“海藻ダイビング”ってナニ!? 海藻づくしの1日を編集部・セリーナがレポート@東伊豆

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相模湾や伊豆大島を望む絶景の温泉地としても知られる小さな港町、北川。その地で今回、オーシャナ編集部のわたくしセリーナとユウダイさんが前々から楽しみにしていた、あるダイビングプログラムに参加してきた。それは、海に生息する海藻を徹底的に学び観察する「海藻ダイビング&海藻おしばづくり」というもの。一体どんなプログラムなのだろう!? セリーナが1日の様子を徹底レポート!

豊かな自然に囲まれた北川に向けて出発

AM5:30、朝日が昇る前に東京を出発し、静岡県の東伊豆・北川に向かって車を走らせる。東京から北川までは空いていれば、2時間半ほどで着く。

北川に向かう道中。赤く照らされる富士山が正面に

北川に向かう道中。赤く照らされる富士山が正面に

本題に入る前に、北川の海と海藻ダイビングについて少しご紹介しておこう。

北川ってどんな海?

北川の海は、マクロ系の生物から回遊魚まで生息し、華やかで美しいソフトコーラルも見どころ。船で5分のボートポイント「カジカキ」は起伏に富んだ根が立ち並ぶワイドでダイナミックな地形が特長的。また、混んでない海で潜りたい人にもおすすめ。というのも北川はボートダイビング専門のダイビングスポットなので1回の船に乗れる人数は9名×3航=27名が最大の受け入れ人数なのだ。エリアも広いため「海の中にダイバーだらけ…」ということもなく、のんびり快適にダイビングを楽しむことができる。

美しいソフトコーラル

美しいソフトコーラル

「海藻ダイビング&海藻おしばづくり」とは?

北川の現地サービス「北川ダイビングサービス」のガイドでもあり、「海の森も大切に」というスローガンを掲げ、海と地球環境保全の啓発活動に取り組む「海藻おしば協会」の認定講師である高山優美氏(以下、まちゃ先生)が中心となり行われている「海藻ダイビング&海藻おしばづくり」。

海藻は、日本だけでも1,500種以上が生息し、食用として私たちが口にする種だけでも100種類以上とも言われていおり、意外と身近な存在だが、普段の生活やダイビング中に改めて注目する人は、まだまだ多くはないのではなかろうか。

そこで本プログラムでは、ダイビングやワークショップを通じて楽しみながら、その種類や形、色、そしてブルーカーボン生態系として地球になくてはならない存在であることを学んでいく。そうすることで、今まで気づかなかった海藻の価値を発見し、私たちのその後の行動に変化をもたらすことを目的としている。今回は、藻場が衰退する磯焼けに対して、ウニ駆除や海藻の植え付けなどの活動を定期的に行う団体「モバイルラッコ隊」と海藻おしば協会の共催で行われた。

海の目の前に位置する北川ダイビングサービス

海の目の前に位置する北川ダイビングサービス

ここから本題のダイビング&ワークショップの様子をお届けしていこう。

海藻知識を高めよ!海藻クイズ

AM9:30、今回参加する4名のダイバーが関東方面から到着。メ海藻のことをほとんど知らないという大学生から、普段からモバイルラッコ隊として海藻に関わりのあるメンバーまでさまざま。自己紹介を済ませたら、まずは「海藻について知ろう!」ということで海藻クイズを行った。

写真の中から海藻を選ぶ問題に挑戦中

写真の中から海藻を選ぶ問題に挑戦中

海藻と思っていたものが実はウミウシの卵だったり、サンゴだと思っていたものが海藻だったり

海藻と思っていたものが実はウミウシの卵だったり、サンゴだと思っていたものが海藻だったり

海藻と海草の違いや、海藻の生態、海の森“ブルーカーボン”について楽しく学んでいく。普段から海藻(ブルーカーボン)の記事を読むことの多い筆者だったが、何問か間違えた。参加メンバー一同、盛り上がると同時に、早く実物を海で観たい!という気持ちが込み上がってきたようだ。

海藻ダイビング1本目 ―ゆっくりと海藻を観察!編―

AM10:30、船が出港。

筆者も海藻を見るのが楽しみ!

筆者も海藻を見るのが楽しみ!

北川の海で初めて潜るメンバーもいるので1本目は体慣らしも兼ねてゆっくりと水中観察。まちゃ先生に紹介してもらいながら、海藻クイズで登場した海藻を実際に観ていく。事前に予習して知識を持っておくと、何倍も楽しくなる。ダイビング中、喋れないのがもどかしい…。心の中で「あっ!これさっきクイズで間違えたやつだよね!? 」、「あっ!この海藻めちゃくちゃ綺麗じゃない!? 」と自問自答した。こんなに海藻を見つめるダイビングは初めてだ。

鮮やかな赤色なキジノオ。由来は雉の尾に似ているから

鮮やかな赤色なキジノオ。由来は雉の尾に似ているから

まちゃ先生のスレートには「海藻ではありません」の文字。サンゴと海藻の違いを学ぶ

まちゃ先生のスレートには「海藻ではありません」の文字。サンゴと海藻の違いを学ぶ

メタリック感のあるウスバワツナギソウ。筆者の海藻お気に入りランキング第一位。光を当てる角度で色が変わり、とにかく綺麗

メタリック感のあるウスバワツナギソウ。筆者の海藻お気に入りランキング第一位。光を当てる角度で色が変わり、とにかく綺麗

ウスバワツナギソウをよーく見ると、粒々しているものが。これは胞子嚢(胞子が出てくる気管)なんだそう

ウスバワツナギソウをよーく見ると、粒々しているものが。これは胞子嚢(胞子が出てくる気管)なんだそう

海藻ではないが、ペアになっているテントウウミウシも発見!

海藻ではないが、ペアになっているテントウウミウシも発見!

北川の海をじっくり観察しているとあっという間に時間が過ぎていった。

エキジットすると、「海藻ってこんなに綺麗なんだね!」、「あの海藻の名前なんだろう?」と感動冷めやらぬ様子のメンバー。まだ本プログラムの前半だが、魚や地形だけでないダイビングの楽しみ方にすでに興奮している様子。

水面休息(フィールドビンゴ準備)

AM11:30、1本目のダイビングが終わり、水面休息も兼ねながら2本目の海藻ダイビングの準備をする。気になる2本目は、ビンゴカードに書かれたアイテムを自分たちで探し出していく「フィールドビンゴ」という遊びをする。

まずは2人1組のチームをつくり、チームごとに水中スレートが配られる。この水中スレートには5×5のマス目が描かれており、めくったカード(下図参照)にある「△」や「キラキラ」といった模様や言葉をマスの好きなところに書いていく。この模様や言葉に当てはまる海藻を水中で探していくというわけだ。中には北川の海では滅多に観られない海藻もあるので、1本目のダイビングで観た海藻を思い出しながら、北川の海で必ず見れる海藻を真ん中やビンゴを狙う列に持ってくる。

カードを引いて、そこに書かれている模様や言葉をスレートに書き写す

カードを引いて、そこに書かれている模様や言葉をスレートに書き写す

「たくさん見つけてビンゴ目指すぞー!」

「たくさん見つけてビンゴ目指すぞー!」

海藻ダイビング2本目 ―フィールドビンゴで海藻を探しまくれ!編―

のんびりと水中観察した1本目から一変、40分という制限時間内にどれだけ海藻を見つけてビンゴできるか、メンバー一同、大人げなく本気になる。2人1組のチーム戦なので、1人はスレートを持ってマスを消していく人、もう1人はカメラで海藻の証拠写真を撮影する人、と役割分担する。バディ同士のコミュニケーション力も問われる。

順調に見つけている様子

順調に見つけている様子

こっちのチームも黙々と探している

こちらのチームも黙々と探している

光を当てると青紫色に輝く、妖艶なフタエオウギ

光を当てると青紫色に輝く、妖艶なフタエオウギ

薄くヒラヒラとした葉をよく見るとレース状になっている優雅なアヤニシキ

薄くヒラヒラとした葉をよく見るとレース状になっている優雅なアヤニシキ

まるで宝探しのように海藻を探していると、1本目と同様にあっという間に時間が過ぎる。まちゃ先生から終了の合図をもらうも、エキジットポイントに向かうまでの間も海藻を探し続けた(笑)。

たくさん見つけられた!

たくさん見つけられた!

気になるビンゴの結果は…、3分の1くらいのマスは消すことができなかったが、2ビンゴすることに成功!大人がやっても楽しかったし、ビンゴ成功で素直に嬉しい!

景品には、海藻がプリントされたしおりをいただいた!本を読むたびにテンションが上がりそう。

海藻も色味によって緑藻類、紅藻類、褐藻類と分けられ、形もさまざま。改めてじっくりと観てみると、実にたくさんの種類の海藻が海の中では生活していることがわかった。

こんな綺麗なの!? 海藻おしばワークショップ

そして、本プログラム最後はお待ちかねの海藻おしばワークショップ!今回はまちゃ先生が事前に北川の砂浜で採集してきてくださった海藻を使用する。ちなみに海藻は採集してから、持ちを良くするために塩抜きをし、冷蔵庫や冷凍庫で保存するそうだ。手間がかかっている。そして使用するときは、下図のように水道水を入れたバットに海藻を浮かべて乾燥しないようにしておしばづくりをしていく。

今回は11種類の海藻が用意された

今回は11種類の海藻が用意された

バットから台紙に海藻をのせ、爪楊枝でひろげて形を整える。バットに浮いているときはゴシャゴシャしていた海藻も、台紙の上に広げると、とっても綺麗な形をしている。時間制限を設けないと、永遠にできそうな海藻おしばづくり。今回は30分という制限時間の中で作り上げた。

筆者がつくった海藻おしば。綺麗を通り越して、海藻のことが愛おしく思えてくる

筆者がつくった海藻おしば。綺麗を通り越して、海藻のことが愛おしく思えてくる

他のメンバーの作品。全種類の海藻を使う人もいれば、紅藻類で揃える人も。みんなそれぞれ個性が出ている

他のメンバーの作品。全種類の海藻を使う人もいれば、紅藻類で揃える人も。みんなそれぞれ個性が出ている

最後はみんなで記念撮影

最後はみんなで記念撮影

「海藻って地味だと思っていたけど、こんなにカラフルで、こんなに綺麗なのっ!? 」という驚きと、「もっとたくさんの人に海藻の美しさを知ってほしい!」という想いを参加メンバー全員が感じていたと思う。海藻づくしの1日は終始新しい発見の連続の中、幕を閉じた。

今、海藻は磯焼け問題に直面しているが、海藻の価値や美しさを多くの人に伝え、海藻に興味を持ち行動する人が増えれば、磯焼け問題も緩やかに改善していくかもしれない。今回紹介したプログラムは、不定期で開催されているとのことなので、開催情報を入手したらocean+αでもお知らせをしたいと思う。

それにしても海藻は奥が深い。深みにはまると抜け出せなさそうだ…(笑)

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PROFILE
0歳~22歳まで水泳に没頭し、日本選手権入賞や国際大会出場。新卒で電子部品メーカー(広報室)に入社。同時にダイビングも始める。次第に海やダイビングに対しての想いが強くなりすぎたため、2021年にオーシャナに転職。ライターとして、全国各地の海へ取材に行く傍ら、フリーダイビングにゼロから挑戦。1年で日本代表となり世界選手権に出場。現在はスキンダイビングインストラクターとしてマリンアクティビティツアーやスキンダイビングレッスンを開催。
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