アルミが軽いのかスチールが重いのか 

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ダイビング歴45年・やどかり仙人のアップアップ相談室

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スチールは重いのか? アルミは軽いのか?
前回までのお話は、同じ容量であればスチールもアルミは重さは同じでした。
そしてアルミは素材として軽いはずなのに、なぜ重さはおなじというのが今日のお話。

軽いアルミで作って、しかも重さをスチールと同じにするには、
タンクの壁を厚くしなくちゃなりません。
ただ、厚くするとスチールタンクより太くなってしまうので、
サイズを長くしてタンクの容量を確保しております。

これが、全般的にアルミタンクが10〜20㎝ほど長い理由です。

このタンクの壁をより厚くできるのがアルミタンクの利点であります。
壁を厚くし、サイズを長くし重量を増やしているのがアルミタンクということです。

水中でできるだけ中性浮力にするために、
スチールタンクは苦労して壁を薄くしアルミタンクは壁を厚くしているのです。
この壁が厚い分アルミタンクのほうが安全だという見方もあります。

それでも、「俺はアルミタンクは水中では軽いから、スチールが好き」という
ダイバーのみなさんも多いようです。

水中ではアルミは、本当に軽すぎるのか?
ここに11.2リットルのアルミタンクの充填水中重量のメーカーのデータがあります。
充填水中重量などという大げさですが、トータルのタンクの浮力であります。
ドボンとエントリーしたときの重さですな。ダイバーにとってはこれが大事。
その重さは、マイナス0.78kgとあります。わずかに沈み気味ということです。

タンクの中の空気の重さを1.5kgぐらいとすると、
ダイビングの終了時、完全に空になると、0.8kgほど浮く計算になります。
アルミタンクは一生懸命重くしても、空の状態では、わずかに浮く。
水中ではわずかに軽いということですな。

現実的にはアルミタンクはスタート時に1kgほど沈み気味、
終了時には1kgほど浮き気味と考えておけば十分でしょう。
それにしてもアルミタンクはダイバーが敬遠するほどの、浮き気味ではありませんな。

アルミタンクは地上では長くて重い!!  
軽い素材のアルミタンクですが、
スチールタンクと同じように沈み気味にするには、
タンクをもう少し長くするか底を厚くしなければなりません。

実際にアルミタンクは底を厚くして、重さを加えて水中バランスを保っております。
結果としてアルミタンクは地上ではスチールタンクに比べて長く、
重いということになります。
10リットルのタンクでは10cmほど長く、0.7kgぐらい重くなっています。

大切なのは充填水中重量なのだ!
アルミタンクも、ダイビング開始時には、充填水中重量、
つまり、浮力はわずかにマイナスでしたな。
ご質問者が実感されているとおり、
スチールタンクの充填水中重量はそれよりも重いということになります。

どちらにしても、ダイビングをスタートするときのタンクの重さが分かっていれば、
ダイビングが終るときの、減った空気の重さは同じですから、
充填水中重量の差の分だけ、ウエイトを増やすか減らすかすればよいことです。
ということは、大切なのは充填水中重量なんですね。
その結果、アルミかスチールを選ぶのが本当なのでしょう。

テックダイビングのダイバーは、背中にダブルタンク、さらに腰には予備タンクといった装備で、
しかも非常に微妙な浮力調整が要求されるので、
スチールタンクとアルミタンクを状況に応じて慎重に使い分けておるようですな。

アルミが好きだ、スチールが好きではなく、あくまでも、
それぞれの特性に応じて使い分ける。
リクリエーションダイバーも学ぶところがありますな。

すべての器材の水中重量が、それぞれプラスマイナスゼロであれば、
浮力調整に悩まずにすむと仮定すると、
アルミタンクの水中重量がわずかに沈み気味というのは、都合がいいはずなのです。

ここまでのところは、まとめると、
アルミタンクは軽くなく、スチールタンクが重いというべきなんですな。
 

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PROFILE
1964年にダイビングを始め、インストラクター制度の導入に務めるなど、PADIナンバー“伝説の2桁”を誇るダイビング界の生き字引。
インストラクターをやめ、マスコミを定年退職した今は、ギターとB級グルメが楽しみの日々。
つねづね自由に住居を脱ぎかえるヤドカリの地味・自由さにあこがれる。
ダイコンよりテーブル、マンタよりホンダワラの中のメバルが好き。
本名の唐沢嘉昭で、ダイビングマニュアルをはじめ、ダイビング関連の訳書多数。
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