泳げなくてもダイビングはできるのか!? その理由と攻略法

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「泳げなくてもダイビングはできますか?」という質問をよく耳にする。結論から言うと、もちろん泳げるに越したことはないが、苦手な人でも適切な準備や知識があれば、美しい水中世界を存分に楽しめるはず。そこで本記事では、泳ぎが苦手な人でもダイビングを楽しめる理由や楽しむための方法、また安全対策や必要なスキルについて詳しく紹介する。

ダイビングは泳ぎが苦手でも大丈夫?


ダイビングにはすごく興味があるけど、泳ぐのが苦手でダイビングに挑戦できずにいる人も多いのではないだろうか。しかし、ダイビングでは、水泳のように自由に泳ぎ回る能力よりも呼吸管理や浮力調整、水中でのバランス感覚の方がより重要と言える。タンクの空気を使って呼吸をしながら、水中でのバランスを保つことになるため、泳ぐ技術そのものよりも、ダイビング装備の操作や安全な潜水方法を学び、身につけることになる。

泳げないとはどういう状態か?

「泳げない」と一口に言ってもその状態は人によって違い、さまざまな具体的な状況がある。ここでは、予想できるそれぞれの状態に応じて、ダイビングが楽しめるかどうかを見ていこう。また、水泳歴20年、フリーダイビング日本代表の筆者が思う水泳Tip(ヒント)も交えてみたので、参考いただければと思う。

水への恐怖心がある

例:水に入ること自体に恐怖を感じる

この状態ですぐにダイビングを始めるのは少し難しいかもしれない。まずはプールなどで水への恐怖心を和らげることから始めて、ある程度慣れてきたらダイビングにも挑戦してみよう。

例:水に顔をつけるのが怖い

ダイビングではマスクをつけるためマスクに水が大量に入ってこない限り目や鼻が水につかる機会は少ないが、ゼロではない。まずは、洗面器ややバスタブで顔を水につけ、徐々に恐怖心を取り除いていく練習から、無理をせずにはじめてみよう。

基本的な泳ぎのスキルに自信がない

例:浮くことができない

浮くことができなくても、ダイビングではBC(浮力調整装置)を使って浮力を調整するので大丈夫。水中でリラックスできるようにすることが重要。

水泳Tips

体が沈む理由にはさまざまあるが、力むことによって水面に対して水平姿勢がキープできていないということがあげられる。この場合は、プールなどで泳がなくてもいいので水の中で歩いたり遊んだりして水や水の感覚に慣れることで力みが取れていくはず。
例:バタ足ができない

フィンを使うことで推進力を得るため、素足でのバタ足で進むことができなくてもダイビングは楽しめる。フィンの使い方を練習すれば問題ない。

水泳Tips

膝から下の足先だけを動かして水を下に蹴るのでは推進力があまり生まれない。股関節からムチがしなるようなキックで足の甲で水を後ろに押すのが理想的。また、足首がまっすぐに伸びづらいときは少し足首を内側に入れると足首が伸びやすくなる。
例:泳ぎ続けられない

ダイビングはずっと泳ぎ続けるものではなく、止まって魚を観察したり、カメラで撮影をしたりするもの。インストラクターもゲストの泳ぐスピードに合わせてくれるので、置いていかれるのではないか?という心配をする必要はない。

水泳Tips

泳ぐと息が上がる場合は、どこかに力みがあるということ。全体的に体の力を抜いて、身体が浮きやすくするために水の抵抗を最小限にする流線型をイメージした姿勢(ストリームライン)を意識して掻いたり蹴ったりしてみよう。

息継ぎが苦手

例:息継ぎがうまくできない

レギュレータを使って一定のリズムで呼吸するので、いわゆる水泳の息継ぎがうまくできなくても大丈夫。ダイビング中は落ち着いて呼吸を続ければOK。

水泳Tips

息継ぎのたびに、体が沈んでしまう場合は、顔を上げすぎて、下半身が沈んでいることが多い。頭のてっぺんは水面につけたまま、体が水面と水平姿勢を保てるように、顔を横に向けるだけにしてみよう。
例:息が続かない

ダイビングでは常にタンクを使って呼吸するので、息が続かないことは問題にならない。深呼吸を意識して、リラックスすることがポイント。

水泳Tips

呼吸が苦しくなってくる場合は、息継ぎでしっかりと呼吸が吸えていない可能性がある。大事なのは、顔を水につけているときにじっくりしっかり吐くこと。そうすることで、息継ぎでしっかり吸うことができるようになるだろう。

ダイビングに必要な基本的なスキルとは?

上述した通り、極端に水への恐怖心がない限り、大抵の人はダイビングを楽しむことができるはずなのだ。ここでは、ダイビングを楽しむため必要な基本的なスキルについて詳しく説明する。最低限これらのスキルを身につけることで、より安全にダイビングを楽しむことができる。

呼吸管理

レギュレーターを使用して口呼吸を行う方法に慣れることが必要だ。私たちは普段、無意識に鼻呼吸をしているため口呼吸することがストレスになり、息苦しさを感じる原因になり得る。深呼吸をするイメージで、ゆっくりとリラックスして呼吸しよう。

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浮力調整

浮力を調整して、中層で浮く練習(撮影場所:OKマリンプロ)

浮力を調整して、中層で浮く練習(撮影場所:OKマリンプロ)

BCを使って浮力を調整し、水中での適切な姿勢を維持することが求められる。浮力調整がうまくできないと、不意に浮上してしまったり、底に近づきすぎて生物を傷つけてしまう可能性がある。

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フィンの動かし方

フラッターキック ※動画はフィンの比較用に撮影したもの

泳ぎが苦手な人でも、水中を進むためにはフィンの使い方をマスターすることが重要だ。フィンは足に装着し、水中での移動をサポートする道具で、正しい動かし方を学ぶことで、効率的に前進することができる。フィンキックの基本となるのは「フラッターキック」と呼ばれる動きだ。これは足をまっすぐに伸ばし、足首を柔らかく使いながら上下に動かす方法だ。大きな動きをする必要はなく、小刻みにキックすることで推進力を得られる。重要なのは膝を曲げすぎず、足全体を使って動かすことだ。

もう一つの基本的なキックは「フロッグキック」だ。これは足を開いて閉じる動きを繰り返す方法で、水中での安定性とコントロールが向上する。足をゆっくりと広げ、膝を軽く曲げてから一気に閉じることで前進する。この動きは特に狭い場所や精密な動きが求められる場面で有効だ。

フロッグキック

器材の操作方法

マスククリア

マスククリア(水が入ったマスクをクリアにする技術)やレギュレーターリカバリー(外れたレギュレーターを再び口に戻す技術)などの基本的な操作をスムーズに行えるようにすることで、水中での自信が増し、安心してダイビングを楽しむことができる。

レギュレーターリカバリー

緊急時の対処方法

ハンドシグナル

たとえば、エア切れが発生した際にはバディシステム(ペアで行う安全システム)を活用した緊急アセントの方法や、パニックになった際の冷静な対処方法などの知識を身につけておく必要がある。 また、水中でのコミュニケーション方法もダイビングには不可欠だ。ダイビング中は口で話すことができないため、ハンドシグナルを使用して意志の疎通を図る。これによって、異常が発生した時でも迅速かつ確実に対応することができる。

泳ぎが苦手でも不安を抱きすぎる必要はない

講習で自信をつけてから海へ

海に行く前にプールで講習(撮影場所:OKマリンプロ)

海に行く前にプールで講習(撮影場所:OKマリンプロ)

ダイビングを始める際に行うライセンス(Cカード)取得講習では、前述した基本的なスキルを丁寧に教えてくれる。講習中はインストラクターの指導のもとで少しずつ自信をつけていく。たとえばライセンス取得講習では、いきなり海に行くのではなく、プールや浅瀬での練習を行い、初心者が安心して基本的なスキルや装備の使い方を習得できるようにしている。少人数で行うダイビングショップや個別のフォローアップも行われるため、泳力に自信がない人でも安心して取り組むことができる。このような環境で基本的な技術を身につけることで、ダイビング中に余裕を持ちながら楽しめるようになるのだ。

ダイビングは1人で泳ぐわけではない

初めてのダイビングでは、インストラクターがそばで支えてくれる

初めてのダイビングでは、インストラクターがそばで支えてくれる


ライセンスが不要な体験ダイビングでは特に、常にインストラクターがついているため、初心者でも安心して楽しむことができる。インストラクターは水中での動きや安全確認をサポートし、トラブルが発生した場合には迅速に対応してくれる。これにより、全く泳げない人でも安心して美しい水中世界を満喫することが可能だ。 またダイビングは、バディシステムという安全対策が徹底されている。バディシステムとは、ダイビング中に必ずペアを組んで行動し、お互いの安全を確認し合う仕組みのことだ。このシステムにより、何かトラブルが発生した際にもパートナーがすぐにサポートできるようになっている。

泳力に応じた器材ラインナップも豊富

脚力や求める推進力に応じてさまざまなフィンの種類がある

脚力や求める推進力に応じてさまざまなフィンの種類がある



ダイビングに初挑戦する場合は、器材選びを少し意識することでより不安を軽減できる。特にフィンは脚力に頼らずに効率的に水中を移動するための重要な道具だ。初心者向けのフィンは、固すぎず柔らかすぎない適度なバランスが求められる。これにより、推進力を得やすく、水中での動きが楽になる。

シリコンの色が透明なものもあり、これだと視界が明るく視野も広いので安心感抜群

シリコンの色が透明なものもあり、これだと視界が明るく視野も広いので安心感抜群

マスクもまた非常に重要だ。顔にフィットし、水漏れが少ないものを選ぶことが大事だ。透明度の高いレンズや広い視界が確保できるマスクは、水中での視認性を高め、安心感を持って楽しむことができる。

水中には感動が待っている!

ダイビングの世界に飛び込むと、水中での経験は忘れられないものとなる。たとえ泳げない人であっても、その感動は何ら変わらない。初めてのダイビングでの驚きと喜びは、まさに言葉に尽くしがたいもの。青く広がる水中の世界には、美しいサンゴ礁やカラフルな魚たちが生息しており、それらに触れ合うことで、自然の偉大さを感じることができる。気軽にチャレンジして、新たな感動を体験してみよう!

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PROFILE
0歳~22歳まで水泳に没頭し、日本選手権入賞や国際大会出場。新卒で電子部品メーカー(広報室)に入社。同時にダイビングも始める。次第に海やダイビングに対しての想いが強くなりすぎたため、2021年にオーシャナに転職。ライターとして、全国各地の海へ取材に行く傍ら、フリーダイビングにゼロから挑戦。1年で日本代表となり世界選手権に出場。現在はスキンダイビングインストラクターとしてマリンアクティビティツアーやスキンダイビングレッスンを開催。
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