トゥルーノース・中川さん直伝、ドルフィンスイムのコツをつかんでイルカと泳ごう!

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ドルフィンスイム

©︎Takanawa Nana

海が好きな人であれば、一度は夢見るドルフィンスイム。水族館でもなく、ふれあい施設でもなく、野生のイルカと大海原を自由気ままに泳げたらどんなに幸せだろうか。そこで、本記事では日本国内で野生のイルカと泳ぐことのできる場所とそのコツについてまとめた。

ドルフィンスイムのノウハウに関しては、ドルフィントレーナー専門学校を卒業後、年間40以上のスイムツアーを開催するトゥルーノースの現役インストラクター・中川瑞希さんにお話をうかがった。中川さんは東京スポーツレクリエーション専門学校でスキンダイビングやドルフィンスイムの講師も勤めており、海に関心を持つ未来の子どもたちに夢を与えている。

本記事を読み終えた暁には、イルカと泳ぐために必要なスキルや準備物、そしてイルカの豆知識まで習得できるはず。ドルフィンスイムに挑戦しようと思っている人だけでなく、今よりももっとイルカと長く泳ぎたい人にもぜひご一読いただきたい。それでは早速、内容に本題に入っていこう。

日本国内でドルフィンスイムできる野生イルカの種類って?

ミナミバンドウイルカ

©︎Wakasugi Natsumi

まずは、日本国内で一緒に泳げるイルカの種類について触れていく。世界には約80〜90種類の鯨類が生息していると言われているが、日本国内では主に「ミナミバンドウイルカ」というイルカがドルフィンスイムの対象になる。彼らについて簡潔に説明するならば、水族館でお馴染みの「バンドウイルカ」をひと回り小さくして、お腹に斑点模様をつけたのがミナミバンドウイルカとなる。

国内で野生のイルカと泳げる場所ってどこ?

©︎草地ゆき

水族館のふれあい体験でイルカに触れたり、一緒の泳いだりすることは意外と難しくなかったりする。とはいえ、気の向くままに水中を遊泳する野生のイルカに憧れを抱く人も多いため、この章では「野生のイルカ」と泳げる場所をピックアップしてご紹介しよう。

360度イルカに囲まれた「御蔵島」

ドルフィンスイムと言えば「御蔵島(みくらじま)」だろう。島を囲むように約120頭以上のミナミバンドウイルカが定住していため、遭遇率も高い。また、御蔵島では、イルカ一頭一頭を見分ける個体識別がされており、名前が付いているイルカも多いため事前に予習をしていくのも面白いかも。

船で御蔵島へ行く方法も⁉︎

ドルフィンスイムができる御蔵島だが、この島には大型の船が着岸できる港が一つしかない。そのため、船が着岸できる海況の条件が揃う確率が他の島に比べて低いというのが難点だ。そのリスクを回避するため、御蔵島の一つ前に着岸する「三宅島」で下船し、現地でドルフィンスイムツアーに参加するといった方法もある。約1時間で御蔵島に到着するが、道中はかなり船が揺れるため酔い止めは必須。とはいえ、三宅島ではスキンダイビングだけでなくダイビングすることも可能なため、両方楽しみたい人にはおすすめだ。

日帰りでドルフィンスイムができる「利島」

「利島(としま)」に生息しているイルカの数は20頭ほど。御蔵島から引越ししてきたイルカがほとんどで、今では利島で生まれた子イルカも元気よく大海原で泳いでいるのも確認できている。頭数が少ない分、結束力がある群れは利島と利島の近くにある無人島を行き来しているため、島の周りを回遊している御蔵島と比べると遭遇率は多少落ちるが、それでもイルカに出会えた際には、満足できるドルフィンスイムができるだろう

24時間かかっても訪れたい「父島」

世界自然遺産に登録されている小笠原諸島。その中でも東京の竹芝から船が着岸できるのは「父島」のみ。この島を訪れるのに、24時間かかるというのにもかかわらず、毎年数多く観光客で賑わう人気の島だ。父島には「ミナミバンドウイルカ」とジャンプの得意な「ハシナガイルカ」の2種類のイルカが生息しているが、スイムが許可されているのは、これまでと同様に「ミナミバンドウイルカ」だけ。ボニンブルーの中で自由にイルカと泳ぐ気持ち良さは極上だろう。

トゥルーノース中川さん聞いた!イルカと泳ぐコツを伝授

東京都・浦安にショップを構えるダイビングショップ ・トゥルーノースでは年間40以上ものドルフィンスイムツアーを開催。そのため、引率スタッフは島のガイドもこなすほどレベルが高く、初心者から上級者まで幅広いゲストの指示を集めている。今回は、そんなドルフィンスイムツアー日本最多を誇るトゥルーノース現役スタッフの中川瑞樹さんに、ドルフィンスイムのコツを伝授していただいた。イルカと泳ぐ夢を叶える一歩として、是非参考にしていただきたい。

イルカと泳ぐためには、準備が大切!

イルカと泳ぐ前には、事前準備が大切とのこと。では、具体的にどんな準備が必要なのかについて伺った。

3点セットは必須

まずは、泳ぐための道具を用意することが必要不可欠とのこと。イルカと泳ぐ際には、フィン、マスク、スノーケルが必須になる。自分の体に合ったものであれば、より良いだろう。最近では、推進力が高く写真映えもするロングフィンが人気だが、水面移動で息が上がらない効率的なフィンキックができれば、自分にあった蹴りやすいフルフットタイプのフィンで十分。イルカを追いかけるというより、一緒に泳ぐことがメインなはずなので、まずは泳ぎやすさを優先しよう。

水平に泳げれば、深く潜れなくても大丈夫!

次に大事なのが必要最低限の泳力となる。とはいえ、深く潜るスキルよりも、まずは3mほどの水深を水平に長く泳ぐスキルを習得することが大切だという。潜る際に必要な3点セットの使用方法がわからないと水を飲んでしまう可能性も考えられるので、自分の泳ぎに不安が残ったまま、海に入るのは危険行為。イルカと一緒に泳ぐ夢を叶えられるチャンスがあるのなら、安全に楽しく過ごしていただきたいと中川さんは話す。

イルカの生態を知ってドルフィンスイムで活用しよう

少しだけで良いのでイルカの生態について知っておくと、ドルフィンスイムで活用できるためおすすめだ。

イルカの視力と死角について

基本的にイルカは視力が弱く、反響定位もしくはエコロケーションといわれる方法で周囲の情報を得ている。頭部から超音波を出し、跳ね返ってきた情報を下顎でキャッチするため、超音波が届かないイルカの背びれ付近や背後は彼らにとって死角となる。そのため、水中でイルカに近づく時はなるべくイルカの視野にゆっくり入っていくことが大切とのこと。人間もいきなり自分の視界の中に、予期せぬ情報が入ったら驚くはず。まずは、自分の存在をイルカにゆっくり認知してもらおう。

筆者を見るイルカと見ていないイルカ

イルカの気持ちを理解しよう

イルカは知能が高い動物で、コミュニケーション能力に優れている。イルカが近くにいる水中に入ると、必ず彼らの放つ超音波が聞こえてくるはずだ。一般的には「キューンキューン」や「ジージー」といった高い音が繰り返されているが、イルカたちが放つ超音波にはそれぞれ意図があるという。これらの音はイルカ同士でコミュニケーションを取る際や周囲の情報を察知するために用いられる。

しかし、イルカに近づきすぎたり、彼らにとって不快に感じる行動をしたりした場合は「カッカッカッ」といった音を慣らされる場合がある。この音はイルカにとっては威嚇を表す音の場合があるそう。イルカと泳ぐ際には、耳も敏感に働かせイルカの気持ちを汲み取ってあげることも忘れてはいけない。

また、イルカが口を大きく開ける行動を笑っていると間違った認識される人もいるが、一般的には威嚇行為に該当する。イルカに近づいた際、口を開けられ普段聞かないような音を聞いた場合は、速やかに距離をとってあげよう。イルカも人間と同様、パーソナルスペースは保って接してあげることが大前提だという。

ペースはイルカに合わせて

入水し、ゆっくりイルカの視界に入れたら、あとはイルカにリードしてもらおう。流行りのロングフィンは推進力が高いため、ついイルカを追いかけたくなってしまう。しかし、彼らの泳ぐ速度に人間がかなうはずもない。フィンキックして追いかけるのではなく、まずはイルカたちの目を見ることが大切。同じ哺乳類のイルカの目は吸い込まれるような感覚になり、彼らが興味を持てば少しだけ泳ぎを遅くし、私たちに合わせてくれる時もあるという。そんな時はたくさんのキックよりも体を使った泳ぎが大事とのこと。

ドルフィンスイムは協力プレイ

どうしても自分が一番長くイルカと泳ぎたいという気持ちが先行してしまいがちだが、ドルフィンスイムツアーに参加した際には、他のゲストと協力をした方が長くイルカと遊べるという。泳力レベルが明らかに違うイルカたちを一人で独占することは物理的に不可能。他のゲストと協力し順番で潜ることで、イルカを飽きさせないことが長く彼らと泳ぐコツだと中川さんは言う。ドルフィンスイムに参加した際には、船の上で他のゲストと作戦を練るのも良いかもしれない。

もっと長くイルカと泳ぎたい欲張りなあなたへ

©︎Takanawa Nana

イルカと今よりも長く水中で遊びたいと夢見る人には、フリーダイビングがおすすめ。今でこそ、だんだんと注目を集めている競技だが、今回お伝えしたいフリーダイビングの魅力は、高い潜水能力を身につけることではなく、「長く息を止められるようになるコツ」や「上手なフィンの使い方」など、イルカと泳ぐために欠かせないスキルを取得できることだ。それらのスキルが習得できれば、自然と水中を自由自在にイルカたちと泳ぐことができるようになる。頑張って水深3m潜れるのと水深5m潜れるようになってから、3m潜るのとは心への負担が違う。安全に海で遊ぶためにも正しい知識、自信の持てるスキルを習得して海を楽しんでほしいと中川さんは話す。

今回は日本国内で野生のイルカと泳げる場所やそドルフィンスイムのノウハウをまとめてご紹介した。泳ぐ前の準備、イルカの気持ち、そして実践できるスイムのコツなど参考になる点も多かったのではないだろうか。御蔵島のドルフィンスイムのシーズンは11月までなので、まだまだイルカと泳ぐチャンスはある。これから予定されている方や、いつかイルカと泳いでみたいと夢見ている方は、ぜひ参考にして自身の夢を叶えていただきたい。

中川瑞希さんプロフィール

海の無い長野県からイルカと泳ぐために上京。東京コミュニケーションアート専門学校のドルフィントレーナー専攻へ入るも海に住む野生のイルカに魅了され、卒業後はスキューバダイビングショップに務めながら、スキンダイビング、ドルフィンスイムを専門に行っているドルフィンスイムインストラクターとして活動。生き物を間近で見られるドルフィンスイムのツアーをはじめ、初めての方が海を安全に潜るための講習を担当。素潜りを通して生き物との距離感や、安全についてのスキルアップの講習を行い、生き物の魅力を伝えている。

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PROFILE
静岡県西伊豆町出身。

ドルフィントレーナー専門学校を卒業後、ダイビングインストラクターや操舵手といった海に関わる職歴を持つ。

現在は、ライターとして「地球に暮らす全ての生き物がHAPPYな未来を」と願い、記事を書く。
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