御蔵島への船旅で、「接岸するかどうか」を読む方法

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風の強い日の桟橋と白波(提供:小木万布)

2015年となりました!

皆さんはどんな年をお迎えになられましたか?
私は、西表島の南西岸、鹿川(かのかわ)という浜でキャンプしていました。

年末は冬型の気圧配置が緩み、夜でも半パンで過ごせるほどの陽気に恵まれました。
変わって元旦は冬型の気圧配置に。

2015年元日の天気図(提供:小木万布)

2015年元日の天気図(日本気象協会tenki.jpより)

しかも午前中の引き潮に合わせて、通過しなければいけない海沿いコースもあったため、朝から慌ただしくジャングルを彷徨っていました。

沖縄地方では、冬型の気圧配置になると北風が吹くのですね!

西表島北側の海岸線を歩いている時は、湾内にも関わらず白波!
バシャバシャ飛沫をかぶりながら進みました。
水温が21℃あって良かった~。

西表島には南側に大原、北側に上原という港があり、両方とも石垣島まで高速船が就航していますが、滞在中、北の上原便はほとんどが欠航していました。
住んでいる方に聞いても「上原便?この時期は当てにしないよ」とのこと。
どこかで、聞いた話だなぁ……。

気圧と風向きの関係(提供:小木万布)

空気は気圧の高い方から低い方へ流れます。難しいことは省略しますが、その時、地球の自転によるコリオリの力が加わり、風向きは進行方向に対して右へずれます

そう、御蔵島でも冬型の気圧配置になると、ほとんど船が運航しなくなります。
伊豆諸島周辺では西~北西の風が吹くことになるからです。

風向きが大事!
御蔵島の風向き4つの特徴

御蔵島の桟橋は北西に向かって伸びているので、西~北西の風が吹くと真正面から波を受けることになり、極端に弱くなります。

三宅島や八丈島は、島の東西に桟橋が複数あり、風向きに応じて島陰になっているほうを使用することができますが、御蔵島は桟橋が1ヶ所しかありません。

ちなみに2015年1月13日現在、運航したのは4便のみ。
確率にして15%です。

風の強い日の桟橋と白波(提供:小木万布)

桟橋はほぼ水没。毎日がこのような風景となります。巻き上げられた飛沫は村まで飛んで、家や車の窓は塩で真っ白に

夏場、観光協会にいただくお問合せで最も多いのは、「○月○日、船は着きますか?」です(笑)。

こればっかりは何とも予報に頼るしかありませんが、天気図を読むことができるようになれば、ご自分でもある程度の予想を立てることができます。

注意しなければならないのは、「天気が悪い=雨」と思われる方が多いことです。
「こんなに晴れているのに、なぜ着かないの?」とおっしゃる方もいます。そりゃそうですよね、ふつう街に住んでいれば天気の善し悪しは「晴れ」か「雨」です。

しかし! 船の運航において大切なのは「風」なのです。

豪雨でも風が弱ければ、船は楽々運航します。
逆に晴れでも風が強ければ欠航します。

さらに上で説明したように、風向きにも注意が必要です。
西や北西の風だと風速5m/sくらいでも吹き続けば、桟橋周辺は結構荒れます。

逆に、夏の時期に多い南西風は15m/sくらい吹いても、桟橋周辺は凪ぎということもあります。
御蔵の桟橋状況と風向との特徴を簡単に表すなら次のようになります。

  1. 西・北西風が強く吹くと厳しい
  2. 南西風なら少々強くても平気
  3. 南西風(ナガシ)の時化は収まりやすい
  4. 北東風(ナライ)の時化は吹き続けてウネリを伴うと回復しにくい

これに台風のウネリや前線通過時の突風など、種々の条件も加わります。

御蔵島に行かれる際は、出発日の18:55にNHKの天気予報を見て風向きの確認をすると良いかもしれません。
御蔵島では、船長さんだけでなくほとんどの家庭でも必ず見ている超高視聴率番組です。

また天気図を見ながら、御蔵島の桟橋ライブカメラで確認すると、「天気図と御蔵島の海況との関係」が、どこでも勉強できますね。
それでもワカラン! という場合は、遠慮なくお泊まりの宿か観光協会までお問い合わせください。

時化のあとの三宅島桟橋(提供:小木万布)

時化が続く冬の御蔵ですが、たまの凪ぎには桟橋上でイワノリが収穫できます。これも冬の風物詩。干して炙ると香ばしい!

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PROFILE
山形大学農学部で、テントウムシの産卵生態を研究をしていたが、「もうちょっと大きな動物を研究したいなぁ」と路線変更。
三重大学大学院在学中に、御蔵島をフィールドとしてイルカの行動研究を始める。

2004年、御蔵島で観光協会設立に関わり、同大学院を中退。
現在、御蔵島観光協会勤務。

観光案内業務、エコツーリズムの普及活動、イルカの調査取りまとめを行っている。

■著書:
「イルカ・ウォッチングガイドブック」水口博也(編著)144pp. ウォッチングと生態研究の両立-御蔵島のイルカをめぐって
「クジラと日本人の物語―沿岸捕鯨再考」小島孝夫(編集) 第4章クジラと遊ぶ..
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