「おくりびと」からエロを思う
わかりやすい人間である僕は、
アカデミー賞をとったからという理由で「おくりびと」を観てみることに。
映画評論は柄ではないのでやめておくが、
一緒に行った女子が「滝田監督といえばピンク映画」ということを知らずに、
驚きつつも「まあ、そりゃそうか」と思う。
父スズオに不名誉なことなので本当は言ってはいけないのだろうが、
僕は中学校1年生のころから、
父スズオのエロビデオの隠し場所を突き止めていた(笑)。
大量にあったビデオの中に(父スズオすまん!)、
滝田監督の「痴漢電車」があった。
海賊版だったのか、ものすごく画質が悪かった思い出があるが、
父スズオの好みだっただったらしく(父スズオすまん!)、
「電車で豆探し」みたいなのも含め、何だか大量にあった。
思春期の僕は、それらをコッソリ観るのが楽しみで、
もちろん痴漢電車も観たのだが、正直イマイチだった。
というのも、今検索するとピンクの天才というようなことも言われているが、
テラ少年にとっては抜きたくてチンチンを握り締めているのに、
いらないユーモアというかパロディ(?)みたいなのが入ってきて、
ただただ萎えるのだった。
猿だったテラ少年は、笑いたいのではなく抜きたいのである。
そうかと言って、スズオコレクションにあるヤクザが作ったうような、
局部モロ出しの裏モノは「女性=神秘」であったテラ少年にはドギつくて、
それもまた萎える。
となると、結局、ピンク映画より裏モノより、
AVビデオ専門業者が作った、 「抜く」を第一に考え、
しかも女性の幻想も持たせてくれるビデオがお気に入りになった。
しかし、40代後半のカメラマンに話を聞くと、
AVはおもしろくなく、やっぱりピンク映画が好きだという。
僕らの世代は即物的になっていて、
AVビデオを借りても、早送りして抜く場所を探す人が多い気がする。
その先輩カメラマンやひと世代上の人に話を聞くと、
ストーリーを楽しみ、想像の世界を楽しんでいるようだ。
先輩は「局部が見えるより、パンチラの方が興奮する」と言っていたが、
僕はパンチラでは興奮しない。そう言うと先輩は「わかってねーなー」と。
そう考えるとピンク映画は僕らの世代には物足りないし、
今、ネットでいくらでも無修正動画が拾える現代の子供にとっては、
僕が喜んで見ているような動画ももう物足らないのかもしれない。
ピンク映画は映画に情熱と才能がある人の青田買いの場でもあり、
観客もその情熱と才能を楽しむ土壌があったのだろうが、
今は、素人みたいなのが、素人みたいなのをハメ撮りしちゃったほうが、
興奮するような時代。
エロには想像とか抑圧とか隠し事が大事だが、
局部見まくりの今の子供たちはどこに興奮するんだろ。
内臓とか幼児とか排泄とか、そういう方向にいくしかない気も……。
そんなこんなで、
目を薄目にしてモザイクをで消そうとしていた時代が
良かったなぁと思いつつも、
モザイクなしではもう見られない自分もいる。
名作からこんなことを考えているとは、
一緒に映画に行った女性には口が裂けても言えない(笑)。
それにしても、不思議なことに、「おくりびと」を観て、
何だか懐かしい感覚が蘇った。
ひょっとしたら、それが「痴漢電車」なんじゃないかと思い出し、
何とかもう一度痴漢電車をチェックしてみたい気持ちになったのだが、
一緒に映画に行った女性は「痴漢電車」は一緒に観てくれないだろうなぁ。