  • これ以外に、事故周辺でゲストダイバーを載せたボートを「救援可能な周辺ボート」とし、まだダイビングしていない状況であったり、水面休息しているなど、動ける状態であれば、こちらのボートにも救援を仰ぐ。
  • そして、「待機ボート」。
    これは、各事業所から、ボートを出せる、キャプテンを出せる、スタッフを出せるという連絡をシートに記載してもらい、ボート、キャプテン、スタッフを混成チームとして組織し、準備が整い次第捜索に向かわせる。
  • また、BTA Japan加盟事業所は、捜索時のヘリをすぐに飛ばせるように、各事業所が各々1500ドルのヘリチャーター用積立金をBTA Japanに積み立てていて、事故後すぐにヘリを飛ばせる状況も整えている。

現在、BTA Japanに所属しているダイビング事業所は、アクアマジック、アンテロープ、クルーズコントロール、ブルーマーリン、スプラッシュ、オアシス、クラブMSO 、パラオスポート、カープアイランド、そしてデイドリーム(ペリリューステーション、龍馬を含む)。
これにくわえて、韓国系のシーワールド。スノーケル事業所のRITC、インパック、プレジャーアイランドとなっている。

その他に欧米系ダイビングショップに所属していて、個人で参加している日本人ガイドもいる。

パラオのダイビングショップによる事故時のための積立金の運用

BTA Japanに積み立てられている積立金により、行方不明者捜索のための初期費用として、約13時間のヘリチャーターが可能となっている。

この積立金は、事故を起こした事業所に対しての一時的な貸付金であり、最終的には、事故を起こした事業所が保険などで支払いをして、初期費用はBTA Japanに返金を行なう。

また、捜索に使われたボートのガソリン代なども、最終的には、事故を起こした事業所が支払いを行う事が取り決められている。

今回の取材で頻繁に潜っているペリリューコーナー、ペリリューエクスプレスは、流れも速く、過去に漂流事故が何度か発生したポイントでもあり、BTA Japanの間では、午後2時以降にこのポイントに潜らないという取り決めもされている。
午後遅くに潜ると、事故が発生した場合、暗くなる前に捜索し発見する事が困難になるからだ。

パラオには、NEMO(National Emergency Management Office)やパラオの各州のレンジャーなどの組織が存在し、BTA全体では、事故を起こした場合にそちらに連絡をして、捜索を行なう事になっている。

彼らと協力して、より効率的な捜索を行なえるようにと、日系事業所がこうした独自の捜索マニュアルを作成した。

こうしたマニュアルを作成していても、多くの場合、事故現場にいるボートだけの捜索で解決することがほとんどだという。
しかし、ダイバー行方不明時の初動捜索は、無事に事故者を発見し、救出する上で、とても重要であることは、明白だ。

パラオだけでなく、国内外問わず、多くのディスティネーションで、事故に対する事業所間の、こうした協力体制が整えられる事を期待したい。

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PROFILE
慶応大学文学部人間関係学科卒業。
産経新聞写真報道局(同紙潜水取材班に所属)を経てフリーのフォトグラファー&ライターに。
以降、南の島や暖かい海などを中心に、自然環境をテーマに取材を続けている。
与那国島の海底遺跡、バハマ・ビミニ島の海に沈むアトランティス・ロード、核実験でビキニ環礁に沈められた戦艦長門、南オーストラリア でのホオジロザメ取材などの水中取材経験もある。
ダイビング経験本数5500本以上。
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