第18回潜水医学講座小田原セミナー ~ワンポイント解説レポート~

2017年2月4日土曜日、小田原市民会館にて「第18回潜水医学講座小田原セミナー」が開催された。

年に一度開催される、ダイバーのための潜水医学講座「潜水医学講座小田原セミナー」は、昨年は品川の海洋大学で開催されたが、今年はセミナーの名前の通り、原点である小田原に戻っての開催となった。

18年間、毎年ダイバーのために開かれるこの医学講座は、医師を中心に4〜5つの演題が構成され、数百人の参加者が集まるセミナーだ。

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各演目ごとに、ポイントを紹介する。

マイクロプラスチック汚染の現状と対策
高田 秀重(東京農工大学教授)

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プラスチックのごみ問題は多くの人に認識されているが、マイクロプラスチックは5mm以下の微細なプラスチックである。

普段の我々の生活(洗顔料や捨てられたプラスチックが紫外線で破壊されるなど)から大量に海洋へ流れ出て、有害物質と結合しながら食物連鎖を通じで我々の体の中に入ってくる可能性がある。

プラスチックのリサイクルや利用量を減らすなどして、マイクロプラスチックの発生をいかに抑えるかが今後の課題だ。

緊急酸素使用に関する新しい指針について
野澤 徹(NPO法人 MINDER 水中科学研究所)

医師法により酸素の取り扱いや酸素を使った応急手当には制限があるが、救命のために使われる酸素であるなら、トレーニングを受けた者が使う場合には利用できる指針が解説された。

スキューバダイビング中の循環生理(心電図、血圧、酸素)の変化
伊佐地 隆(筑波記念病院リハビリテーション科・帝京大学医学部・筑波大学非常勤講師)

水中で心電図、血圧、酸素濃度を測定したデータ分析を初めて試みた研究の発表だった。

過去に水中での血圧を測った例がほとんどなく、伊佐地先生の研究は大変興味深いものであった。

ダイビングによって年齢やスキルに関係なく、生理的に血圧が3割程度(状態によって変わるが)上昇することが実証された。
心疾患や動脈硬化などの疾患のあるダイバーには水中の血圧の上昇は危険な因子である。
血圧が160以上(130以上は高血圧であるが)ある場合は、血圧のコントロールが重要であることが実証された講演だった。

中高年ダイバーの循環器疾患予防について
桐木 園子(日本医科大学付属病院 循環器内科・総合診療科)

アメリカDANのレポートでは、2010年から2013年の間に死亡したダイバーの21%に高血圧・心血管疾患と糖尿病罹患歴があった。
生命の危機に直結する循環器疾患のリスク低減を図るために検診が重要である。

動脈硬化の原因になる高血圧症、糖尿病や高コレステロールは一般的な検診で検査されるが、運動耐容能検査法(トレッドミル法は心電図や血圧計を装着した状態で歩行運動をする。経過時間と共に負荷がかかり、目標心拍に達したところで耐容能を評価)も重要である。

その他に心臓の形態異常は心臓超音波、動脈硬化進行の指標となる頸動脈超音波検査・足関節上腕血圧比・脳波伝搬速度がある。

中高年ダイバーは検診を受けて自己の体調管理が必要である。

重症減圧症における兆候
土居 浩(荏原病院 脳神経外科部長)

荏原病院は開設以来、治療した減圧症930例のうち、重症例は46例(4.9%)。
全例救命し、症状の完全寛解を認めた症例も90%を超えている。

今回は救命しきれなかった症例を含め、兆候としての問題となる症例を提示された。

ダイバーは減圧症の症状を理解すること、多くの症例を処置した経験のある医師の育成、特に、重度の症例に対して速やかに対応できる体制などを改めに見直すことの必要性を感じた。

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最後に潜水医学講座小田原セミナーが18年も続いたのは、ボランティアながら運営を続けたスタッフの方々、セミナー講演を引き受けていただける講師の方々の潜水事故を減らしたいという思いだと感じた。

今後も多くダイバーに参加してほしい素晴らしいセミナーであった。

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PROFILE
九州は小倉に生まれ、法政大学アクアダイビングクラブでダイビングを始める。

学生時代からインストラクターになり、認定したダイバーは数千人、NAUI時代にコースディレクターとしてインストラクターも多数養成。

インストラクターの集まったNPO日本安全潜水教育協会(JCUE、ジェイキュー)会長、雑誌「月刊ダイバー」ではDUKEヤマナカとしてダイビングテクニックのアドバイザーなどなど、比較的スキルや安全のことに比重を置いて活動している。
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