ホントかい!!?? 高所移動が減圧症の原因の26.3%

ヤドカリ爺は今、「DAN JAPAN」の会報Alert Diver47号を読んでおります。
相変わらず中身の薄い内容ではありますが、
その記事の中に、東京医科歯科大学の真野名誉教授の講演録がありました。
“潜水後の高所移動の危険”というお話です。以下、抜書きします。

「東京医科歯科大学で確認された減圧症198件のうち、
航空機搭乗の場合と道路の高所移動を合算すると26.7%。
また、DANのホットラインでも130件のうちの26.3%が高所移動に関する相談です。(表5)。
箱根の山越えなどの高所移動のリスクがいかに高いかということです」
DAN JAPAN,Alert Diver47号

これを読んでギョッといたしました。
潜水医学の権威の先生が、減圧症の原因の1/4以上が高所移動が原因というのですから、
そりゃびっくりいたします。

ところが、ところがでアリマス。
その小さな(表5)に目をこらしてみますと(めちゃくちゃ小さい表で、拡大鏡で見ても、まだ文字が小さい)、
DAN のホットラインの相談の減圧症494件のうち130件26.3%が低圧環境
(つまり飛行機搭乗と高所の通過です)によるものであることが分かりました。

さらにその26.3%のうちの25.4 %33件が高所移動だったというのでした。
つまりDAN JAPANの減圧症の相談全体の6.68%が高所移動だったということですな。
飛行機搭乗を含めた高所移動が26.3%ということで、
26.3%のすべてが高所へのドライブではないので、すこーしだけ安心しましたぞ。

英語では飛行機搭乗も高所へのドライブも含めて、
Ascent to altitude(高所への浮上)などともいいますから、
医療にあたられる専門家の先生にとっては、どちらも同じなのかもしれませんな。
それでも減圧症の原因の26.3%なんて数字は、かなりセンセーショナルのでありますな。

もう1つ、1980年以降、東京医科歯科大の扱った減圧症件数1397件のうち、
レジャーダイバーの減圧症が743件。
そのうちの198件26.7%が低圧環境(つまり飛行機と高所移動)だった。
さらにその32.8%65件が高所移動というデータが、同じ表に載っております。

数字ばかりがぞろぞろ続いておりますが、結局のところ、
東京医科歯科大学のデータを高所移動に限ってみると、
レジャーダイバーの減圧症743件のうち26.7%X32.8%=8.75%ということになります。
やや統計数字の読み方という視点も必要なようです。

そして、このDANの高所移動の減圧症の件数が何年間の集計なのか分かりません。
東京医科歯科大の1980年以降で65件の高所移動による減圧症件数が、
平均的な減圧症の発症率に比べて、
飛びぬけてリスクが高いのかどうかは、私たちには分かりません。
単純に割ると年に数件ということになりますが、あるいは、最近急激に増えたのかもしれません。

ただ東京医科歯科大学のデータは、DAN JAPANのデータより長い期間の統計でしょう。
ダイビング後の高所移動による減圧症が最近の傾向だとすると、
最近のDANの相談のパーセンテージが低いというのも、ちょっとデータとして気がかりです。

そして1980年以来、何万人のダイバーが高所を経由して東京方面に戻っていったのでしょうか?
もちろん、ヤドカリ爺にも体に残っている窒素が、高所に移動することで何らかのリスクになって、
トラブルが起きることは、重々理解できるのです。
そしてその数字が警告している意味も尊重したいと思うのです。

多くのダイバーにとって身近な問題なだけに、過去の記録だけでない、
実験によるガイドラインができないものでしょうかと、切実に思うのであります。
そうすれば何時間待てば、高所移動ができるかを知ることができます。

どちらにしても、飛行機のケースを除くと、
26.3%ではなく7〜9%ぐらいが高所移動ということになり、ヤドカリ爺も少しほっといたしました。

そりゃそうでしょう。
レジャーダイバーの減圧症の原因の1/4以上と聞けば、こりゃ事態は深刻どころではなく、
山越えやめますか、ダイバーやめますかって、悩むダイバーが増えるに違いありません。

そしてどちらのデータも低圧環境のトラブルの約70%が、ダイビング後の飛行機搭乗なんですね。これも心しておかねばならないデータです。

次回。
3時間後に反復グループがA-Cになっていれば、御殿場が越えられるといわれております。
この条件をクリアーするにはダイビング終了時ににGダイバー以下でなければなりません。
ところがこのGダイバーになるってのが、至難のわざというおはなし。

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PROFILE
1964年にダイビングを始め、インストラクター制度の導入に務めるなど、PADIナンバー“伝説の2桁”を誇るダイビング界の生き字引。
インストラクターをやめ、マスコミを定年退職した今は、ギターとB級グルメが楽しみの日々。
つねづね自由に住居を脱ぎかえるヤドカリの地味・自由さにあこがれる。
ダイコンよりテーブル、マンタよりホンダワラの中のメバルが好き。
本名の唐沢嘉昭で、ダイビングマニュアルをはじめ、ダイビング関連の訳書多数。
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