フローダイビングって知ってる? ブラックライトで妖しく光るサンゴを見にいこう
「フローダイビング」って聞いたことありますか?なんでも、ナイトダイビングなど暗い海の中で、特殊なライトを海中生物に当てると、その生き物がもつ蛍光タンパク質が反応して、普段目にする色とは異なる色を発するらしく、それを観察するダイビングのことだそう。
数年前に私もオーシャナの記事やSNSで見かけ、その不思議な色と雰囲気に、いつかはやってみたいと思っていた。しかし最近ではあまり目にすることはなく、すっかり忘れていたのだが、先日取材にうかがったベントスダイバーズの大原さんが、フローダイビングも行っているという。その話を聞き、やってみたい気持ちがまたむくむくと湧き上がってきてしまい、改めてフローダイビングの取材をお願いしたところ、優しい大原さん、ノリノリでOKしてくれた。
「ディズニーシーのマーメイドラグーンみたい」と大原さんが表現するフローダイビング、果たしてどんな光景が見られるのだろうか。
まずは普通にナイトダイビング
そろそろ日没という頃に集合し、大原さんからナイトダイビング、フローダイビングのブリーフィングを受ける。用意してくれた複数のライトは、暗闇を照らすための普通の水中ライトや予備ライト、そしてフローダイビングに必要なケルダンのブラックライト。
フローダイビングで使用するライトには、ブラックライトやブルーライトがある。ブルーライトの場合は、変化した色を見るために特殊なフィルターが必要となるが、強い光が得られるといったメリットが。一方ブラックライトは、肉眼で色の変化が見えて、写真や動画にもフィルターなしでその変化が映るので、手軽にナイトダイビングに取り入れることができる。今回はそのブラックライトを使用したフローダイビングにチャレンジ。
初めは普通のナイトダイビングを楽しむ。ポイントはベントスダイバーズの目の前の「ダイヤモンドビーチ」。遠くに見える街の明かりと星空を眺めながら5分ほど水面移動をして潜降。最大水深5m前後という遠浅なこのポイントには、数年前に一度死滅したが、回復しつつあるサンゴが広がっている。
サンゴの陰で寝ているブダイや寝ぼけて不思議な動きをするシマキンチャクフグなど、夜しか見られない生き物たちの動きはどこかユーモラス。見ているとついニヤニヤしてしまう。
夜の海に浮かび上がる蛍光サンゴ
そして15分ほど経ったころだろうか、大原さんがおもむろにブラックライトを取り出した。いよいよ待ちに待ったフローダイビング。サンゴの群生にブラックライトの光を向ける大原さん。近づくと、そこには見たことのない色をしたサンゴが。
ブラックライトと普通のライトで比較すると、明らかに違うのがよくわかる。
サンゴは体内に緑色蛍光タンパク質を持ち、その光がブラックライトに反応してこのように光るそう。また、この緑色蛍光で、褐虫藻というサンゴの育成に欠かせない共生パートナーをおびき寄せているらしいが、すべてのサンゴが光っているわけではないのがまた不思議だ。
夜のテンションとブラックライトで光るサンゴを見ていたら、なんだかクラブにいるような気持ちに。「マーメイドラグーン」と大原さんが表現したせいか、私の頭の中はリトルマーメイドの主題歌「Under The Sea」ダンスリミックスが流れ続ける(そんなリミックスが本当にあるかは知らないが)。そして、はしゃぐ私に大原さんがブラックライトを当てる。
サンゴに負けじと光を放つ私のウエットスーツ。初めてのフローダイビングは光るサンゴとスイカのコラボレーションでクライマックスを迎え、幕を閉じたのだった。
普段とは違った光景が見られるフローダイビング。サンゴ以外にも蛍光タンパクを持つ生き物であれば、異なる光を放つそう。その他にもフィルターや光の組み合わせで新しい写真の表現にもチャレンジできるそうなので、一味違うナイトダイビングを楽しみたい方はぜひ試してみては!?
参考:PNAS RESEARCH ARTICLE 「Green fluorescence from cnidarian hosts attracts symbiotic algae」、産総研 研究成果「サンゴがもつ緑色蛍光タンパク質の働きが明らかに」
取材協力:ベントスダイバーズ
恩納村で22年のキャリアを持つガイドの大原さんが運営するベントスダイバーズ。シュノーケリングや体験ダイビングからファンダイビング、テクニカルダイビングなど幅広く案内する。海や生き物へのリスペクトを忘れない、穏やかな大原さんとダイヤモンドビーチを望む絶好のロケーションはダイバーを惹きつけて離さない。