海の豊かさを守る!大人も子どもも学べるビジュアルブック『あおいほしのあおいうみ』の魅力とは?
39もの都道府県が海に面しており、古くから海の恵みに支えられてきた日本。私たちダイバーももちろんその恩恵を受けてきた。しかし2024年に日本財団が実施した調査では、海に行きたいと思う人の数は減少し続けていて、実際海に行かない人も増加しているという結果が出ているのも事実なのだ。
そんな中、「エコロジーとエコノミーの共存」をテーマに2001年に発足したNPOである一般社団法人「Think the Earth」から第二弾となる書籍『あおいほしのあおいうみ』が発売された。本書は、「SDGs for School(※)」のプロジェクトの一環で14番目のゴール「海の豊かさを守ろう」をテーマに、海に対する関心を高め、誰もが海について楽しく学べるビジュアルブックだ。同社の理事・上田壮一さんと広報・笹尾実和子さんに話を伺いながら、ご紹介していきたい。
※持続可能な社会創生のために創造的な教育を実践する現場の先生と生徒を応援するプロジェクト
今こそ海について学ぶ時。『あおいほしのあおいうみ』誕生秘話とその魅力
上田さん
本書の先駆けとなったのはSDGs for Schoolの活動における書籍第一弾としてつくられた、誰もがSDGsについて楽しく学べるビジュアルブック『未来を変える目標 SDGsアイデアブック』という本でした。これはおかげさまで発行部数が10万部を超える人気の本(2024年10月現在)になりました。1600校以上に寄贈し、それがきっかけで中高生によるSDGsフォーラムが開催されたり、各地の学校から出張授業にも呼ばれました。
上田さん
しかし、コロナ禍ですべての活動がオンラインに切り替わり、しばらく動けない時期がありました。2023年からようやくフィールドに行けるようになり、その行き先がなぜか対馬(長崎県)、奄美大島(鹿児島県)、熊野灘(和歌山県の潮岬から三重県大王崎にかけての海域)といった海が身近な地域が多かったんです。合計10回以上は行ったと思います。
上田さん
さらに、出版社や学校の先生などから「全部で17個あるSDGsのゴールの中から1つのゴールにテーマを絞った書籍があったら嬉しい」、といった話もありました。そこでどのゴールにするか考えた結果、世界的な潮流(※)や直近で海が身近な地域に多く行っていたことから、 “やっぱり海だよな”と。そんな矢先、海の持続的活用をめざして環境教育やイノベーション創出・普及活動を推進している「公益財団法人ブルーオーシャンファンデーション」の代表理事の更家悠介さんから、子どもたちが読む、海と環境がテーマの本を一緒につくらないか?と声をかけてもらいました。このことがあって、制作を決意しました。
※ユネスコによる「国連海洋科学の10年」の始動により、海の持続可能性に向けた科学的研究や国際協力が進展している
『あおいほしのあおいうみ』が特別な理由。絵本でもあり、気軽に読める雑誌風のデザイン!?
本書は全132ページにわたり、読者に海への好奇心を広げてもらうため、海洋生物の生態や広大な宇宙の話、身近な食卓の話題や海に関わる仕事まで、多角的な視点で楽しく美しいイラストで表現しているのが特徴だ。子どもにとっては楽しく、大人にとっては海洋環境の入門書として読めるものとなっている。
読者の好奇心を刺激するこれらのイラストは、詩人である谷川俊太郎氏の詩「うみ」とイラストレーターの木内達朗氏のイラストのコラボレーションをはじめ、個性あふれる9名のイラストレーターによるもの。イラストレーターのなかには、絵だけでなく、海洋生物の生態に関しても豊富な知識を持つ方もいる。だからこそ、海洋生物の細部にまで拘って描かれており、どのイラストも見応えあるものとなっている。
上田さん
また今回、海洋ごみの実情を現地取材でリアルに伝える対馬についてのページなどを除いては、あえて一つひとつのトピックを掘り下げきらないようにしました。その理由とは、読者に「これでおしまい?もっと知りたい!」という好奇心が芽生えたらいいな、と思ったからこそ。なので、1トピックは見開き4ページのみで、どんどん展開していくようにしています。
一方で、JAXA宇宙航空研究開発機構の矢野創さん、国立科学博物館の松浦啓一さんなど、5名の各分野の専門家たちが提供した知見を紹介するページも入れているので、科学的な視点を学びながら、海と私たちの未来を考える契機にもなるはず。そして本書を読み終わったあと、さらに海に関する知識を深めるお手伝いができればと、巻末に「海のことをもっと知りたい人へ」と題して、より海のことを知れる本や映像を紹介することにしました。
オーシャナCEOの河本が前理事を務めていた「ゼログラヴィティ」も掲載!
奄美大島瀬戸内町にある障がい者も健常者もマリンアクティビティを楽しめるサービスを提供する「ゼログラヴィティ」が、「海の未来を変える10の挑戦」というトピックの中で最初に紹介されている。このトピックの部分は広報・笹尾さんが担当。
笹尾さん
私は障がいを持つことで海を楽しむことが難しい、ということをゼログラヴィティと出会って初めて知ることができました。海に入るまでかなり大きなハードルがありますが、でも1回でもマリンアクティビティを体験することで、すごく感動したり、新しい世界が広がって生きがいにまで繋がる方たちの話を聞いて、素晴らしい機会を提供していると思いました。日常生活の中では、こういった障がい者の方と接点を持てることは少ない方も多いと思うので、本書を通じて少しでも知るきっかけになったらいいな、と思っています。
「海に興味を持ってほしい」、子どもから大人まで手に取ってほしい
最後に、どういった方にどのように読んでほしいか伺ってみた。
上田さん
本書は、小学校高学年から、中高生をメイン対象として設定し、制作しました。でも実は、その年代向けにつくりつつも、子どもじみてもいなく、それでいて堅苦しくない内容にしているので、大人の方々にとっても海を知る入門書になっています。
また、今回、本書を学校などの教育現場で使ってもらうべく、100校に40冊ずつ寄贈するためのクラウドファンディングにも挑戦しました。子どもたちが本に触れて、「海って面白い」、「海に行ってみたい」、「海のことをもっと知りたい」と思ってくれることが本書の目的なので、ぜひ多くの先生方に活用してもらえたらと思っています。
『あおいほしのあおいうみ』は10月下旬より販売開始。お子様にプレゼントするもよし、親子で一緒に読んでもよし、海についての知識を得るために読んでもよし。子どもも大人も海のことを楽しく学んでみてはいかがだろうか。ちなみに筆者は本書のイラストが可愛すぎて一目惚れ。海の情報量も多く知識も身につきそう!と思い、今回の取材時に購入してしまった。
判型 B5変型版 フルカラー 132頁
編著・発行 一般社団法人Think the Earth
発売元 紀伊國屋書店
企画 公益財団法人ブルーオーシャンファンデーション、特定非営利活動法人ZERI JAPAN
編集協力 一般社団法人みなとラボ
監修 縣 秀彦(国立天文台)、大河内直彦(JAMSTEC)ほか
詩 谷川俊太郎
イラスト 加藤休ミ 木内達朗 きのしたちひろ 田渕周平 友永たろ 原田俊二 parayu 吉野由起子 ワタナベケンイチ
写真 平川雄一朗 平井慶祐
用紙 すべての紙にFSC ®認証紙を使用しています
価格 1,980円(税込)
※本書の売上げの一部がSDGs for Schoolの活動を支えています
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