ダイバーデビューの思い出

僕のダイバーデビューは最悪だった。
ダイビングとはスコーンと抜けた透明度に、
トロピカルフィッシュが舞う夢の世界だと思っていた。
しかし、初めて潜った伊豆の海は、
水温17度、透明度ボチボチ、
海藻ゆらめく東映映画のオープンニングの世界だった。


海に行くまでの準備の時間は、
僕を爽やかなダイバーに変身させるはずだったのに、
ウエットスーツを着るだけでゼーゼーハーハー変質者。
タンクを背負えばあっちへフラフラこっちへフラフラ酔っ払い。
全然、爽やかじゃない。
それどころか、酔っ払いの変質者は、
ヨダレや鼻水まで垂れ流し。ゲヘヘヘ。
そんな酔っ払いの変質者は、
足場の悪いゴロタを歩くだけでもつらいのに、
波が容赦なくやってきて、ズコーっとお決まりの転倒。
始まるのはダイビングではなく吉本新喜劇?
そして、先の海の中である。
僕は海の中で考えた。
これは一体何がおもしろいのだろうか?
水中で震える僕にイントラが、ここを見ろと指をさす。
指の先を見つめると、何だか気持ち悪い生物がペタッと岩にはりついている。
イントラは「ベニイザリウオちゃん。かわいいね〜」と
書いたスレートを嬉しそうに差し出す。
僕は海の中で考えた。
これのどこがかわいいというのだろうか?
試練は続く。
イントラはマスククリアをしろという。トラウマになった。
やっとエグジット。
立ち上がるのが辛い。歩くのも辛い。疲れた。寒い。母ちゃんおんぶ〜[m:46]
疲労困憊の僕は、お風呂に飛び込む。
極楽とはこのことだ。
そうか、そういうことか。
ダイビングとは風呂の前フリだったのか!
しばらくの休憩の後、イントラが2本目に行くという。
お金を払っているので仕方なくついて行く。
っていうか、俺、お金を払っているのか!
ダイビングデビューで思ったこと。
ダイビング、好きになれそうにないかも……。
しかし、僕はダイビングを続けている。ってか、和尚になった。
僕の他にも伊豆から始めて、ダイビングを続けている人は大勢いる。
なぜだろうか?
長いので続く。

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writer
PROFILE
法政大学アクアダイビング時にダイビングインストラクター資格を取得。
卒業後は、ダイビング誌の編集者として世界の海を行脚。
潜ったダイビングポイントは500を超え、夢は誰よりもいろんな海を潜ること。
ダイビング入門誌副編集長を経て、「ocean+α」を立ち上げ初代編集長に。

現在、フリーランスとして、ダイバーがより安全に楽しく潜るため、新しい選択肢を提供するため、
そして、ダイビング業界で働く人が幸せになれる環境を作るために、深海に潜伏して活動中。

〇詳細プロフィール/コンタクト
https://divingman.co.jp/profile/
〇NPOプロジェクトセーフダイブ
http://safedive.or.jp/
〇問い合わせ・連絡先
teraniku@gmail.com

■著書:「スキルアップ寺子屋」、「スキルアップ寺子屋NEO」
■DVD:「絶対☆ダイビングスキル10」、「奥義☆ダイビングスキル20」
■安全ダイビング提言集
http://safedive.or.jp/journal
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