気象予報士がダイビング前にしている天気ウェブサイト利用術

気象予報士くま呑みの“ダイバーのためのお天気講座”

セブ島の海(撮影:越智隆治)

前回、ダイビング前にオススメのウェブサイトをご紹介しましたが、「こんなにいろいろなサイトがあっても、どれをどう使っていいかわからないよ」という方も多いと思います。
そこで、私のやり方を実際のケースを例にしてお話しますね。

おそらく、大半のレジャーダイバーが、南国のリゾートに潜りに行く場合は、お仕事のお休みの関係などから、あまり行き先や日程をずらすことは難しいでしょう。
ですので、日帰りか1泊で、東京から伊豆に行く計画を立てることを例にしたいと思います。

1週間前のチェックポイント

まず、友達や家族と伊豆に行くときには、最初に来週、再来週の計画として立てますよね。なので、気象庁のサイトで台風が発生していないかなどを確認しておきます。
といっても、台風は2週間先の進路は定まっていないことが多いので、あくまで参考程度ですが。

1週間くらい前になったら、週間予報を見始めます。
このときも、気象庁のサイトで週間予報を見ます。
その際、予報の当たりやすさの指標なども参考にします。

この時点で、例えば来週の土曜日に天気が悪くなりそうだという予報があっても、あまり悲観する必要はありません。

統計的にみて、翌日の天気の的中確率は82%程度(1992~2000年の統計)ですが、一週間先だと64%程度と、1/3くらいはハズレる計算です。

しかも、冬場の首都圏などは晴れが多いので非常によく当たりますが、梅雨から夏場になるともっと当たらなくなります。
なので、この時点では、目標の日に向かって天気が下り坂なのかそうでないのかとか、低気圧が接近してくるのかなどを見ていればよいと思います。

3日前のチェックポイント

3~4日前になると、相当、天気予報も当たるようになります。

このあたりから、週間天気予報に加えて、HBCにある72時間や48時間の予報天気図なども見始めます。

また、波の予報も見るようにします。
台風が来ている場合はそれもチェックします。

結局、天気が良ければあまり気にしなくていいので、要は、低気圧(温帯低気圧も熱帯低気圧も)と前線をチェックしておけばいいということになります。

天気概況図も見て、もし停滞前線があれば、キンク(北側に向かって突出して折れているようになっている場所)がないかもチェックしておきます。
キンクの部分は、その後低気圧が発生したりする可能性があるからです。

天気が西から変わるときは、低気圧の速度などにもよりますが、概ね九州の天気から丸1日後、関西の天気から12時間後に、関東にやってくるというのがひとつの目安になります。
ですから、そういったあたりに低気圧やキンクがあるかどうかもチェックポイントです。

また、天気図を見るときには、低気圧の速度や3時間前、6時間前の位置、気圧などとも比較して、発達傾向にあるかも見ておきます。
同時に、高知大学の衛星写真のページを見て、低気圧の雲にバルジ(雲が北側に弧状に盛り上がるようになっているところ)がないかも見ておきます。
バルジも発達中の低気圧に見られる特徴だからです。

2日前から当日のチェックポイント

いよいよ、2日前くらいになったら、今度は段々天気予報よりも、天気実況図を見ることが多くなります。

予報図は、あくまで「予報」なので参考程度にし、実際の観測値から見た実際の天気である実況図を過去の数時間のものから見比べて天気の傾向をつかみます。

同時に衛星写真も見て、天気図上の低気圧や前線の位置と衛星写真の位置を対比させてつかむようにします。

このあたりから、HBCの波浪予報図や、日本気象協会の「海の天気」のページも参考にし始めます。
波は高くなりそうか、風はどちらから吹きそうかなどを見て、最終的に行くポイントを決めていきます。

もし、行く候補のポイントが複数あって、例えば湾の向きなどで風向きによって潜りやすい、潜りにくいなどがわかるのであれば、その情報を参考にします。

場合によっては、東伊豆に行くか西伊豆に行くかなどを、変更したり、土曜日の予定だったのを日曜にしたりなどの必要も出てくるかもしれません。

前日になると、翌日の海況もだいぶわかってきます。
もし、心配なようなら、潜りに行く候補地のサービスに電話をして、海況を確かめてみるのもいいかもしれません。

日本気象協会の「海の天気」のページなどを参考にしながら、潮位や潮まわりなども見て、実際に潜る計画も立てはじめます。

また、各サービスのブログなどを見ると、海況や海水温などを書いてくれているところもあるので参考にします(ただし、サービスのブログは特に、「良い状況」を書く傾向にあるので、時には割り引いて考えたほうがいいかもしれませんが)。
海水温によって、スーツの選択などもすべきかもしれませんしね。
まぁ、お世話になるサービスがわかっているのであれば、そこに直接問い合わせをするのが一番です。

いよいよ当日になったら、ナウキャストの出番です。
また、スマホなどでも、ウェザーニュースや日本気象協会などは原則無料のアプリがあって、状況を確認することができますから、そういうページで、行く途上でも天気を確認することができます。

いろいろな情報を得て総合的に判断することが大事

なんだか、いろいろな情報が出てきて混乱してしまいますね。
でも、上記はある一例で、例えば、低気圧が近づいていなければあまり気にしなくても良いでしょう。
逆に、台風や寒冷前線などが見られたら、非常に細かく見なくてはならないかもしれません。

とにかく、ダイビングの計画を立てる際(普段の生活もそうですが)は、なるべく多くの情報を入手して、総合的に判断をするくせをつけておくとよいと思います。

いわゆる「晴れ」「雨」だけの天気予報だけを見ていろいろ計画を立てるというのは、言ってみれば地図もなしに道の説明だけを聞いて車を走らせるようなものです。
あるいは、よく知らないポイントで、マップ無しにセルフダイビングをするようなものとでも言いましょうか。

ですから、毎回、さまざまな情報を見て、総合的に予想し計画を立てるようにするとよいと思います。

そうしていると、どのタイミングで、どういう気象概況だったら、どの図やどの情報を見ると良いということがわかってきます。

毎回自分で予想をして、実際に行ってみて、どのように当たったか、どのようにハズレたのかを楽しみながら経験していくと、どんどん図の見方もわかってきて、当たる確率も上がってきますよ。

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PROFILE
日本気象予報士会会員。
国際基督教大学(ICU) 理学科物理卒。
1995 年 よりダイビングを始める。
外見が「熊」なダイバーなので、魚の名前に因んで「くま呑み」を名乗る。

中学の理科の授業で、先生が教卓で雲を作る実験をしてくれたのを見て以来、気象学、天文学、地学に興味を持つ。
ダイビングを始めてからも海と空を眺めるのが好きで、2002年、気象予報士を取得。

ダイビングのスタイルは、「地形派」。
ドロップオフやカバーン、アーチや地層の割れ目などを眺めるのが好き。
特に、頭上のアーチなどをくぐった先で、水面からの光が見える瞬間に萌えてしまう。

ダイビング以外の趣味は、オーガナイズド(組織)・キャンプ、合唱、キャリア
・カウンセリング。
現在は、国際基督教大学にて学生や子ども向けの組織キャンプのディレクターも
努める。
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