一部の欧米人ダイバーによる、高圧的で危険なダイビングマナー啓蒙運動

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南国ビーチ(撮影:越智隆治)

特にタイで良く遭遇するのだけど、ダイビングで水中撮影とかしていると、後ろからフィンを引っ張られたり、頭ひっぱたかれたりした経験が何度かある。

皆さんも、そういう経験ってありませんか?

多くの場合、欧米人ガイドさんが、ダイバーのマナーを注意して行う行為。

でも、自分たちも、撮影するときに、海底環境に配慮していないわけではないので、「今、なんで頭はたかれたんだよ!」とか「なんで、今フィン引っ張るんだよ?」って思うことも多々ある。

例としては、砂地に着底してハゼ撮影をしていたら、砂地には他にもハゼの巣穴があるから、それを潰すことになるから、撮影するなって言う感じでフィン引っ張られたりとか。

岩場でうねりがあるから、岩を掴んで撮影していたら、その手を無理やり払いのけられて、頭叩かれたりとか。
そんな感じ。

もっとすごいのになると、あるダイビングサービスで日本人ガイドがフォトツアーしていて、数名のゲストが着底して撮影を行っていたら、超人ハルク並みにガタイの良い欧米人ダイバーが泳ぎ寄り、後ろからそのダイバーたちを鷲掴みにして放り投げたり、ひどいときには、マスクを奪い取ってしまったことも。

「危ないじゃん! 急にマスク剥ぎ取って、パニックになったらどうするんだよ!」と思うような、下手すれば命に関わるような、高圧的なマナー啓蒙活動。

自分も、サンゴの枝に足かけたりしている人がいたら注意はするけど、ただ海底に着底しているだけでそれはないんじゃないのって思うくらいの行為だ。
もし、マスク奪い取ったダイバーが超初心者だったら、本当に危険だということをこいつは想像できないのかな。

しかも、そうやって他人のグループの粗探しをしてるガイドって、自分の連れているゲストたちが、どういう行動を取ってるかを知ってか知らずか、大目に見てる事が多いように思う。

例えば、ある日、サンゴのかけらなどで、巣となるイソギンチャクの周囲を囲われた砂地のトウアカクマノミの撮影をしていたときのこと。

これは、そこにクマノミの巣がありますよ、ってことを知らせるために、地元のダイバーが作ったものなので、自分もその輪の外から、砂地に着底して撮影していたら、このときもパカン! と頭を叩かれた。

「なんだよ!」と顔を上げると、欧米人ガイドに、「着底したらダメだ!」みたいなゼスチャーされた。

そのガイドは、ちょうどクマノミの巣の真上を中性浮力をしっかり取って、こっちを睨みながら移動していったんだけど、「え〜、そんなんじゃ、撮影できないじゃんか!」と睨み返して、無視して撮影を続けた。

……のだけど、その直後、ファインダーを覗いていた僕の視界が0になった。

「なんだ! 奴が邪魔しに戻ってきたのか? と思ってファインダーから顔を上げて、目の前をみると、なんと、そいつが引率していた、ビギナーダイバーさんたちが、立ち泳ぎ状態で、フィンを砂地の底にくっつけて、ジタバタと泳ぎ、もうもうと砂を巻き上げていたのだ。

しかも、そのクマノミの巣となるイソギンチャクは、思いっきり蹴飛ばされ、ビギナーダイバーさんたちが砂埃を上げて去っていった後には、ほとんどが砂の中に引っ込んでしまっていた。

そして、すっごく小さくなったそのイソギンチャクに、身を寄せ合うように、オスとメスのトウアカクマノミがへばりついていた。
「か、かわいそ過ぎるだろ、クマノミさんも俺も」

「ど、どういうことだよ!!人のことばかりで自分のグループは何してもオッケーか?それともただの嫌がらせか!?」

書いていたら、さらに腹が立ってきたので、事例をもう一つ。

撮影:越智隆治

先に、日本人ガイドがゲストにフォトツアーしていたら、ゲストを放り投げたり、マスクを奪ったりしていた、その欧米人ガイドのゲストも、彼がそういう行為をしている間、着底し、岩にがっしりつかまって、彼が戻ってくるのを待っていた。

なので、僕はそのゲストたちに挨拶して、写真を何枚か撮影。

その先で超人ハルクのごとく、理性を忘れて暴れている欧米人ガイドの元に向かい、紳士的に肩を叩き、その画像を見せた。

「お前のゲスト様も着底して岩をがっつりつかんでおりますが、何か?」

するとそのガイド、写真をチラ見したものの、ほぼスルーするかのように、自分のゲストの方へと戻って行き、移動を始めた。

で、次のダイビングポイントでも、運悪く、その欧米人ガイドと遭遇。

もう最初っから、そのフォトツアーグループに目をつけていて、さあ、今から着底して皆で撮影を行おうとしたその瞬間に、猛ダッシュで向かってきたので、自分は、グループとその欧米人ガイドの間に割って入り、そちらに向かわせないよにした。

当然、その欧米人ガイドは、ハルクのごときガタイで、こちらを睨み返してきたんだけど、こっちも絶対あんな高圧的で、一方的かつ、危険なダイビングマナー啓蒙活動を容認するわけにはいかないと睨みかえし、そして奴のゲストの方を覗き込むようにしながら、カメラを構えた。

それに気づいたガイドは、自分のゲストに向き直り、やはり岩に捕まり、着底しているのに気づくと慌てて戻っていった。

おかげで、取材様の撮影がほとんどできないで1本を終えた。

撮影:越智隆治

思い出したらキリが無いので、同じようなネタで、また書こうと思う。

それぞれの国によっても、「ダイバーの海底環境に関しての配慮や考え方」は大きく違うのだということは気づいていた方が良いと思う。
もちろん、欧米人でもゆるい人はゆるいんだけど。

本当に環境守りたかったら、ダイビングしなければいいって結論に達するわけだ。

そのポイントに移動するまでに、ボートの油だってたくさん出ている船だってあるわけだし。

でも、あんな危険で、かつ自分よがりな啓蒙活動は、やるべきではないと思う。

もし、そうするのであれば、まず、現地のダイビング業者間でしっかり、決まりつくってからにして欲しい。
いつも周囲を気にして潜らないといけないと、第一本当に危ないと思うから。

ほとんどのゲストは、ダイビングを楽しみたくて海に来てるわけなのだから。

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PROFILE
慶応大学文学部人間関係学科卒業。
産経新聞写真報道局(同紙潜水取材班に所属)を経てフリーのフォトグラファー&ライターに。
以降、南の島や暖かい海などを中心に、自然環境をテーマに取材を続けている。
与那国島の海底遺跡、バハマ・ビミニ島の海に沈むアトランティス・ロード、核実験でビキニ環礁に沈められた戦艦長門、南オーストラリア でのホオジロザメ取材などの水中取材経験もある。
ダイビング経験本数5500本以上。
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