ダイビング指導団体BSAC「安全なスノーケリング普及のための取り組み」(第3回)

【BSAC連載vol.03】スノーケルインストラクターになるには?講習内容と受講者の声

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ダイビング指導団体《BSAC》の「スノーケルインストラクター」は、沖縄を中心に徐々に普及してきている。
連載3回目では、スノーケルインストラクターになるためのトレーニングについて、《BSAC》の大槻祥久さんと七尾慶一さんにうかがってみた。またスノーケルインストラクターコースの受講生の方たちにも話を聞いてみた。

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スノーケルインストラクターに必要な期間

《BSAC》のスノーケルインストラクター講習は、実技、座学などを含めて、6日間程度の期間(受講スケジュールや保有資格によって前後する)が必要だ。

ただし、6日間に集中して講習を受ける場合もあれば、ダイビングショップでスタッフとして働きながら、ショップにいるインストラクターから仕事の合間に講習を受けて進捗していくパターンもある。
人によっては、期間中に全てのトレーニングをクリアできない人もいる。

(写真提供:やーるーや)

(写真提供:やーるーや)

内容は器材について、スノーケリングのスキルなどの基本的なことから、海で何かトラブルが起きたときの対処法、お客さんへのプレゼンテーションなど多岐にわたる。

七尾さん

スノーケルインストラクターの講習では、「事故を起こさない」ためのスキルと知識を身に着けることが一番重要です。そのための海況の判断など、実践的なことも学んでいきます。

スノーケリングはダイビングと違って、水面を泳いでいる人たちを立体的に見ることができないため、トラブルの発見が遅くなってしまうこともあります。お客さんたちのスノーケルやマスクに水がたまっていないか?など、細かく安全をチェックすることはとても重要です。

講習中の七尾さん

講習中の七尾さん

器材の正しい使い方、安全に泳ぐためのスキル、そして何か起きたときに対処できる方法。これらをきちんとゲストにレクチャーできて、見守ることができるスノーケルインストラクターがいれば、とても安心してスノーケリングを楽しむことができる。

スノーケルインストラクター講習の内容

6日間で行われるスノーケルインストラクターの講習内容は、以下のようなサンプルスケジュールになっている。

【1日目】
・BSACスノーケルインストラクターコース セオリーレッスン(座学)
スノーケルインストラクターコース規準の様々な条件や活動範囲を知る。
・CPR-AED  ・セオリーレッスン(座学) ・CPR-AED認定
まず心肺蘇生法を学ぶ。救急蘇生法は、自分一人でできるようになることが基本。【2日目】
・BSACスノーケルインストラクターコース セオリーレッスン(座学)
インストラクターとして、海洋・気象についての知識を学ぶ
・ファーストエイド ・セオリーレッスン(座学) ・ファーストエイド認定
ケガ(切り傷、骨折、脱臼など)をしたときの対処法、陸上での救助法を学ぶ。【3日目】
・BSACスノーケラーコース  ・セオリーレッスン(座学)
講習の概要を知り、ガイドマニュアルを使った講習の仕方を学ぶ。
・BSACスノーケルレスキュー
スノーケリング中でのトラブル対処法を学ぶ。

【4日目】
・スノーケルレスキュー ・緊急フローチャート解説
スノーケリング中におぼれた場合の救助方法を学ぶ。
・セオリーレッスン(座学)
お客様へのプレゼン方法、時間のコントロール方法などを学ぶ。

【5日目】
・セオリーレッスンプレゼンテーション
ガイドマニュアルを使った講習の仕方を学ぶ。
・スキルレッスンプレゼンテーション
スキルのデモンストレーション方法、失敗したときの修正方法などを学ぶ。
・リーダーシップトレーニング
実際に人を連れて泳ぐ方法や、離れてしまったり、トラブルが起きてしまったときの対処法などを学ぶ。
・泳力などの一部評価
スノーケリング、スキンダイビングのスキルを評価。

【6日目】
・インターンシップ ・スキルプレゼンテーション ・SIE(評価コース)
生徒役とインストラクター役に分かれ、実際の講習を行う。

 

(写真提供:やーるーや)

(写真提供:やーるーや)

スノーケルインストラクター受講生の声

実際にスノーケルインストラクターの講習を受けた方に、受講してみた感想をうかがってみた。
また、これからスノーケルインストラクターを目指す方にもコメントをいただいた。

イーフスポーツクラブスタッフ
BSACスノーケルインストラクター
中島清徳

様々な講習を重ね、近年スノーケルの事故が多発している実態を知りました。
原因の多くは、正しい知識が一人一人に理解されていない事だと思います。インストラクターとして、スノーケルを通じ海の知識や準備の仕方、危険回避の方法等、海で遊ぶ上で必要な知識とスキルを今後はしっかり伝えていきたいです。
また、スノーケルではこのような事を伝える場が少ないとも感じています。皆さまが安全で楽しい時間を過ごすためにも、私たちがお伝えした事を多くの方々に共有してもらうことが、とても重要なことだと思います。
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イーフスポーツクラブスタッフ
BSACスノーケルインストラクター
三原千穂

スノーケルインストラクター講習を受けてよかったと思うのは、自分自身も正しいスノーケルの使い方を1から学べたこと、そして、仲間の講習を見てお互い高め合えたことです。今までは気づけなかった、マスクバンドの位置など細いことにまで気づけるようになりました。
一方で、様々なお客様がいる中で“どのように分かりやすく楽しくスノーケルの使い方を伝えられるか”また“表現力や強調性を出していくこと”が大変でした。
スノーケルを使った事故が年々増えているので、スノーケルインストラクターとして、自分が学んだ正しいスノーケルの使い方を安全に正しくお客様に伝え、しっかりと周りを見て行動できるインストラクターになっていきたいです。
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マリンサービス やーるーやスタッフ
BSACスノーケルインストラクター
富井奈々香(指導歴1年)

学校で学んだことから石垣島へ移り、最初は覚えることも多くついていくのがやっとでしたが、経験を積みながらアシスタントをしていました。
ある日、インストラクターコースを受講しようという事になりました。今までの実務の中で理解出来ていた事は多くあったものの、実際にトレーニングを受けてみるととても大変で……、途中投げ出したい気持ちにもなりましたが、諦めずに最後まで頑張って無事合格する事が出来ました。
インストラクターとして今活動していて、あの時の苦労が無かったら今がないと思うくらい内容が濃かったので、今では私のバイブルとなっています。
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マリンサービス やーるーやスタッフ
BSACスキンダイビングインストラクター
金井 愛里(指導歴7年)

学校で2年間勉強して卒業してから《やーるーや》で働きはじめました。
実際に働き出すと、プロフェッショナルを求めるショップの方針についていくのが大変なことも多くありましたが、実務経験(アシスタント1年)を積んだ後、インストラクタートレーニングに挑戦!
厳しいこともいっぱいあって大変でしたが、今は取得してよかったと思います。
お客様の引率や、講習中に安全を正しく伝えることが、自分が長くこの仕事をしていく上でとても大事な事と知り、今では胸を張って海で仕事ができます。
また知らない世界をたくさん見ることが出来て今はとても楽しいです。BSACのインストラクターとして活動することに誇りを持っています。

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海洋専門学校 ドルフィン専攻2年生
武田 玲奈(アウトフィッター就職希望)

2019年3月、研修生として《やーるーや》さんにお世話になりました。スタッフの先輩方はとてもキビキビと動いていて、お客さんへの丁寧な講習とガイドする姿にあこがれています!

実は、ここにに来るのは2回目。
自分では、はっきりと覚えていなかったのですが……なんと、子どもの頃にも来ていたことを研修前に両親から聞かされました。本当に偶然だったのですが、その頃の楽しかった体験が今の私の人生に大きな影響を与え、今またここに来た事が本当にすごいと思っています。

そして私は学校を卒業後、職業として海を案内できるインストラクターになりたい、その為にこの職業に就きたいと思っています。
自分がそうだったように、子供達にも楽しい経験をしてもらい、また海に戻って来たいと思ってもらえるようなインストラクターになりたいと思っています。DSC02339

マリンサービス やーるーやスタッフ(2018年10月退社)
BSACスキンダイビングインストラクター(指導歴5年)
土屋あかり

現在は引退していますが、《やーるーや》で過ごした時間はとても有意義でした。
ショップに務めてガイドをするならインストラクター(資格を取得する必要がある)が必要と聞いて、「普段やっている業務に必要なの?」と最初はよくわかりませんでした。しかし、取得をして所属していたころ、海に携わり高い価値観で過ごした日常。「引退するまで事故なく過ごすことが楽しい思い出になるので、絶対に安全を売りにしていく」とオーナーが常に言っていた言葉が今も心に残っています。
今は地元に戻り陸の企業に勤めています。引退するまできついこともあったりましたが、インストラクターとして活動できたことを誇りに思います。
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これからスノーケルインストラクターを
目指す方へのメッセージ

最後に、七尾さんと大槻さんにこれからスノーケルインストラクターを目指す方に、メッセージをいただいた。
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大槻さん

本国イギリスの《BSAC》との理念でもある「セイフティ・ファースト(安全第一)」を、スノーケルインストラクターの皆さんにも普及していっていただきたいと思います。
また昨年の国際サンゴ礁年は、《BSAC》もオフィシャルサポーターを務めさせていただきました。スノーケリングで、サンゴを傷つけてしまうことがないように、環境保全への意識もインストラクターには伝えていってもらいたいと思います。

七尾さん

これからスノーケルインストラクターを目指す方に伝えたいのは、「教え方ひとつで、お客様が楽しいと感じてくれるかどうかが決まる」ことです。ダイビングだけでなく、その他のマリンスポーツやスノーボードでもそうですが、楽しいと思えるスポーツは、最初は失敗がつきものです。その失敗が「嫌な体験」にならないように、安全に楽しくスノーケリングをするスキルを教えていっていただきたいと思います。

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1953年に英国ロンドンで設立され、今では世界中に支部を持つダイビング指導団体。2014年には英国王室ウィリアム王子が総裁に就任。
「SAFETY FIRST(安全はすべてにわたって優先する)」を基本理念に、各プログラムの開発等も行っている。

BSAC UK本部

BSAC UK本部

※通常オーシャナでは、シュノーケリング・シュノーケルと表記していますが、今回の連載では、BSACの表記に合わせ、スノーケリング・スノーケルで統一しています。

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