元気よくあいさつする理由
漁船を利用するダイビングエリアは少なくないが、
僕は乗船時、船長さんになるべく元気よくあいさつをすることにしている。
おはよーございます!
もちろん、単純に気持ちよくコミュニケーションを
取りたいのが大きな理由だが、
つい漁師さんに必要以上に気をつかってしまうクセがついてしまっている。
これは、取材を通しダイビング事業者と漁業関係者との関係を見てきたからだろう。
一般ダイバーには直接関係ないので、興味として聞いていただければ。
日本のダイビングエリアのオープンは、
地元の漁業関係者の協力なくしてはできない。
一人の漁師さん、漁業組合、地方自治体などなど、
その関わり方はさまざまだが、
ダイビング事業者は、お金を落とす仕組みを作り、心のすり合わせに尽力することになる。
紀伊半島のガイドO氏はオープンまでの苦労を語る
「密漁するのでは?と疑われ、しばらくダイビングのボートに監視役が乗っていたからね。
でも、もちろん魚介類をとるダイバーはおらず、幸いゲストもいい人たちばかりで、
漁師とも仲良くしてくれたこともあり、その後は監視もつかなくなったんだよ。
女性ばかりで漁師も楽しかったってのも効いた(笑)」
伊豆半島のガイドS氏は漁師との関係を語る
「すごく態度の悪い船長が何人かいる。
でも、苦々しく思っていても機嫌を損ねるわけにはいかないのが辛いところ。
特にゲストが船長の態度に気分を害しているときに、板挟みのときが正直ある……」
そう。生活の糧という大義名分のある漁業関係者に対して、
レジャーであるダイビングは分が悪い。
結果、「ダイバーたちはけしからん」とヘソを曲げられたら、
冗談抜きにダイビングエリアがクローズする可能性もある。
もちろん、ダイビング事業者、漁師、ダイバーが
良好な関係のダイビングエリアも多いのだが、
漁師さんは何となく“怒らせたくない存在”として僕の中にある。
よって、元気よくあいさつ(笑)。
取材をする者としては、
漁師とガイドとの関係を見つめることは、
そのエリアを見つめる第一歩となるのだ。
一般のダイバーにはまったく関係ない話だった……。