【北海道・支笏湖でダイビング!“水中花”の撮影に挑む】編集部セリーナの海旅記録vol.1

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“北海道でダイビング”と聞くと、どのようなイメージを思い浮かべるだろうか。寒い、流氷、トド…、など冬にまつわるものが浮かんでくる方が多いのでは?。もしかすると、そもそもダイビングできるの?という声もあるかもしれないほど、ダイビングとの結びつきが濃いイメージではない北海道。そんなイメージを払拭すべく、オーシャナ編集部1年生のセリーナが、8月の北海道へダイビング取材ツアー敢行!私が観たもの感じたものをありのまま、連載でお届けしたいと思う。

今回のVol.1では、北海道の西側にある支笏湖(しこつこ)という湖をご紹介。そこには夏の間にしか咲かない「チトセバイカモ」という水中花があるのだが、今回、札幌に店舗を構えるダイビングショップ「ロビンソンダイビングサービス」の西村さんにお世話になり、その撮影に挑戦してみた。はたしてうまく撮れたのか!?

支笏湖ってどんなところ?

北海道千歳市に位置し、空の玄関口である新千歳空港からは車で30〜40分。札幌市内からは1時間ほどで行ける。セリーナは札幌市内のホテルで西村さんに車でピックアップしてもらい、支笏湖に向かった。道中は山を登っていくため、窓からの景色は一面緑。海でのダイビングでは見られない光景に、どこか違和感を感じながらも初めての湖ダイビングに胸が高鳴った。

車に揺られること、約1時間。美しい自然を眺めながらの楽しい会話のおかげで、あっという間に支笏湖に到着。

周囲を美しい山々に囲まれる支笏湖

周囲を美しい山々に囲まれる支笏湖

「お〜!これが支笏湖!大きい!」。当日の、天気は晴れ(ときどき曇り)で風も穏やか。支笏湖は支笏洞爺国立公園内にあり、周囲を美しい山々に囲まれている。そこは車の音も喧騒さもなく、静かで優しい自然が溢れている。まだダイビングをしていないのにさっそく癒される。ちなみに湖周はフルマラソンとほぼ同じ40kmあるという。湖の周りを走ったら気持ちよさそうだが、40kmも走る切れる気がしないので挑戦はしない(笑)。

いざ支笏湖へエントリー!

▶︎特徴その1「11年連続日本一の水質」

まず目に飛び込むのは、陸から見てもひと目でわかる圧倒的な水の透明度!それもそのはず、環境省の湖の水質調査で2007年から2017年まで11年連続で日本一に輝いている湖なのだ。水質日本一というからには、味見してみたくなるのがセリーナだ(※1)。ほんの少し水をなめてみた。「しょっぱくない!」。淡水だから当たり前だが、ちょっと感動した。
(※1マネをすることはおすすめしない)

潜ってみると、透視度は15mほど。当日は雨などの影響により、少し濁ってしまっていたようだ。それでも水中は十分に澄んでいて、水底は黄土色のような泥なので、太陽光が入ると実に明るい。ベストコンディションの日の透視度は優に20mを超えるとのことだ。

▶︎特徴その2「差の激しい水温」

水温の年間平均は6度。セリーナが行った8月19日の水温は最高20度、最低15度だった。なぜこんなにも水温差があるのかというと、湖には流れがないため、浅いところと深いところの水が混ざりずらいため水深5m〜10mの間だけでも3〜5度変わるのだ。水温の変化を楽しめるのも湖でのダイビングの楽しみかもしれない。

▶︎特徴その3「日本第二位の水深」

水深の平均は約250mで最大水深は360mとかなり深く、これは秋田県の田沢湖に次いで日本第二位の深さ。しかし、今回お目当ての「チトセバイカモ」は水深1.5mあたりという非常に浅い場所が一番綺麗に咲くという。見どころのもう一つに流木もあるが、それも水深8〜12mあたりのところにあるため、比較的浅い水深でのダイビングを楽しむことになる。

豆知識「支笏湖は凍らない⁉︎」

真冬の支笏湖は周辺の気温がー10度を下回るときがあるのに、一年を通して凍らない「不凍湖」なのだ。凍らない理由は水深にある。支笏湖の最大水深は360m。真冬は湖の深い部分にある水温が水面より温かくなり、湖の水面を温めるため凍らないのだという。

▶︎特徴その4「水中に咲く小さなお花。チトセバイカモ」

いよいよお目当てのチトセバイカモ!器材を背負い、岩場からエントリーしていくと、早々に水草が見えてきた。お目当てのチトセバイカモに向かって、西村さんのあとを追う。実は、ダイビングの前に「今年は水温の上昇が早くて、ここ最近も気温が30度を超えていたんです。もしかしたらチトセバイカモは枯れているかもしれない」と宣告されていた…。「もしかしたら、まだ…」という期待も抱きつつ水中を進む。前もって言っておくが、チトセバイカモは、皆さまがご想像するであろう“一面お花畑〜!”ではなく、ポツポツ と咲く。そこを頭に入れて読み進んでいただきたい。

豆知識「チトセバイカモはこんなお花」

チトセバイカモは水草の一種で、日本の固有種。北海道の千歳川で発見されたことが名前の由来。比較的浅い水底に固着し、直径6〜10mmほどの梅に似た小さい白い花を咲かす。水質汚染などによって生息位置が失われつつあり、絶滅危惧種に登録されている。

そしてついに!

うっすら白く、つぼみになっているところがチトセバイカモのようだ。

うっすら白く、つぼみになっているところがチトセバイカモのようだ。

…。おやおや。怪しい。枯れてしまっているのだろうか…。

西村さんが指差すところに寄ってみた。

「わ〜!咲いてた!!」。若干透明がかって、枯れ始めているようだが、はっきりと花だということがわかる!別カットでもどうぞ。

「お〜。いい感じ」。にやけるセリーナ。

小指の爪にも満たないほどの大きさの白い小さな花が、一面緑の水草の中にポツっと健気に咲いている。念願のチトセバイカモに出会えたことが嬉しかった。

チトセバイカモは一つの株単位で群生し、一斉に満開になるのではなく、順番に咲いては枯れていく。例年、7月〜8月ごろに花を咲かせるそうだが、今年は水温上昇が早かったということもあり、7月中旬から下旬がベストシーズンだったとのこと。

また、綺麗で可愛いと思っても、数が減ってきている貴重な花なので、くれぐれも摘んだりしないようにしよう。

▶︎特徴その5「何もせず、ただずっと観ていたい水草たち」

チトセバイカモ以外にも数多くの水草が群生。あまり聞き馴染みのない、シャジクモ、マツモソウなど4、5種類が生息している。

先端の松かさのようなところに気泡をつけるマツモソウ。

先端の松かさのようなところに気泡をつけるマツモソウ。

水面まで伸びる水草が壮観。

水面まで伸びる水草が壮観。

太陽光が水中に差し込み、水草がキラキラと輝く。その景色を眺めていると、全身の力が自然と抜けていく。冷たい水中にいることも忘れ、心があたたかい気持ちで満たされる。ぜひ一度は生で観て、体感してほしい景色だ。

西村さん曰く、写真は、下から仰いだり、水面付近から見下ろしたりいろんな角度から撮るのがおすすめだそうだ。ダイバーを入れて撮るのも、水草の規模感が伝わるのでおすすめとのこと。やらずにはいられないセリーナ。やってみた。

いろんな角度で。水草目線だと水中とは思えない写真が撮れた。

いろんな角度で。水草目線だと水中とは思えない写真が撮れた。

ダイバーを入れて。繁茂する水草の量もおわかりいただけるだろうか。

ダイバーを入れて。繁茂する水草の量もおわかりいただけるだろうか。

ここでの注意は水草をフィンやゲージ類に絡めてブチブチと切ってしまわないようにすることと、海底の泥を巻き上げないようにすること。特に海底の泥はシルトという火山灰で、少しでも巻き上げるとモワーンと広がり目の前が見えなくなってしまうので、中性浮力を上手に取ることが必要だ。

▶︎特徴その6「湖ならではなの魚たち」

山奥の深い湖ではリンや窒素を含む塩類が少ないため、藻類の発生が少ない。そのため透明度が高くなる一方で、生物は少なくなるという。そんな中でも魚の数は多く、私が今回観れた魚を少しご紹介していく。

ハゼの仲間のヌマチチブ。正面からだと怒っているように見える。

ハゼの仲間のヌマチチブ。正面からだと怒っているように見える。

目のあたりがオレンジ色で隈取されているヨシノボリ。

目のあたりがオレンジ色で隈取されているヨシノボリ。

群れで回遊しているウグイ…。撮影者(セリーナ)の技量の問題もあるが、透視度のせいにしておこう。

群れで回遊しているウグイ…。撮影者(セリーナ)の技量の問題もあるが、透視度のせいにしておこう。

このほかにも、ヒメマス、ニジマス、イトヨ、アメマス、フクドジョウ、ヤゴ、スジエビなどがいる。

▶︎特徴その7「山から流れてきた木」

チトセバイカモをお腹いっぱい見たら、もう少し深場へ。そこには大きな流木が泥に埋まりながら顔を出している。海では見られない光景だ。こちらも水草同様に人を入れて撮影すると迫力が伝わる。

ガイド兼水中モデルの西村さんがちょうどいい場所にいてくれる。

ガイド兼水中モデルの西村さんがちょうどいい場所にいてくれる。

支笏湖でのダイビングは基本的に2本で、それぞれ40分前後となっている。私はドライスーツで潜ったが、水深を下げると少しだけ寒いかなと感じた。北海道といえども、8月19日の気温は25度ほどあったので、陸に上がれば暖かい。最後にもう一つ、「湖、最高!」と感じたのは、ダイビング後にシャワーを浴びなくても良いことだ。髪もきしまず、肌もベタつかない。最高だ。

アフターダイビングはチップを味わう

ダイビングを満喫したあとの大イベント、ご飯タイム!今回は、湖に隣接する ポロピナイ食堂に連れて行ってもらった。ここでは雄大な支笏湖を目の前に、アイヌ語でチップと呼ばれるヒメマスを味わうことができる。私が注文したのは、焼きとフライと刺身が一度に味わえる、なんとも贅沢なスペシャルセット。の。一緒に潜ったバディはチップがまるまる一尾乗ったカレーライスを注文。漫画に出てきそうなカレーライスに、思わず私も撮らせてもらった。

スペシャルセット

スペシャルセット

カレーライス

カレーライス

以上、支笏湖でのダイビングレポートはいかがだっただろうか。夏の支笏湖の魅力が少しでも伝われば幸いだ。今年のチトセバイカモシーズンは終わってしまったが、来年夏のダイビングにぜひ支笏湖をおすすめしたい。

Vol.2では「積丹ブルー」とも言われるほど綺麗な海がある、積丹半島でのダイビングをレポートしていきたい。お楽しみに!

ロビンソンダイビングサービスについて

札幌市西区に拠点を構えるダイビングサービス。夏は支笏湖や積丹で、冬は知床で流氷ダイビングなどを行っている。北海道を愛してやまないダイビングサービスだ。1982年の創業以来、「海の感動教えます」というキャッチフレーズのもと、多くのお客様に北海道の海の素晴らしさを伝えている。
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今回ガイドをしてくださった西村浩司さんは、ロビンソンダイビングサービスのオーナーで、生まれも育ちも北海道。ダイビング歴28年、ガイド歴23年のほとんどを北海道の海で潜っているという。見た目は金髪で少し強面な雰囲気とは裏腹に、話すととても優しい。北海道の海を知り尽くし、ポイントについて詳しく教えてくださる、北海道愛が非常に強いお方だった。また北海道に来たときは、またぜひ西村さんにお世話になりたい。

ロビンソンダイビングサービスでは最近Instagramを始めたそうだ。フォローとたくさんのいいねをしてほしいそうなので、ぜひご協力をお願いします!
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PROFILE
0歳~22歳まで水泳に没頭し、日本選手権入賞や国際大会出場。新卒で電子部品メーカー(広報室)に入社。同時にダイビングも始める。次第に海やダイビングに対しての想いが強くなりすぎたため、2021年にオーシャナに転職。ライターとして、全国各地の海へ取材に行く傍ら、フリーダイビングにゼロから挑戦。1年で日本代表となり世界選手権に出場。現在はスキンダイビングインストラクターとしてマリンアクティビティツアーやスキンダイビングレッスンを開催。
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