御蔵島から和歌山県まで!?イルカのお引っ越し

御蔵島のイルカ・マエカケ(撮影:小木万布)

9月になったとたん、台風最来襲!
さっそく客船が欠航となった御蔵島です。

御蔵島は完全に外洋に位置するため、台風の風雨はもちろん、ウネリもかなりのパワーでもって島を叩きます。
御蔵豆知識としては、西からのウネリに比べて東からのウネリは力が強く、凪るまでの時間がかかります。

※2014年9月に通過した台風12号。風雨は大したことなかったのですが、通過してから凶悪なウネリが島に到達。多くの被害が出ました。

2008年、30頭のイルカが一気に引っ越し

閑話休題。

2008年、前年まで観察されていたイルカ30頭近くが見られなくなりました。
それまでも数頭のイルカが見られなくなることはありましたが、一気に30頭は前代未聞の事態でした。

一度に全てが死んでしまったとは考えにくいので、御蔵を離れて他所に移動したのでしょう。
実際、夏くらいから周辺の島でイルカが見られている、という情報がたくさん寄せられるようになりました。

これまでわかっているだけで、三宅島や八丈島、利島、神津島、式根島、館山、神子元、富戸などで御蔵にいたイルカの再発見があります。

水中でも撮影できるデジカメが安価で手に入るようになってきたこと。
ブログやmixi、Youtubeですぐ情報発信できるようになってきたこと。
そして、それらの情報を誰もがすぐに検索できるようになってきたこと。

映像のデジタル化とネットが直結したことで、引越イルカの情報が飛躍的に増えたのは事実です。

ダイビング中に幸運にもイルカが見られて、しかも!写真まで撮れちゃったらほとんどの方がネット上にアップされます。
それらをネットサーフィンしているだけで、結構なイルカ調査ができる時代になりました。

この夏、Facebook経由で調査員にもたらされたのは、和歌山県のダイビングスポットでイルカが見られている、という情報でした。

さっそく「串本」「ダイビング」「イルカ」とキーワードを入れてググってみると、でました。
見紛うことなく御蔵にいたイルカです。

御蔵島と串本は直線距離で360km!
スゴイ距離の移動が確認されました。

ブログに写真を掲載されていたショップさんに連絡を取り、高解像度のデータを提供頂けたため識別もスムーズに進みました。

今週初めには、調査員が現地へ乗り込んで調査することもできました。
あいにくのお天気であまり近づけなかったようですが、やっぱり串本周辺にしばらくいるみたいです。

御蔵島を離れていろいろな場所へ移り住む、本当の理由はイルカに聞かなきゃわかりませんが、彼方でも元気にしていてくれると嬉しいです。

さて、次は皆さんが普段潜られているダイビングスポットに行くかもしれません。
御蔵から400km圏内でダイビング中、人に寄ってくるようなイルカがいたら、御蔵出身の可能性大!です。

ご自分やお知り合いで映像が撮れた!という方がいらっしゃいましたら、ぜひ御蔵島観光協会までお知らせください。

御蔵のイルカ再発見につながる情報提供をくださった方にはお礼として、御蔵のイルカ識別帳「いるかいないか」を謹呈しています〜♪
いるかいないか、についてはこちらをどうぞ!
御蔵島観光案内所 : イルカ紹介本「いるかいないか」発売!

■参考ブログ
南紀シーマンズクラブ
コーラルクイーン

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writer
PROFILE
山形大学農学部で、テントウムシの産卵生態を研究をしていたが、「もうちょっと大きな動物を研究したいなぁ」と路線変更。
三重大学大学院在学中に、御蔵島をフィールドとしてイルカの行動研究を始める。

2004年、御蔵島で観光協会設立に関わり、同大学院を中退。
現在、御蔵島観光協会勤務。

観光案内業務、エコツーリズムの普及活動、イルカの調査取りまとめを行っている。

■著書:
「イルカ・ウォッチングガイドブック」水口博也(編著)144pp. ウォッチングと生態研究の両立-御蔵島のイルカをめぐって
「クジラと日本人の物語―沿岸捕鯨再考」小島孝夫(編集) 第4章クジラと遊ぶ..
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