御蔵島で見られた“灘イルカ”とは?ハンドウイルカとミナミハンドウイルカの違い

御蔵島のイルカ(撮影:寺山英樹)

2014年10月2日(木)午前中にイルカウォッチングから戻って来た船長さんが、「御蔵の周りでハンドウイルカの群れが入っているよ」と教えてくれました。

御蔵周辺で通常見られ、イルカウォッチングの対象となっているイルカは、ミナミハンドウイルカ。
ハンドウイルカとは別の種類です。

少し前までは、同じ種類のイルカだと考えられていたのですが、今では別種扱いされる事になっています。

もともと住んでいる場所や外見に差があり、「別種じゃないの?」という見方もあった両種。
2000年頃に、両方の頭骨やDNAが詳しく調べられて、別の種類にしよう!と決められました。

分かりやすい違いは、吻(クチバシ)の長さ、背びれの形、体の大きさ、お腹の斑点の有無です。
写真を較べて見て下さい、上がハンドウ、下がミナミハンドウです。

ハンドウイルカ(提供:小木万布)

ハンドウイルカ

ミナミハンドウイルカ(提供:小木万布)

ミナミハンドウイルカ

どうでしょう?一目瞭然?

ハンドウは吻が短く(英名bottlenose dolphinとは寸詰まり鼻の意)、ミナミハンドウは長いです。

背ビレはハンドウが大きく後ろに反って鎌形なのに対し、ミナミハンドウは直角三角形に近い形をしています。

成長すると体の大きさが3mを超えるハンドウですが、ミナミハンドウはせいぜい2.5mほど。

ミナミハンドウは成長に伴ってお腹に斑点が出てきますが、ハンドウのお腹は大人でも白のままです。

この日はかなり長い間、島の周辺でとどまっていたようで、船上からだけでなく水中からもハンドウイルカ観察をできた船もあったとの事。
もちろん御蔵のイルカ「ミナミハンドウ」もハンドウの群れに混じって一緒に泳いでいたようです。

ヒトはなんでも分類しないと気の済まない動物のようですが、イルカにしてみたらどうでも良い事かもしれませんね。

ちなみに御蔵島では、ハンドウイルカは沖を通るため灘イルカと呼ばれています。
ミナミハンドウは単に、イルカ。
御蔵の人にとって普段から見慣れているミナミハンドウこそが、イルカというわけです。

水中で聞こえた謎の音

さてこの日、第3三人海丸(だいさんみとみまる)のガイド井上愛子さんが撮影した動画に、とても不思議な音が入っていました。
ハンドウイルカのいる場所でエントリー、残念ながらハンドウは写っていないのですが、水中でずっと不思議な音が続いています。

「ヘンなイルカの音録れましたー、ハンドウの鳴き声?」と協会に持ち込まれたのですが、聞いてみると少なくともイルカの鳴音ではなさそうです。
知り合いのイルカ音声研究者に聞いてみたところ、「魚探?少なくとも生物の出す音ではないように聞こえる・・・」とのこと。

でも、魚探もこんな音はしません。
なにかの海中探査音?周辺にはイルカウォッチング船以外いなかったそうです。
かなり大きな音でなっているので、音源がわからないのはちょっと不気味ですね。

知ってる!とか、似たような音を聞いた事ある!という方がいらっしゃいましたら、ぜひお知らせ下さい。

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PROFILE
山形大学農学部で、テントウムシの産卵生態を研究をしていたが、「もうちょっと大きな動物を研究したいなぁ」と路線変更。
三重大学大学院在学中に、御蔵島をフィールドとしてイルカの行動研究を始める。

2004年、御蔵島で観光協会設立に関わり、同大学院を中退。
現在、御蔵島観光協会勤務。

観光案内業務、エコツーリズムの普及活動、イルカの調査取りまとめを行っている。

■著書:
「イルカ・ウォッチングガイドブック」水口博也(編著)144pp. ウォッチングと生態研究の両立-御蔵島のイルカをめぐって
「クジラと日本人の物語―沿岸捕鯨再考」小島孝夫(編集) 第4章クジラと遊ぶ..
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