海の気象を知るとダイビングはもっと楽しい!気象予報士による新連載スタート

皆さん、こんにちは!
新規に連載を始める、気象予報士の「くま呑み」です。

ペンネームを見て、あのかわいいニモのような人を想像したあなた、ごめんなさい。
プロフィール写真を見てもらえばわかりますが、私は外見が「くま」なので、このペンネームなのです。
もちろん、お魚の名前にかけてありますけどね。

それに「呑み」と書いてはありますが、言うほど呑めません。
もちろん、海に行って新鮮な魚貝と美味しいお酒飲むのは大好きですけれど(じゅる…)。

こんな「くま呑み」といっしょに、お天気の話、空の話、どうぞお付き合いください。

メキシコの海と雲(撮影:越智隆治)

突然ですが、皆さんはどんなダイビング・スタイルなのでしょうか。

私は、あえて言うなら、「地形派」です。
アーチとか地層の割れ目とかドロップオフとか穴とか大好きです。

あと、もう一つは、水中に降ってくる水面からの光!
これを、ふわふわ漂いながら眺めているのも大好きです。

トンネルをくぐったら、その先で真っ白な底の砂に明るい光が水面から刺しているのが見えるなんて、もう、超萌えポイント(?)です。
逆に、お魚の名前が覚えられないのが弱点なのですが(笑)。

考えてみると、小さいころから、地形や気象が好きでした。
小学校で地層とか河岸段丘とか三日月湖とか習いますけど、もう興味津々。

そして、そういった地形をつくる気象についても同様に興味があって、地図とかテレビの天気予報で天気図を見るのがすごく好きな子どもでした。

変? ええ、変ですよね?
でも、どうして雨が降るのか、どうして風が吹くのか、そういう水がどうやって地形に変化をもたらすのか、よく考えていたものです。

それと、真っ青な空や、いろいろな形の雲、虹も好きです。
夕陽を眺めるポイントの話だけで、酒一杯行けちゃいます!

格好良く言うなら、「地球のいとなみや息吹を感じるのがすき」だったのでしょうね、きっと(照笑)。

ダイビングが面白いのは、やはり、その「地球の息吹」を肌で感じるスポーツだからだと思っています。
たぶん、そういう意味では、ハンググライダーやパラグライダー、熱気球などに近いことがあるかもしれません。

彼らフライヤーの人たちは気流を読み、風向を見定めて安全に楽しくスポーツをします。
そして、逆に見誤ったときには危険が待っている状況です。
これは大自然を相手にするスポーツであればあるほど、同じことが言えると思います。

フライヤーが空気の流れを読む必要があるように、我々ダイバーは海況や海の流れ、波を見定めることで、ダイビングをより楽しめるわけです。
ダイビングが快適になるか、あるいは危険を伴ってしまうかは、その意味では、そういった海の状況の見定めにかかっているわけです。

上昇気流自体は当然見えません。
しかし、例えば、下が緑地よりも道やグラウンドの上に上昇気流ができます。
そしてそれを知っている鳥が利用するので、鳥の動きを見ることで上昇気流があるかないかをフライヤーは見分けます。

ヨットマンは水面のさざなみや色の変化で、風が来るかどうかを見定めます。
ダイバーも、水中の魚の泳ぎや泡の昇り方を見て、海中の潮の流れを見たりしますよね。

ただ、そういう環境が、数十分後、数時間後、あるいは数日後にどのように変わるだろうかということは、気象の変化を予測しない限り読むことができません。

ところが、最近、一般には「晴れ」「曇り」「雨」などの「天気予報」はよく見ますが、なかなか天気図を見る機会が減っているように思うのです。

これでは、都会で生活する時に、雨傘が必要かどうか程度なら問題はありませんけれど、海を相手するスポーツの場では不十分です。

天気予報の図

よく見る天気予報のイメージ(ピンポイント天気(東京) – ウェザーニュースより0

例えば、今日、こんな予報が出ていたとします。

9~12時 晴
12~15時 晴
15~18時 晴
18~21時 雨
21~0時 晴

これを見て、皆さんはどう思われますか。

ある方は、「ああ、夕立が来るんだろうな」と思うかもしれません。
ある方は、「寒冷前線が通過するのだろうか?」と思うかもしれません。
都会の人だったら、最近は「夕方ゲリラ豪雨かな?」と思うかもしれませんね。

ちょっとだけの夕立だったら、あまり問題はないでしょう。
でも、寒冷前線の通過だったら、風も激しく吹く可能性があります。
場合によると竜巻など、甚大な被害になることだってありえます。

実際、私、八丈島に行ったときに、八丈小島の左手遠方に竜巻を見たことがあるんです。
潜っていたときではなかったですし、近づいて来なかったので大丈夫でしたけど。

そんなわけで、私達ダイバーも、「今日の午後は雨が降るらしい」というだけではなくて、その雨が「どうして降るのか」にまで興味を持てるといいな、って思うのです。

そのほうが安全につながりますし、なにより、カッコよくないですか?

これからのこの連載では、「どうして雨が降るのか」ということから始めて(いや、「雨雲から降るに決まってるでしょ!」って心の中でつっこんだ方、ちょっとお待ちを!)、「どうして雨雲ができるのか」や、そもそも低気圧や高気圧の本質とか、台風のこと、波のこと、もっと大きく海流や大気の大きな循環がどうして起きるのかといったお話までできればと思っています。

これら全てが、「どうして雨が降るのか」に繋がっているのですから。

また、時には「気象学」的な立場を離れて、海の回りで気象現象が作ってくれる様々な美しい景色などの話題も織り交ぜて行きたいですね。

単なる「海洋気象学」ではなくて、ダイバーが知っていると楽しくてカッコいい、次のダイビングツアーでは、ちょっと薀蓄(うんちく)を語れるような、そんな連載にしてまいります。

乞うご期待!

また、同時に、気象予報士に聞いてみたいことがあれば、お気軽にご質問も送ってください。

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PROFILE
日本気象予報士会会員。
国際基督教大学(ICU) 理学科物理卒。
1995 年 よりダイビングを始める。
外見が「熊」なダイバーなので、魚の名前に因んで「くま呑み」を名乗る。

中学の理科の授業で、先生が教卓で雲を作る実験をしてくれたのを見て以来、気象学、天文学、地学に興味を持つ。
ダイビングを始めてからも海と空を眺めるのが好きで、2002年、気象予報士を取得。

ダイビングのスタイルは、「地形派」。
ドロップオフやカバーン、アーチや地層の割れ目などを眺めるのが好き。
特に、頭上のアーチなどをくぐった先で、水面からの光が見える瞬間に萌えてしまう。

ダイビング以外の趣味は、オーガナイズド(組織)・キャンプ、合唱、キャリア
・カウンセリング。
現在は、国際基督教大学にて学生や子ども向けの組織キャンプのディレクターも
努める。
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