もし、ダイビング中に津波が起きたら?

大津波の災害を見て、こう思ったダイバーは少なくないはずだ。

もし、ダイビング中に津波が起きたら?

そこで、自然科学が専門でダイバーでもある、《東京都市大学自然科学
科准教授》の萩谷宏先生に、一般的なことから潜水中の対処まで、津波
のあれこれについてお話を聞いた。

Q.津波が起きる条件は?

津波は、海底の変位で生じる波であって、地震の規模(マグニチュード)
が大きく、また震源の浅い地震ほど発生しやすい。マグニチュードが大き
くても、震源の深い地震では、地震で発生する断層のずれが海底面まで
届かず、津波が発生しないことが多いのです。地震の速報があった場
合、マグニチュードと震源の深さの両方を注意して、警戒を怠らないこと。
M7.0以上で深さ30km以浅
というのが、私個人としてのおおざっぱな津
波警戒の目安ですが、必ず気象庁やptwc(太平洋津波警報センター)の
発表を確認しましょう。
■マグニチュードと震源の深さを知る→気象庁 地震情報
■津波の情報を知る→気象庁 津波警報・注意報

Q.津波が起こる兆候と注意点は?

津波は引き波で始まる場合も多い。急に潮位が下がったら、急いで高台
に避難しましょう。引き波で始まるか、潮位上昇で始まるかは、海底の変
位の形と観測者の位置関係によるので、同じ地震でも場所によっていろ
いろです。津波は第1波よりも、第2波、第3波の方が波の高さが大きいこ
とが多い
ので、いったん津波が引いても、すぐに警戒を緩めてはいけませ
ん。

津波は波であるので、反射や回折、波の重ね合わせといった現象が起き
ます。近隣の他の地域の波高がわかっても、その2倍程度の波高を見込
んで退避する必要があります。地形の影響も受けるので、湾の奥などは
特に高い波に注意が必要。また波長が長いので、震源が陸地の反対側
であっても、回り込んだ波が津波被害をもたらすこともあるのです。

Q.ダイビング中に津波が起きたら?

潜水中は、浅い海底にいる場合を除き、津波の影響はほとんどないでし
ょう。充分に水深があれば、津波の先端では水が回転運動をしながら進
むので、動きを感じることはあるかもしれないが危険は少ない。スマトラの
地震でもダイバーは、津波到達時に急に透明度が悪くなったが、それ以
外は何も感じなかった、という証言があります。
■スマトラの体験談→スマトラ沖地震と大津波の経験から

Q.ボートダイビングで船上にいるときは?

船上にいるときは、まず津波の到達前に沖合に移動しましょう。充分な水
深があるところの海上では津波の影響が少ないのです。津波の波高より
も浅い水深では波頭が崩れるので、巻き込まれる可能性があります。津
波の破壊力は、そこにもともと海水がなかったところに、大量の海水がな
だれ込んでくるところにある。最初からそこに海水があれば、潮位の変化
のみ
なのです。津波で運ばれてくる船は陸上側からみれば凶器に等しい
ですが、沖に出てしまえば問題ないのです。

津波がある程度収まったら、引き波で運ばれてくる漂流物に注意し、生存
者の救出に協力して欲しい。津波にのまれても、漂流して助かった例は
数多くあるからです。早期に救出することが肝要です。

Q.ビーチダイビングなど、海辺にいる場合は?

海辺にいる場合、なによりもまず高台に避難することに尽きます。高台が
ない、扁平な珊瑚礁の島のような場合は、充分に(数十m以上の)水深
のある海上に避難するのが正解
だと思います。

Q.もし、津波にのまれてしまったら?

津波の犠牲者の遺体は、損傷が激しいことが多いといわれます。様々な
重量物が漂流し、津波の力でぶつかり合い、流されるので、溺れることは
もちろん、重量物にはさまれたり、打ち付けられたりすることによる負傷に
も気をつける必要があります。もし津波にのまれた場合は、できれば大き
なものの上に乗るなどして、自分がはさまれないようにすることが望まし
い。また、漂流物にぶつからないという前提で、引き波で沖合にさらわれ
ないよう、丈夫なものにつかまって流されることを防ぐことも生存の決め手
になります。運悪く流され、漂流した場合には、浮遊物を利用してできる
だけ体力の温存に努め、生存の可能性を少しでも確保し救援を待つのが
望ましい。特に冬期は体温の維持が重要です。

以上、萩谷先生のお答えでした。

■ダイバーとして、知っておくべきこと、決めておくべきこと。

先生のお話からすると、ボートダイビングで沖に出ている場合は、はから
ずも退避行動と同義になっていると考えられる。実際、スマトラ沖の地震
でも船上では津波に気がつかず、港に戻ってからその惨状に気がついた
という証言も少なくない。

ダイビング中は、ボートダイビングであれば浮上して、ボートにピックアッ
プしてもらい沖へ移動するのが良いと考えられるが、ビーチダイビングの
場合、浮上して沖へ退避するのかエグジットして高台に退避するのか、個
人で判断するのは難しいところ。

ここで提言したいのは、各サービスで協力して、ダイビングエリアとしてリ
コールの基準を定めておくこと。個人的に一例を考えてみる。

地震発生から津波の警報まではタイムラグがあるので、津波速報の前に
地震速報で一定の基準を作る。例えば萩谷先生の「M7.0、震源が
30km以浅」など。

地震速報でこの基準に達しているとわかったら、陸上や水面のダイバー
にスピーカーなど音で知らせて、エントリー口にいる人は高台へ避難させる。

また、ダイビング中のダイバーへは水中ブザーなど鳴り物で知らせ、沖へ
ボートを走らせて待機。

音に気がつかなかった人も、水中でも地震を体感することも多いので(頭
上をボートが走っているときのような衝撃を体に受けるという)、大きな地
震に気が

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PROFILE
法政大学アクアダイビング時にダイビングインストラクター資格を取得。
卒業後は、ダイビング誌の編集者として世界の海を行脚。
潜ったダイビングポイントは500を超え、夢は誰よりもいろんな海を潜ること。
ダイビング入門誌副編集長を経て、「ocean+α」を立ち上げ初代編集長に。

現在、フリーランスとして、ダイバーがより安全に楽しく潜るため、新しい選択肢を提供するため、
そして、ダイビング業界で働く人が幸せになれる環境を作るために、深海に潜伏して活動中。

〇詳細プロフィール/コンタクト
https://divingman.jp/profile
〇NPOプロジェクトセーフダイブ
http://safedive.or.jp/
〇問い合わせ・連絡先
teraniku@gmail.com

■著書:「スキルアップ寺子屋」、「スキルアップ寺子屋NEO」
■DVD:「絶対☆ダイビングスキル10」、「奥義☆ダイビングスキル20」
■安全ダイビング提言集
http://safedive.or.jp/journal


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