【BSAC連載vol.02】スノーケルインストラクターがいることのメリット
安全で楽しいスノーケリングができるように「スノーケルインストラクター」の普及に努めているダイビング指導団体《BSAC》。
連載2回目では、スノーケルインストラクターがいることによってユーザーやショップにもたらされるメリットについて、《BSAC》の大槻祥久さんと七尾慶一さんにうかがってみた。またスノーケルインストラクターを導入している沖縄のショップにも、話を聞いた。
スノーケルインストラクターがいる
ショップを利用することで、より海が楽しくなる
スノーケリングは、どこでも、自分たちだけでも、楽しめると思っている人が多いだろう。しかしトレーニングを受けたスノーケルインストラクターに引率してもらうと、安全であることはもちろん、より楽しくスノーケリングができる。
七尾さん
《BSAC》のスノーケルインストラクターの中には、ほかの方たちを連れて泳ぐ「リーダーシップ」というトレーニングがあります。この内容は、連れて行っている人をどういう監視下において、どんなところを注意して見ていくかを学ぶので、安全管理の仕方をきちんと身に着けることができます。またレスキュートレーニングも含まれるので、万が一溺れてしまったときなどに、早期に適切な対処ができます。
基本的にスクーバダイビングのファンダイブと同様のスタイルで、コース取りをして皆で回るようにトレーニングをしています。
大槻さん
事業者の方はもちろんですが、一般の方でもスノーケルインストラクターの講習を受ける方がいらっしゃいます。以前お話しを聞いた方はお父さんで、お子さんを安全に海で遊ばせるために講習を受けられました。スノーケルインストラクターのトレーニングを受ける事で、ご自身で家族や仲間をより安全に引率できるというメリットもあります。
残念ながら現在国内で営業されているのスノーケリング事業者の中には、マスク・フィン・スノーケルなどの装備についての知識が乏しかったり、スノーケリングのスキルをよく理解していなかったりする人もいるという。
「スノーケリングツアーを開催する人たちは、当然海に対する知識やスノーケリングのスキルを習得しているはず」と、参加者の皆さんは信じているだろうが、プロであってもそうではない人がいるのが現状だ。こういった事態を改善するためにも、《BSAC》のスノーケルインストラクターコースはとても有意義なものだ。
どんな生物が見られるのか?今日の海況はどんな具合?危険な場所はどこ?など、海のことをよく知るインストラクターに同行してもらえば、よりスノーケリングの楽しみ方が広がり、海が好きな人が増えていくことだろう。
さらにスノーケルインストラクターが引率する場合、終了後にCカードを受け取る事ができるショップがある。(カード認定を受ける事ができるショップは、BSAC Japanに直接お問い合わせください)
キレイなカードなので、旅の思い出にもなることだろう。
沖縄を訪れた修学旅行生のグループは、みんなでうれしそうにカードを手にしていたという。またスノーケリングを体験することで、次のステップとしてスキューバダイビングに興味をもつ人もいることだろう。
大槻さん
スノーケリングを体験したから「すぐにスクーバダイビングを始めよう」とはならないかもしれませんが、マスクやスノーケルなどの器材に慣れておくことで、ダイビングを始めるハードルは低くなっているはずです。
スノーケリングの次は、体験ダイビングかな?と思いますが、あるショップのお客様で「青の洞窟」でスノーケリングをして、「すぐダイバーになりたい!」という方もいらっしゃいました。
スノーケルインストラクターを導入することで、
ダイビングショップにもいろいろなメリットが
スノーケルインストラクターを導入して、スノーケリングを安全に楽しみたいという客層を取り込むことができることは、ダイビングショップにとって大きなメリットだ。エンドユーザーに対して「スノーケリング専門の知識を持ったインストラクターが在籍している」いうことをアピールすることで、安心感や満足度を高め、ほかの事業者との差別化を図ることもできる。
また、経営面でのメリットもある。ダイビングインストラクターより年間の資格維持費が安いため、事業者側としては経費を抑えることができる。
またノンダイバーから講習を受けることができるため、スキューバダイビングのインストラクター取得と比べてトレーニング期間も短く、ダイビング用の重器材も必要無いため、ハードルも低い。
さらにBSACメンバー賠償責任保険に加入できるので、万が一のときにも事業者は賠償責任リスクを回避し、被害者も十分な損害賠償を受ける事ができる。
人口の減少、若者の海離れなど、ダイビングショップにとっては厳しい現状があることは否めない。しかしスノーケルインストラクターを導入することで、今までと違った新規の顧客を取り入れられるようになる。
大槻さん
現在は沖縄が中心ですが、伊豆半島にも熱海や南伊豆など、スノーケリングが盛んな場所はたくさんあります。沖縄以外のエリアでも、スノーケルインストラクターを普及させていきたいですね。
スノーケルインストラクターを導入した
現地ショップの声
沖縄には《BSAC》のスノーケルインストラクターを導入して、ビジネスとして大きな成果を出しているショップがある。久米島の《イーフスポーツクラブ》と石垣島の《やーるーや》の2ショップに話を伺ってみた。
イーフスポーツクラブ
BSACインストラクタートレーナー
CEO 久米浩二さんスノーケルインストラクターの必要性を考えるには、やはり“スノーケルの事故をなくし快適に海を楽しむこと”が大前提になります。
現在、スノーケリング器材を販売することは自由です。購入した方々は、我流で使っていることがほとんどでしょう。
しかし、スノーケルインストラクターから、器材の確かな使い方と基本的な知識を学んだ方たちが増え、その方がさらに誰かに伝えることで、“安全にスノーケリングを楽しむ”という裾野が広がっていくことでしょう。ひいては、事故の減少にもつながると考えています。海遊びの入り口として、“安全、快適、安心なスノーケリング”を提供し、そこから始まる水中世界のステップへとつなげていくビジネススタイルの確立を目指しています。
我流でやっている方々の中には、スクールを拒否される方もいらっしゃいます。その方たちの一部が、沖縄で死亡事故につながっているケースも多いように見受けられます。
それを解決するため、スノーケルスクールの意義をもっと、今後広げていく必要性があると考えています。
マリンサービス やーるーや
BSACインストラクタートレーナー
代表 青井 秀樹さん15年前ショップ開業時、当店に勤務していたスタッフの多くは無資格でした。
周囲のほとんどのお店はそんな事は気にせずに運営されていましたが、私は「これではいけない」と、当時加盟していたダイビング指導団体のダイブマスターのランクをスタッフ全員に認定しようと決めました。ところが実際のトレーニングは、当店の事業内容と関係のないダイビングの知識や技術を身につける期間が長く、その分無駄な負担も大きかっだと思います。
また逆に、自分自身が経験してきた中で身につけた「伝えないといけない事」はトレーニング中に習う事がなく、認定後に再度スタッフ研修をしないといけないといった状況でした。そんな矢先、BSACのスノーケルインストラクターのお話を頂いて導入する事に。導入後は負担が減っただけでなく、これまで以上にお客様から安心感を頂けるようになりました。充実した保険面でのサポートも助かっています。
今では石垣島の同業他社からのトレーニングの依頼も数多く引き受けています。
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1953年に英国ロンドンで設立され、今では世界中に支部を持つダイビング指導団体。2014年には英国王室ウィリアム王子が総裁に就任。
「SAFETY FIRST(安全はすべてにわたって優先する)」を基本理念に、各プログラムの開発等も行っている。
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※通常オーシャナでは、シュノーケリング・シュノーケルと表記していますが、今回の連載では、BSACの表記に合わせ、スノーケリング・スノーケルで統一しています。
ダイビング指導団体BSAC「安全なスノーケリング普及のための取り組み」(連載トップページへ)
- 【BSAC連載vol.01】スノーケルインストラクター資格を導入した理由とその背景
- 【BSAC連載vol.02】スノーケルインストラクターがいることのメリット
- 【BSAC連載vol.03】スノーケルインストラクターになるには?講習内容と受講者の声