北の海の親潮が育んだ、美しき生き物たち
親潮という名は「魚類を育てる親となる潮」という意味でつけられました。
私が愛する親潮の海は、海流がもたらす栄養塩が豊富です。
千島列島に沿い南下する海流で、オホーツク海の栄養を取り込みながら更に南下し北海道東方から……。
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と、ここまで書いていてお話が大きすぎるので、もう少し具体的なお話に変更します。
今回登場するのは親潮海流でも2つのエリア。
親潮の本場、北海道は函館の臼尻(ウスジリ)と親潮の南限、宮城は南三陸の海です。
まずは函館ですが、夜景で有名な事は言うに及ばず観光地として知られますが、今回は津軽海峡側ではなく太平洋に面した場所です。
“噴火湾”と呼ばれる北海道南部のくびれの辺をご想像くださいませ。
名産品はイカにコンブにホタテにウニと書ききれません。
そして宮城ですが、沖合で黒潮と親潮が出会う好漁場として名を馳せるノコギリの歯のような形をしたリアス式海岸で知られる海です。
名産品はカキにワカメにホヤにウニetc.
どちらも沿岸での養殖漁業が盛んで、食べ物が旨く、漁師が元気!
そして親潮の海だけあって水温が低い。
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磯焼け知らずの海には天然のマコンブが繁茂する(臼尻)
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河川からの栄養分を取り込み育つマガキの養殖(南三陸)
どちらの海も2月に下げ止まり、2℃度台(臼尻)から5℃台(南三陸)と一桁前半の水温まで落ち込みます。
そして、8月中旬から下旬に上げ止まり、21℃台(臼尻・南三陸)にまで上昇します。
その水温差は15~20℃ほどもあり、海の生き物達にとってはさぞ過酷な環境と想像します。
冬にはクリオネ、夏にはマンボウまで観察できる不思議な海でもあるのです。
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流氷の天使の相性で知られるクリオネ(臼尻)
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北上するタイミングにより6月から9月に出会う確率が上がります(南三陸沖)
この2つのエリアに生息する魚種は350種以上とされ、日本に生息する魚種の10%以上を占めるとされています。
しかし、これは季節来遊魚などを含めた数で、通年このエリアに棲む魚は80〜100種。
これは決して多い数ではなく、むしろ少ないと言えるでしょう。
その魚種を構成するのはダンゴウオ科の魚種とカジカの仲間とギンポの仲間です。
共通して観察できる魚種も多く、アキギンポ(タウエガジ科)やベロ(カジカ科)、イソバテング(ケムシカジカ科)にホテイウオ(ダンゴウオ科)などなど、数十種類の種で共通しています。
そんな共通の北の魚の話をはじめ、甲殻類に頭足類、海藻などの、似て異なるお話をこれから数回に分けてご紹介して参ります。
あっ!前回のヒメイカも共通の生き物ですね。
世界一小さいイカ、ヒメイカ。その生態のすべて | オーシャナ

三陸沿岸から知床にまで生息するアキギンポ(臼尻)
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ベロ(カジカ)の卵は驚くほど美しい色をしている(臼尻)
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地方名サチコの名で知られるイソバテング(臼尻)
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ホテイウオは12月頃から繁殖のため沿岸の浅場へとやってくる(臼尻)