【中性浮力が苦手なダイバー必見!】コツを掴んでダイビングのスキルアップ

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数あるダイビングスキルの中でも、最も重要なスキルと言って過言ではない「中性浮力」。ダイビングの醍醐味である浮遊感を存分に味わうためには、この中性浮力の習得が不可欠だ。しかし一方では、多くのダイバーが、この中性浮力をうまく取れずに苦労しているのも事実。
そこで、この記事では中性浮力が苦手だ!というダイバーの方へ向け、中性浮力の基礎知識から中性浮力を取るために具体的に何をしたらいいのか、などを紹介し、すべてのダイバーが中性浮力を身につけられるように手助けすることを目指しています!

「中性浮力」って?

まず改めて「中性浮力」とは、何なのか整理しておこう。中性浮力とは、水中でバランスよく、安定してホバリング(一定の水深で静かに浮いている状態)すること。つまり、浮きも沈みもせずに中層に留まることを意味する。より具体的にはプラス浮力(浮こうとする力)とマイナス浮力(沈もうとする力)がちょうどバランスを取っている状態のことを指す。まさに宇宙飛行士のように無重力に近い浮遊感味わえる状態のことだ。

ダイビングにおいては、この浮力の微妙なコントロールが超重要!しかし、ダイビング中は常に呼吸をし、身体の浮力は絶えず変化するため、100%完璧な中性浮力を維持すること(まったく浮き沈みしない状態)が実際には困難とも言える。したがって、ダイビングで言う中性浮力を取れている状態とは、多少の浮き沈みを自分でコントロールすることができる状態のことなのだ。

中性浮力は、なぜ取らないといけないのか?

中性浮力は、単に水中で浮遊感を味わえるだけではなく、エア消費、心身疲労、そして海洋環境など、自分自身だけでなく海に対しても数多くのメリットがある。大きく6つ挙げてご紹介していこう。

①エアの持ちが良くなる

中性浮力がうまく取れないと、常に足や手を動かして水深をキープしようとする。これは常にランニングをしているような状態とも言える。運動量が増えることで、体はよりたくさんの空気を必要とし、結果としてエアの消耗が早まるというわけだ。中性浮力が取れると、余計に足や手を動かす必要がなくなり、リラックスした状態でいられるため、エア消費を抑えることにつながる。

②どんな場所でもダイビングが楽しくなる

ダイビングのポイントによっては、大物や群れを見るためにたとえば水深が50mもあるような水底が見えない場所で中層を泳ぐこともあるため、「深海に落ちていってしまうのでは…」、と怖さを感じることもあるだろう。しかし中性浮力が取れていれば、水深を維持しやすくなるため、怖さではなく、むしろ開放的で自由な浮遊感を楽しむことができるようになる。

③海洋環境にやさしいダイバーになれる

一見固そうに見えるサンゴ。しかし中性浮力が取れていないためにサンゴに接近してしまいダイバーのフィンがあたったり、手をついてしまうと、簡単に折れてしまう。サンゴは1cm成長するのにも1年以上かかるのだ。また、砂地の場所で着底してしまったとしよう。そこにもし生き物がいたら、接触したりフィンで巻き上げて傷つけてしまう恐れさえもある。中性浮力をしっかりと取ることで、これらの水中環境へ与える負荷を減らすことができる。

④砂の巻き上げ防止

中性浮力が取れず、砂地で這うようにして進んでしまうと、砂を巻き上げて視界が悪くなり、後ろを泳ぐダイバーは生物が見えなくなってしまう、なんていう状態に。巻き上げている本人は気づきづらい時もあるので、注意が必要。ファンダイビングでの着底はガイドの指示がない限り、基本的にはしないようにしたい。

⑤ロープなしで安全停止ができる

安全停止の際、エントリーした場所とエキジットする場所が同じであれば、海底から水面(ボートなど)に繋がるロープがあることも多く、掴まることができ、多少中性浮力が取れなくても水深約5mにとどまっていられる。しかし、船の位置を固定しないドリフトダイビングなどでは、掴まれるロープがないため、自分で浮力を調整し水深約5mに留まらなければならない。ここでも中性浮力を取ることができれば、安定して水深を維持することができるようになるのだ。

⑥撮影スキルの向上

水中での写真や映像撮影のレベルも格段に向上する。なぜなら安定した浮力と姿勢を保てるようになることで、ぶれずにクリアな撮影できるようになるからだ。また、ゆっくりとコントロールしながら海洋生物にも近づけるので、魚も逃げづらくなる。

中性浮力を取るときに必要なことは?

では、中性浮力を取るために必要なこととは何だろう?以下の7つのポイントが超重要になってくる!

①BCでしっかりと浮力を調整

  • エントリーし、ガイドが指示する場所に着いたら呼吸を整えてでリラックス。そんなことが?と思うかもしれないが、これが意外と重要。
  • 水中で体を横(水平)にして体勢を整えたら、BCに空気を短く何回かに分けて給気し浮力を調整。
    浮き過ぎた場合は、適度にBCから空気を排気。

②呼吸で浮力の微調整ができる

  • ダイビング中の浮力調整はBCだけでなく呼吸による微調整も可能。
  • 空気を吸うと肺が膨らむことで浮き、空気を吐くと肺が縮まり沈む。このときもタイムラグがあるが、その感覚を掴むことも大事。

③水深による浮力の変化を知る

  • 水深が深くなったときは空気が圧縮され浮力が低下するのでBCに給気。
  • 反対に浅くなると空気が膨張するので排気。BCの操作は、このときも少しずつ繊細に操作することを忘れえずに。

④ウエイトの調整

  • 適切なウエイト量は、スーツや器材をすべて身につけBCの空気を抜いた状態で水面に浮いたとき、目の高さが水面と一致することが理想。
  • ウエイトが重すぎると、BCに余分に空気を入れる必要があり、そうするとBCの中で空気が移動してバランスを取るのも難しくなる。逆にウエイトが軽すぎるとそもそも潜降することができない。
  • ウエイトの配置は左右均等にし、身体の前側にも配置するとなお良し。なぜなら背中には重たいシリンダーがあるので、身体の前側にウエイトがあるとバランスが取りやすくなる。

⑤水中での身体の姿勢

  • 頭が上がり過ぎたり、足が沈み過ぎた姿勢でフィンキックをすると上に向かって泳いでいる状態になるので、流線型のうつ伏せ姿勢を保つ。

⑥適切なBCの装着

  • サイズが大きいBCだとBCと身体が一体とならずにずれてしまうので、バランスが悪くなり、中性浮力を取るのが難しくなる。自分の身体に合ったサイズのBCを選び、さらにBCのベルトもしっかりと締めることが大切。
  • 装備のバランスが良いと、浮力の調整が容易になる。
【覚えておこう】タンク残圧による浮力の変化

ダイビングで使用するシリンダーには、スチール製とアルミ製のものがある。同じ内容量のシリンダーを比較した時、残圧の減ってくるダイビングの後半では、スチール製よりアルミ製の方がプラス浮力になりやすい。

中性浮力に関するよくある間違い

中性浮力を取ろうとするときに陥りがちな間違いもある。下記に当てはまる方は特に意識して、それらを避けるための対策を取ってみよう。

①過剰なBC調整

問題点小さな浮き沈みで慌ててBCの空気を調整し、給気しすぎたり排気しすぎたりすることを繰り返す悪循環に陥る。

対策小さな浮き沈みに焦らず、BCに一気に給気しすぎない。給気や排気をしてから2秒程度のタイムラグがあることも意識しながら、呼吸での浮力調整もうまく併用する。

②BCの操作ミス

問題点BCの操作に慣れておらず給気ボタンと排気ボタンの操作を間違えることがある。

対策陸上でBCの給気、排気操作を練習し、手元が見えないとしても触っただけで操作できるように指で覚える。

③手を使う癖

問題点中性浮力で水深を維持しようとするとき、無意識に手を使って浮力を調整しようとする。

対策中性浮力が取れていれば、呼吸だけで浮き沈みを調整できるので、手を使わないように意識して練習してみよう。

まとめ

ダイビングにおける中性浮力の重要性と、中性浮力を取るために必要なこと、そして初心者が陥りがちな間違いについて詳しく解説してきた。自分は中性浮力を取れていると思っても、意外とフィンキックや手を使っていることもある。一度、客観的に自分の姿勢を確認するためにダイビングをしている姿を撮影してもらうのもいいだろう。中性浮力の上達には普段のダイビング時に意識して練習することも大事だが、もっと集中的に練習したい方にはダイビング指導団体が提供する中性浮力をマスターするコースに参加するのもおすすめ。

例(Cカード協議会加盟団体より)
▶︎SSI(パーフェクトボイヤンシースペシャルティ)
▶︎PADI(ピーク・パフォーマンス・ボイヤンシー・スペシャルティ・コース)
▶︎BSAC(ニュートラルボイヤンシー)
▶︎SNSI(SNSIマスターボイヤンシー&トリムダイバー)
▶︎SDI(アドバンストボイヤンシーダイバー)
▶︎Stars(ボイヤンシースペシャリティー)

中性浮力はダイビングの中でも難しいスキルだが、中性浮力を取り、浮遊感を味わうことこそダイビングの醍醐味でもある。今回ご紹介したポイントを意識し、徐々に中性浮力の感覚を掴みながらマスターしていこう!

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PROFILE
0歳~22歳まで水泳に没頭し、日本選手権入賞や国際大会出場。新卒で電子部品メーカー(広報室)に入社。同時にダイビングも始める。次第に海やダイビングに対しての想いが強くなりすぎたため、2021年にオーシャナに転職。ライターとして、全国各地の海へ取材に行く傍ら、フリーダイビングにゼロから挑戦。1年で日本代表となり世界選手権に出場。現在はスキンダイビングインストラクターとしてマリンアクティビティツアーやスキンダイビングレッスンを開催。
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