かっこいいヒョウ柄のアヤトリカクレエビも!三重県尾鷲のソフトコーラル畑はとてもフォトジェニック

こんにちは。水中カメラマンの堀口です。

皆さんは1枚の写真に目を奪われたこと、ないでしょうか?

風景写真であれば、「ここに行ってみたいなぁ」とか、「こんな生き物見てみたいなぁ」などと考えるかもしれませんね。

今回、知り合いの方がSNS上に“ある水中の広角写真”をアップしていました。
それがこちらの写真。

尾鷲_魚礁ポイントのソフトコーラルとハナミノカサゴ

魚礁ポイントのソフトコーラルとハナミノカサゴ(写真/yuppy_yuka 様)

撮影された場所は、三重県の尾鷲(おわせ)です。

生い茂るような鮮やかなソフトコーラルの中にハナミノカサゴが舞う。

あまりの美しさに、見とれてしまいました。
その後にまさか自分がこの場所に行くことになるとは……、この時はまだ思いもしませんでした。

三重県・尾鷲の海へ

昨年の12月、須江で行われたABECUP(アベカップ)で一人のガイドさんに出会いました。三重県の尾鷲でガイドされている、ダイブサイト シードリームの伊藤さんです。

伊藤さんに「尾鷲の海はおもしろいので良かったら来てください!」とお誘いをいただきました。

尾鷲と聞いたときに、先ほどの写真が頭に浮かびました。
あのシチュエーションはおもしろそうだな!と。

ありがたいことに、尾鷲は須江から東京へと戻る道中。さらには写真家の吉野雄輔さんも「尾鷲に行こうかな」とおっしゃっていて、何かしらの縁を感じ、三重へと移動することにしました。

見どころ満載の尾鷲

三重県の南部に位置する尾鷲は、熊野灘に面した海沿いの町。リアス式の入り組んだ海岸が広がっています。

日本国内でも雨が多い地として知られ、年間降水量の多さでは常に上位に入るエリアです。

尾鷲_天満浦から尾鷲湾_堀口和重

天満浦から尾鷲湾を望む。眼下にはリアス式海岸が広がる(写真/シードリーム 伊藤英昭様)

初めて訪れた尾鷲。「ヒノキと魚の町」と書かれた看板が目に入ります。
尾鷲は“尾鷲ヒノキ”の産地としても有名で、林業が盛んです。

尾鷲_土井竹林_堀口和重

土井竹林。江戸時代からの林業家「土井家」の竹林で、素掘りのトンネルを抜けると孟宗竹の林が広がる(写真/シードリーム 伊藤英昭様)

また、当然漁業も盛んで、カツオの「生節」やサンマを丸ごと干した「かんぴんたん」、「サンマ寿司」などの伝統食品や料理などがあります。幻の蠣ともとも言われる、白石湖という気水湖で採れる生ガキの味は、天下一品です。

尾鷲_お魚いちば おとと_堀口和重

「お魚いちば おとと」では新鮮な本マグロ丼が格安で楽しめる(写真/シードリーム 伊藤英昭様)

すぐ近くで会えるアヤトリカクレエビ

今回は海況的なこともあり、冒頭の写真のポイント「魚礁」ではなく、港から3分ほどの「一ツ石」を案内してもらいました。

「一ツ石」は潜って行くとややグリーンな海…ですが、そのぶん栄養が行き渡っているような感じで、ソフトコーラルやヤギなどの腔腸動物が多いのが印象的でした。その腔腸動物を棲み家とする甲殻類が多いのも、特徴の一つです。

「一ツ石」の目玉の生き物は?とお話を聞くと、甲殻類好きの伊藤さんはすかさず「アヤトリカクレエビがいます!」との回答。

正直なところ、自分も伊豆でアヤトリカクレエビは見慣れており、そこまでは力を入れていきたいなとも思わなかったのですが……

しかし、ポイントに着きエントリーして少し泳ぐと、水深20mあたりでアヤトリカクレエビがよく棲み家にしているナシジイソギンチャクが見えてきました。

まさかこんな浅くて近い場所にはまだいないだろうなと思っていると、伊藤さんが「ここだよ!」と合図。1.5㎝ぐらいのやや大きめの個体を発見しました。

尾鷲_アヤトリカクレエビ_堀口和重

ナシジイソギンチャクにつくヒョウ柄のアヤトリカクレエビ(撮影/堀口和重)

思い返せば初めてアヤトリカクレエビの出会ったのは、私が学生の頃。東伊豆の伊豆海洋公園でした。その時は水深33mまで行き、見せてもらったのを覚えています。

また、大瀬崎では水深36mのところにいたり、20m台とわりと浅い場所にも現れることもあるのですが、ビーチポイントなのでやや遠いところにいるのです。

そんなアヤトリカクレエビがエントリー後すぐに見ることができるのも、この尾鷲の楽しいところですね。

ちなみに紀伊半島ではヒョウ柄模様のアヤトリカクレエビが見られるのはここだけのようです。

伊藤さんの話をさらに聞いてみると、透明な小さな個体も見られるとのこと。(今回は伊藤さんのお写真をお借りしました)

白いアヤトリカクレエビの個体と、開いたナシジイソギンチャクが絶妙(写真/シードリーム 伊藤英昭様)

白いアヤトリカクレエビの個体と、開いたナシジイソギンチャクが絶妙(写真/シードリーム 伊藤英昭様)

ご一緒に潜り撮影した吉野雄輔さんとも話したのですが、透明な時期の個体は見たことがないし、次はぜひ見たいなぁと思っています。また、それ以外にも、なぜ毎回ナシジイソギンチャクなど決まったイソギンチャクにつくのか?など、生態の不思議などの話でも盛り上がりました。

海況的に1本で終わってしまいましたが、それ以上に楽しめた時間となりました。

ヤギ類に寄生するイソギンチャク

アヤトリカクレエビ以外でもおすすめしたいと、伊藤さんが教えてくれた生き物がいました。

遠くから模様のようにも見えるのは、ヤギ類について寄生するまだ和名のないイソギンチャク。赤いヤギに白いイソギンチャクがビッシリとついています。

色合いが美しいこともあり、少しずつ知名度が上がっている被写体です。エビ類がつくこともあります。

尾鷲_ヤギに寄生するイソギンチャク_堀口和重

ヤギ類に寄生するイソギンチャク(撮影/堀口和重)

岩肌にうまく擬態するオオモンカエルアンコウ

上がり際には、まるで岩肌のようなオオモンカエルアンコウもいました。

真っ黒な体が岩に思えてしまい、恥ずかしながら教えてもらうまで、オオモンカエルアンコウだとはまったくわかりませんでした。

尾鷲_オオモンカエルアンコウ_堀口和重

大きくてびっくりなオオモンカエルアンコウ(撮影/堀口和重)

甲殻類好きにとっては今が一番いいシーズン

1ダイブだけでも十分楽しませてくれた尾鷲ですが、まだまだおもしろいところはたくさんあるようです。

今回は行くことができなかった冒頭の写真のポイント「魚礁」は、女性に大人気なポイントだそう。インスタ映えするような、華やかで色合いが美しいソフトコーラルが多いからでしょう。

また、伊藤さんのお話では、ちょうど今がエビカニなどがおもしろいシーズンでもあるようです。冬場はエビカニの住処になるような腔腸動物が増えるので、多くのエビカニの姿が見られるんですね。甲殻類好きは足を運んでほしいです。

さらに、尾鷲には有名な銚子川などもあり、2ダイビング後に川でのスノーケルなどもリクエストすると応じてくれるようです。詳しくは問い合わせしてみてくださいね。

撮影協力/ダイブサイト シードリーム

堀口和重さん
プロフィール

horiguchi_profile

伊豆の大瀬崎にある大瀬館マリンサービスにチーフインストラクターガイドとして勤務後、2018年4月にプロのカメラマンに転向。
現在は伊豆を拠点に水中撮影から漁風景や海産物の加工まで海に関わる物の撮影を行っている。
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PROFILE
日本を拠点に活動している⽔中カメラマン。カメラマンになる以前はダイビングガイドをしながら数々のフォトコンテストで⼊賞。現在はダイビング・アウトドア・アクアリストなどに関連する雑誌やウェブサイト、新聞などに記事や写真を掲載、水中生物の図鑑や教書にも写真提供している。2019年に日本政府観光局(JNTO)主催の“「⽇本の海」⽔中フォトコンテスト 2019”にて審査委員、2020年には“第28回 大瀬崎カレンダーフォトコンテスト”の特別審査員も務める。近年は訪⽇ダイビングツーリズム促進を⽬的として“NPO 法⼈ Japan Diving Experience”としての活動も⾏っている。
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