イントラをやらない理由

僕は、インストラクターの資格は持っているが、
まったく講習を行っていない、なんちゃってイントラだ。

一時、インストラクターとして講習もやろうと思ったこともあるが、
今現在もやっていない。

なぜか?

単純にライターとして忙しいというのもあるが、
やっぱり恐ろしいのだ。

何が恐ろしいのか?

本でも書いているが、その昔イントラとして講習をやったとき、
自分は残圧100あったが、念のために聞いた講習生の残圧が0。
向こうもびっくりだが、こっちはもっとびっくり。

振り返ったら一人足りない、ビーチエントリーでバックロールする、
マウスピースがくわえられずに口からレギュがポロリ、
マスククリアした途端に急浮上……etc.

もう、心臓がいくつあっても足りない。
これは僕が未熟だということが最大の原因であるが、
仕事の中で、死が頭をかすめることのプレッシャーに耐えられなかった。

そして、労働環境。

給料や体力面に関しては、若かったのでまったく気にならなかったのだが
(1週間で10万もらっていたので、むしろいい方だったかも)、
自分に裁量がないことがストレスだった。

濁っている海。
安全のためにはやめたほうがいいと思っても、オーナーからしてみれば、
ここまで来てしまった経費やスケジュールのことを考えれば、
とりあえず潜らせてお茶を濁すしかない。
結果いやいや潜るハメに。 そして、案の定、人数が何人か足りなくなったりする。

通常のダイビングでもそうだが、
人の決めたスケジュールの枠組みで潜ることは結構ストレス。
それが、連れていく立場ならなおさら。

オーナーの目、講習生の目、よくわからない海。
都市型ショップの若手イントラのストレスは、
時としてゲストより大きかったりする。
このとき、「雇われイントラはちょっと厳しいな」と率直に思った。

そして、これは今復活しようと思って思うことだが、
厳しすぎるイントラ(ガイド)の管理責任。

■神子元島でのダイバーが船に巻き込まれた事故
http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/AA30A86112E18C5949256F5D003615B8.pdf ※30本ダイバーの自己責任よりイントラの管理責任を多く問われている。

自己責任と管理責任の境界線は難しいが、
こうした判例が続くと、何本潜っていても、
事故が起これば何でもイントラやガイドが悪いとなる可能性がある。
実際、イントラやガイドの注意義務として「5秒間目を離してはいけない」
なんて提案も出てくる始末。

これで保険システムが崩壊したら、
「海が好きだから」では済まされない。

もちろん、これは言っていることとやっていることが違う講習を
やってきた業界が悪いのだが、
心あるイントラやこれからイントラをやろうとする人にとってはいい迷惑だ。

50本潜っているのに「潜降できな〜い」と平然というダイバーの面倒を見る、
南の島のガイドさんの悲痛な叫びをカードを発行したイントラに聞かせてあげたい。

何だかイントラのネガティブキャンペーンをしてしまったようだが、
こんなことを書くのは、明るい兆しを感じているから。

これまで、業界には団結、監視、評価が足りなかったが、
『日本安全潜水協会』や『PADI』に可能性を感じる今日この頃。

え? 媒体は? う〜ん、う〜ん、う〜ん。
微力ながらがんばります……。

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PROFILE
法政大学アクアダイビング時にダイビングインストラクター資格を取得。
卒業後は、ダイビング誌の編集者として世界の海を行脚。
潜ったダイビングポイントは500を超え、夢は誰よりもいろんな海を潜ること。
ダイビング入門誌副編集長を経て、「ocean+α」を立ち上げ初代編集長に。

現在、フリーランスとして、ダイバーがより安全に楽しく潜るため、新しい選択肢を提供するため、
そして、ダイビング業界で働く人が幸せになれる環境を作るために、深海に潜伏して活動中。

〇詳細プロフィール/コンタクト
https://divingman.co.jp/profile/
〇NPOプロジェクトセーフダイブ
http://safedive.or.jp/
〇問い合わせ・連絡先
teraniku@gmail.com

■著書:「スキルアップ寺子屋」、「スキルアップ寺子屋NEO」
■DVD:「絶対☆ダイビングスキル10」、「奥義☆ダイビングスキル20」
■安全ダイビング提言集
http://safedive.or.jp/journal
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