隠れてスノボに行く、“圧”の強いダイビングショップのダイバーの話

セブ島でのダイビング(撮影:越智隆治)

「海で、以前、通っていたダイビングショップのインストラクターと出会ってしまって気まずい……」

とか、

「他のお店に浮気するのはよくないことでしょうか?」「上手にフェードアウトする方法は?」

とか、この手の話は、ダイビング雑誌でダイバーの疑問に答える連載していた時も含めて、ちょくちょく質問されることがあります。

率直にいえば、別にどこで潜ってもいいんじゃない? で終わりなんですが、まあ、人間関係の要素もあって、何というか“塩梅”というかケースバイケースというか程度問題というか。

うちの実家はお肉屋さんですが、母が、常連さんと大手スーパーで会った時、カゴの中にお肉のパックが入っていた時は、お互い気まずかったと言っていました(笑)。

基本的には、ダイビングショップが何度も通ってもらうために努力をするしかしなく、理想を言えば、海やダイビングの情報や機会が集まる、都市にあるダイビング発信基地みたいな存在になるのが、“ダイビングショップ”という冠的にもおさまりがよいわけです。

ただ、ゲストが求めているものが、ダイビングはあくまできっかけに過ぎず、コミュニケーションや人間関係だったりもするので、一種のサロン的要素も担うことになります。

結果、コミュニケーションでつなぎとめることも営業上、大事なことでしょうし、帰属意識を刺激する、やんわりとした“圧”のようなものでつなぎとめるというのも、まあ、お互い納得していればありなんじゃないかとも思います。

昔は、「それって“囲み込み”でよくないよね~」なんて思っていた時期もありますが、これだけ情報があふれている世の中、情報を取らない方も取らないほうだし、むしろもう選択でしょ、とも思うようになったのは、僕が世俗にまみれてしまったからでしょうか……。

何が言いたいかというと、ダイビングショップのゲストのつなぎとめ方には、結構、許容範囲は広いし、あまりそこについては書くこともなかったのですが、そんな僕でも、最近、ショップダイバーの集まりに出席する機会があり、「ついにそこまで!」と驚いたのです。

とあるダイビングショップに通う男性ダイバーがこんなエピソードを話し始めました。

「先日、ダイビングショップで出会った友人とスノボに行ったのですが、友人がFacebookに写真をアップして焦りましたよ。急いで削除してもらってバレずに済みました」

最初、何を言っているのかよくわかりませんでした。
なんでFacebookに写真をアップしちゃいけないの?

聞けば、ショップで仲良くなった友達や仲間と遊びに行ったのがバレると、ショップのイントラに呼び出しを食らうんだとか。

よ・び・だ・し

おもてなしじゃありません。呼び出しです。

なので、遊びに行くときは、バレないように細心の注意を払い、SNSには記録を残さないことを徹底し、他言無用の隠密行動……って、どこの隠れキリシタンですか(笑)。

レアケースかと思いきや、その場にいた他のショップのダイバーも「わかる!」とか言いだし、中には、仲間内でイベントを開催した人が出禁になったとか、「この間、みんなでピクニックに行ったでしょ?」とイントラに嫌味を言われたとか、最初は笑って聞いていたのですが、だんだん暗澹たる気持ちに……。

もちろん、良い悪いは別として、海で他のショップを使うということに、ショップが反応するのはわからなくはないですし、ショップメンバーに対するイベントや企画を収益にするというのも理解できるのですが、隠れキリシタン化するほど圧をかけるのは、さすがに囲い込みと言われても仕方ありません。

でも、ここで、反対の疑問も。

圧の強いショップに通うダイバーたちは、いろいろわかっていて、しかもお金を払ってまで、なんで気を遣うのでしょうか?

「だって、営業妨害しちゃ悪いから」「なんだかんだで、行けば楽しい」

な、なるほど。

おもしろいのは、圧の強いショップダイバーたちは、この手の話を「ねえねえ聞いて」「おかしくないですか?」と向こうからおもしろおかしく話してくるのですが、こちらが「それは、おかしいですね」「じゃあ、行かなければいいのでは?」などと真顔で返すと、急にショップを擁護し始めます。

すでに行かなくなった人や、だいぶ相場より高い器材を買った人でさえ、「よい経験をさせてもらった」という方が少なくありません。

どこのMですか(笑)。

まあ、お金をだまし取られたとかでなければ、お互い納得して、状況を楽しんでいるようですから、これはこれでいいんですかね。
かくいう僕も学生時代、辞めたくて辞めたくて仕方なく、合宿中に逃亡計画まで立てたダイビングクラブにずっといましたので、人のことは言えません。
人間とコミュニティっておもしろい。

まあ、でも、お花見くらい好きに行かせてあげればいいし、勝手に行けばいいのに……。

変なの(本音・笑)

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PROFILE
法政大学アクアダイビング時にダイビングインストラクター資格を取得。
卒業後は、ダイビング誌の編集者として世界の海を行脚。
潜ったダイビングポイントは500を超え、夢は誰よりもいろんな海を潜ること。
ダイビング入門誌副編集長を経て、「ocean+α」を立ち上げ初代編集長に。

現在、フリーランスとして、ダイバーがより安全に楽しく潜るため、新しい選択肢を提供するため、
そして、ダイビング業界で働く人が幸せになれる環境を作るために、深海に潜伏して活動中。

〇詳細プロフィール/コンタクト
https://divingman.co.jp/profile/
〇NPOプロジェクトセーフダイブ
http://safedive.or.jp/
〇問い合わせ・連絡先
teraniku@gmail.com

■著書:「スキルアップ寺子屋」、「スキルアップ寺子屋NEO」
■DVD:「絶対☆ダイビングスキル10」、「奥義☆ダイビングスキル20」
■安全ダイビング提言集
http://safedive.or.jp/journal
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