RGBlueは将来性を含めて“買い”の水中ライト!詳細レビュー
水中撮影機材レビュー 一撮両断!
機材名&定価
株式会社エーオーアイ・ジャパン
RGBlue SYSTEM 01
¥63,000(税込)
水中撮影時にぜひとも携行したいのが水中ライト。
特にデジタルカメラ時代になってからは、オートフォーカスを助けてくれるフォーカスライトとしての機能だけでなく、動画撮影の撮影用光源としてのニーズが高まっている。
そんな状況の中で登場したのが「RGBlue」。
今年の春に販売が開始されたのだが、ユーザーの支持が高まり人気商品となっているという。
最大光量は2200ルーメン(無段階調節)、連続点灯時間は500分〜35分(光量による)と従来のLEDライトと基本性能は変わらないのだが…。
その人気の秘密を探ってみた。
商品の概要はこちらのメーカーホームページを参考にしてほしい。
System01 – PRODUCTS – RGBLUE : UNDERWATER LIGHTING SYSTEM
エーオーアイジャパンとは!? まずはメーカーの紹介
商品の説明に入る前に発売元のメーカーから紹介しよう。
「エーオーアイ・ジャパン」とは水中撮影機材業界では聞き慣れない会社名だ。
筆者もこの商品を手にしたときに初めて知った会社である。
それもそのはず、この会社は水中撮影機材分野においては大手メーカーのコンパクトデジタルカメラ用ハウジング等をOEMで製造している会社なのだ。
OEMなので表に会社名は出てこないため、当然メーカーとしての知名度は低い。
名前は知られていなくとも、水中撮影機材の製作実績は抜群である。
エーオーアイ・ジャパンの方に伺ったが、今回水中ライトを作る上で念頭にあったのは「浸水による全損がないこと」だったという。
メーカーの黒子としてさまざまな撮影機材を作ってきたが、ユーザーの不適切な使用法による浸水は後を絶たないという。
浸水のさまざまなケースが報告、蓄積されていく中で、「メーカーの想定を超えたミスによる浸水だったとしても、それでも壊れない機材を作りたい」というポリシーがあったそうだ。
その結果がライト部とバッテリー部が分断する「モジュールシステム」の採用であり、またこのシステムが副次的なさまざまなメリットを生んでいるのだが、これについては後述しよう。
水中ライトの意義を再確認。RGBlueの色再現について
そもそも水中撮影時になぜストロボやライトを使うかというと、赤、黄色等水によって失われる暖色系の色合いを再現するためだ。
ところが動画撮影時における現在の主流であるLEDライトは、光が青白くなる傾向がある。
海の生き物達が持つビビットな色合いを再現しきれていなかったのだ。
そこでRGBlueがいちばんこだわったのは「演色性」。
自然界の光は元々太陽の光。
太陽光の性質に近ければ近いほど「演色性が高い」という。
当然、演色性が高いほど自然な赤や黄色が水中でも再現されることになる。
これは比べるのがいちばん手っ取り早いので、下の作例を見てほしい。
従来のLEDライトの画は色合いは青白いが、対してRGBlueの画のほうは赤がよりビビッドに再現されている。
もちろん画像修正はない。
どちらが魅力的な赤が出ているかは言うまでもないだろう。
水中ライトの性能と聞いてまず気になるのは発光量と発光持続時間だが、光の質にこだわったRGBlueは水中ライトを使用する意義を改めて考えさせてくれた。
シャープな画像の敵になるマルチチャドーを解消!
明るさ、持続時間だけでなく、撮影用光源としての質の高さを求めて開発されたRGBlue。
演色性の高さとともにこのライトがもうひとつ実現したのはマルチシャドーの解消だ。
マルチシャドーとは、その名のとおり影が何重にも重なって滲んでいるように見える現象である。
これも見比べるのが早いのでまずは下を見てほしい。
水中ではなかなか気がつかないが、シンプルな背景に影を写すとその差は歴然だ。
なぜこんな現象が起こるのかというと、秘密はライトの発光部にある。
一般的なLEDライトの発光部を覗いてみると、細かい点の発光部が連なっていて、小さな発光部を束にすることにより大きな光量を得ているのだ。
このため少しずつ発光位置が異なる細かい発光部がそれぞれ影を作るので、結果的に影が何重にもなって滲んだような印象になる。
対してRGBlueの発光部には点がなく、全面発光になっている。
発光面が一カ所のため、当然影は滲まずすっきりとしたものになるのだ。
なぜRGBlueは全面発光が可能になったのかというと、従来より高性能な発光基盤を海外から適正価格で調達できるようになったからとのこと。
これはRGBlueを開発する上での大きなきっかけにもなったという。
画期的なモジュールシステム その利点とは?
RGBlueは前部のライト部と、後部のバッテリー部に分離するというモジュールシステムを採用している。
この利点は大きく2つある。
ひとつ目は今後のバージョンアップへの対応だ。
例えばバッテリーの容量は日進月歩。
同じ体積のバッテリーに大容量の電気を貯められるようにする改良が日々行われている。
そして将来、バッテリーが大容量化すればバッテリー部のみを追加購入することで、さらなる長時間点灯が可能になる。
ライト部ごと交換せず、バッテリー部だけ交換すればコストも少なくてすみ、当然エコでもある。
もちろん古いバッテリーは予備バッテリーにもなろう。
またバッテリーは使用を重ねるとどうしても劣化し、具体的には点灯時間がどんどん短くなってしまう。
RGBlueのスペックを見ると500回使用可能となっていて、他のライトも大抵そのくらいの使用回数だろう。
しかし、毎日潜るガイドさんなどはあっという間に500回くらい使ってしまうはず。
そうなってもバッテリー部だけ交換できれば、ライト丸ごと買い直すより安い。
また、ライト部に関しても、より大光量を照射できるライト部が今後開発されれば将来その部分だけ交換できる。
メーカーによると、他にも今後さまざまな用途に合わせた発光部を研究、開発していきたいという。
用途も性能も無限に広がると言う訳だ。
ふたつ目のメリットは飛行機移動への対応だ。
最近、飛行機に乗るときリチウムイオンバッテリーのチェックが厳しくなっていると感じている方は多いことと思う。
保安上の理由からリチウムイオン電池は完全絶縁状態にして持ち込むという要請が強まっているのだが、モジュールシステムを採用することでこれが容易になった。
他のライトの場合、完全絶縁にするには分解に近い作業を強いられるものもある。
今後、こういったセキュリティ問題は厳しくなっていく一方だと思われる中で、飛行機移動の多いダイバーとしてはこれは非常にありがたい。
ほぼ完璧な防水性能ほか安全面について
「浸水による全損がないこと」がRGBlue開発におけるキーだったと冒頭で述べたが、このライトの防水性能は100m防水。
それだけでなく、このライトは前部、後部の各モジュールとも防水仕様となっており、モジュール接合部に浸水したとしてもライトが壊れることはまずない。
また、もうひとつ安全面に配慮されているのは、発光面サイドの切り込み。
これは実際に過去にあった事例とのことだが、とあるユーザーが潜水後、テーブルの上に発光部を下にしてライトを置いたそうだ。
ところがライトを消し忘れていたため、テーブルに設置した発光面が高温になって危険な状態になったという。
発光部を真下に向けて置くと、光が遮断され、つきっぱなしになっているかそうでないかわからなかったという。
そこでRGBlueは、発光面のサイドに切り込みを入れたそう。
これにより発光部を下にしても、切り込みより光が漏れてユーザーはすぐにつきっぱなしに気づくことができるという。
「万が一」の事態を徹底的に突き詰め、「十万が一、百万が一」へと安全面を追求する姿勢は素晴らしいと思う。
唯一、惜しかったこと、、
RGBlueをここまでベタ褒めで進めているが、確かに使ってみて良いライトだと思った。
その中で唯一(他の水中ライトにはあってこのライトにはない)欲しかった機能が現在の発光量を示す表示だ。
RGBlueの調光は500lm/900lm/1300lm/1800lmの4段階か、または300lm~2200lmを無段階で調節できるのだが、実際に光らせているときどのくらいの光量で光らせているのか示してくれないのだ。
そのため調光時はいったん発光量をいちばん上、あるいは下にしてそこから調節していく手順が必要になった。
さっきまで合わせていた発光量を覚えておけば良いのだが、水中では大抵そこまで気を使っていられるものではなく、物忘れも激しい(個人的にも)ので、その機能があれば完璧だったのにと思った次第。
水中ライトに関してひとこと
最後にひとつ、伝えたいことがある。
これはRGBlueだけに限らず水中ライト全般に関しての誤解というか勘違いというか、、。
よく現場で読者から聞かれるのは、「水中ライトがあればストロボはいらないですか?」という質問。
はっきり言うと、水中ライトは写真撮影時におけるストロボの代わりにはならない。
写真撮影時に置いてはストロボがメインで、ライトはフォーカスライト的なサブ要因で使うものだ(もちろん動画撮影時は水中ライトがメイン光源となる)。
まず写真の光源として、水中ライトの光量は圧倒的に小さい。
ストロボ光は一瞬だがとても強力で、速いシャッター速度で絞りを絞っても十分な光量となる(当たり前だが)。
しかしそれを水中ライトに求めるのは難しい。
ISO感度を上げ、絞りを開放付近にし、シャッタースピードを遅くすれば撮れないこともないが、絞り込んでのシャープな写真は撮れないし、シャッタースピードを遅くすれば手ブレ(または被写体ブレ)も目立つようになる。
被写体から数センチの位置からライトを当てればある程度絞り込むこともできるかもしれないが、目の前で強烈な光を浴びせられれば撮影前に被写体は逃げてしまうだろう。
よく水中ライトを紹介する雑誌の記事などで「●×ライトのみで撮影した作例」というキャプションとともにその作例が掲載されている。
それを鵜呑みにして水中ライトだけで写真撮影ができると思ってはダメ。
熟練したプロカメラマンが誌面の記事制作のために撮っているのであって、決して水中ライトだけで簡単に写真が撮れるものではない。
彼らとて(自分を含め)普段の写真撮影時に水中ライトだけで撮っているはずもない。
ユニークなコンセプトのRGBlue。自分としては買い!
RGBlueはモジュール機構を採用しているので、今後各部を交換&バージョンアップしていけば一生使えるライトになる。
本体発売後もさまざまなオプションを発表しており、その発展性に多いに期待したい。
また撮影を生業としている自分とすれば、光量だけでなく“光質”にこだわっているというのは最も見逃せない点だ。
ライト自体は手のひらサイズなので一眼レフハウジングの上に取り付けて、普段はフォーカスライト(またはナイト撮影時のライト)として使い、ここぞという場面でマクロ動画用撮影の光源とする。
こんな使い方がいちばんしっくり来る。
定価6万3000円は安くはないが、発展性、安全性、発光性能を含め、これから水中ライトを調達したい人にはおすすめの逸品である。