千葉・波左間でダイビング!海底神社でコブダイの頼子と安全潜水祈願

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こんにちは。水中カメラマンの堀口和重です。

2019年は、強い台風に悩まされることの多い日本列島ですね。

先日の台風19号は各地に大きな被害をもたらし、今もなお浸水の被害や停電が続く場所があります。被害を受けられた皆様には心よりお見舞い申し上げるとともに、1日も早い復旧を心よりお祈り申し上げます。

私の住んでいる西伊豆町はたまたま被害はなかったのですが、伊豆の国市や三島市なども浸水が酷かったですし、海沿いでは道路がやられてしまった場所も……。

毎年このような台風が増えてしまったら、と考えると恐ろしいものです。

また台風と言えば、9月の台風15号で被害の大きかったのが千葉県の南房総です。
今回私は、10月頭に千葉の館山(波左間)へと撮影に行ってきたので、その時の陸上や水中の様子を紹介したいと思います。

台風15号と19号…
波左間の被害状況は?

9月の台風15号では、波左間海中公園のスタッフ・萩原さんの話では「被災地全体の中では、波左間海中公園は幸いにも被害が少なかった」とのことでした。

しかし、お店の窓が割れたり、浸水があったり、さらには船も1隻壊れてしまったそうで、私が撮影に伺ったときは修理中とのことでした。話を聞く限り、そのレベルで被害が少ないのか……と驚かされました。

さらに追い打ちをかけるように、今回の台風19号です。
前回の台風15号に比べると、南房総エリアでの風は弱かったようで、波左間は被害は少ないとのことで少し安心しました。

今回は陸上の被害が少なったようです。写真提供/オーシャンドリーム

今回は陸上の被害が少なったようです。写真提供/オーシャンドリーム

波左間海中公園の施設も無事のようでした。写真提供/オーシャンドリーム

波左間海中公園の施設も無事のようでした。写真提供/オーシャンドリーム

波左間名物といえばこれ!
コブダイの頼子と海底神社

さて、台風がらみで少々暗い話になってしまったので、気を取り直して水中の紹介をしていきたいと思います。

まず波左間の海ですが、潜る際は海辺の施設「波左間海中公園」を利用することになります。ポイントはビーチとボート両方ありますが、ボートがメインです。

施設の休憩所の隣がすぐボート乗り場なので、移動がとてもラクです。

ボートで10分以内に到着できる、メインポイントの「高根」には、御祭神の天比理乃咩命(あまのひりのめのみこと)が祭られており、日本で唯一の海底神社や鳥居もあるのです。

そしてここ、波左間の見ものの一つはやはりコブダイと言っていいでしょう。

海底神社とコブダイの頼子

海底神社とコブダイの頼子(撮影/堀口和重)

頼子(よりこ)という名前で親しまれているこのコブダイは、なんと30年ぐらい前から確認されているとのこと。

コブダイ自体、平均的に20年ぐらいの寿命ということで、とても長生きしているのがわかります。

頼子はかなり人馴れしており、この波左間のシンボルでもある鳥居と一緒に撮影もできるので、海外の方からの人気も高いようです。

ちなみにコブダイは頼子だけではなく、他の場所にも大きめの個体が数匹いるので、さまざまなシチュエーションで観察したり撮影したりすることができます。

頼子とは別個体のコブダイと海底神社(撮影/堀口和重)

頼子とは別個体のコブダイと海底神社(撮影/堀口和重)

砂地一面ウミエラ畑!?

コブダイもすごいのですが、波左間の「高根」でどうしても私が伝えたい光景があるのです。

それが、砂地一面に広がるヤナギウミエラ。

一面のウミエラ畑(撮影/堀口和重)

一面のウミエラ畑(撮影/堀口和重)

単体でポツリポツリと生えているのは見たことがあるのですが、写真のようにどこもかしもウミエラという場所はなかなか見かけない気がします。

ヤナギウミエラ自体、薄い紫色できれいなので、そこに隠れていたり住み着いていたりする生物も絵になり、ウミエラの美しさも引き立ちます。

ヤナギウミエラとシマウミスズメの幼魚(撮影/堀口和重)

ヤナギウミエラとシマウミスズメの幼魚(撮影/堀口和重)

ウミエラをホストにしているアカホシカクレエビ(撮影/堀口和重)

ウミエラに寄り添うアミメハギの幼魚(撮影/堀口和重)

ちなみに2年半前にも波左間を訪れたのですが、そのときはウミエラが生え始めたばかりだったようで、個体が小さくかわいいサイズでした。

そこからここまで大きくなったのです。

2017年の1月に撮影した小さいサイズのヤナギウミエラ。2年半以上でかなり大きくなりました(撮影/堀口和重)

2017年の1月に撮影した小さいサイズのヤナギウミエラ。2年半以上でかなり大きくなりました(撮影/堀口和重)

北限の可能性が高い
チンアナゴも登場!

この時期の波左間に潜ったのは今回が初めてなのですが、潜ってみるとどこでも目に付くのは南方種でした。

「高根」では、アジアコショウダイの幼魚がいたかと思えば、伊豆方面では個体数も少なくそこまで見かけないソメワケヤッコが岩の間で数匹、目に付きました。

また、ナノハナスズメダイも普通種のように泳いでいたり、かと思えば大きいサイズのモンハナシャコも出入りしており、ここがどこの海なのかと一瞬、考えさせられてしまいました。

幼魚から少し大きくなったナノハナスズメダイ(撮影/堀口和重)

幼魚から少し大きくなったナノハナスズメダイ(撮影/堀口和重)

大きめのモンハナシャコ(撮影/堀口和重)

大きめのモンハナシャコ(撮影/堀口和重)

さらには2個体しかいないのですが、伊豆などでも珍しいチンアナゴも確認されているのです。

もしかしたら北限ではないのでしょうか?

北限の可能性が高いチンアナゴ(撮影/堀口和重)

北限の可能性が高いチンアナゴ(撮影/堀口和重)

「高根」以外のポイントでも魚影が濃く、ソフトコーラルがたくさん生えている漁礁ポイント「ドリーム」もおもしろいです。また、定置網にかかったマンボウがイケスの中で見れたりと、飽きずに楽めるのが波左間の海の魅力でしょう。

まだまだ台風の爪痕が残り、大変な状態が続く千葉ですが、こんな時だからこそ、千葉の海を元気づけるためにも潜りに行ってみてはいかがでしょうか?

■撮影協力/ダイビングショップ オーシャンドリームスーパースクーバ フィズ波左間海中公園

堀口和重さん
プロフィール

horiguchi_profile

伊豆の大瀬崎にある大瀬館マリンサービスにチーフインストラクターガイドとして勤務後、2018年4月にプロのカメラマンに転向。
現在は伊豆を拠点に水中撮影から漁風景や海産物の加工まで海に関わる物の撮影を行っている。
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PROFILE
日本を拠点に活動している⽔中カメラマン。カメラマンになる以前はダイビングガイドをしながら数々のフォトコンテストで⼊賞。現在はダイビング・アウトドア・アクアリストなどに関連する雑誌やウェブサイト、新聞などに記事や写真を掲載、水中生物の図鑑や教書にも写真提供している。2019年に日本政府観光局(JNTO)主催の“「⽇本の海」⽔中フォトコンテスト 2019”にて審査委員、2020年には“第28回 大瀬崎カレンダーフォトコンテスト”の特別審査員も務める。近年は訪⽇ダイビングツーリズム促進を⽬的として“NPO 法⼈ Japan Diving Experience”としての活動も⾏っている。
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