渡嘉敷フィルムフォト&ムービーフェスティバル(第4回)

渡嘉敷島の夏と夜のムービー公開。女優・藤本泉さんと制作者・武藤洋さんに聞いた2ヶ月にわたるロケの裏話

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沖縄の人気ダイビングエリア・慶良間諸島の写真と動画のコンテスト「渡嘉敷フィルムフォト&ムービーフェスティバル」を開催中の渡嘉敷フィルムから、渡嘉敷島の魅力を伝えるムービー「夏/Summer in TOKASHIKI」、「渡嘉敷の夜/NIGHT AT TOKASHIKI」が公開された。

「夏/Summer in TOKASHIKI」では、女優の藤本泉さんが白砂やサンゴが広がる渡嘉敷の海中を気持ち良さそうに泳ぐ姿と生き物たちのコラボレーションにワクワクする。「渡嘉敷の夜/NIGHT AT TOKASHIKI」には限られた日の夜にしか見られないサンゴの産卵の光景が収められ、まるで宇宙空間を藤本さんが漂っているような神秘的な映像となっている。その瞬間に初めて遭遇したという藤本さんの感動が観ている側にも伝わってくる作品だ。
本作品の撮影は今年の5月から約2ヶ月間かけて行われた。その間にどんなエピソードがあったのか、藤本さんと撮影・制作を行ったフィルムメーカーの武藤洋さんにお話を伺った。

渡嘉敷フィルムフォト&ムービーフェスティバルとは?

武藤洋×藤本泉の初タッグ
そのきっかけは?

渡嘉敷島は那覇から日帰りでも楽しめるほどアクセスが良い離島。少し都会から離れただけでまったく違った海の色や自然が楽しめる。さらに、渡嘉敷に宿泊することで体験できる満天の星や静かな夜はまた格別。そんな島の魅力を伝えるべく武藤さんは渡嘉敷フィルムを立ち上げ、フォト&ムービーコンテストの開催や映像の制作をしているという。

泉さんは今回初めて本格的に水中での撮影をされたと聞きましたが、どういう経緯だったんですか?

Instagramで泉さんを見つけて、自分からお願いしたんです。

まさかのインスタ。なぜ泉さんに依頼を?

3月に公開した渡嘉敷の環境保全ムービーはインスタグラマーのMAAKOさんをモデルに撮影したのですが、今回のムービーは違った雰囲気の方がいいなと思って探していたんですね。それでインスタを見ていたら泉さんを見つけたんです。泳ぐ姿がきれいで、環境について発信もしていて、ピンときました。ここまでドンピシャな人がいるとは思っていませんでした。

ただ、ドラマや映画に出演しているような女優さんですから、メイクさんもいない、自分たちの撮影の依頼を受けてくれるのか不安でした。正直賭けでした(笑)。

賭けに勝ったということですね。泉さんは、依頼を受けていかがでしたか?

私は個人的に小さい時から海が好きで、これから海や環境のことを発信するお仕事をしたいなと思っていたところに、今回のお話をいただいたので嬉しかったです。

環境や海について発信をしたいと思ったきっかけはどんなことだったんでしょうか?

12歳でジュニアスクーバダイバーのCカードを取るくらい小さい頃から海が好きだったので、海は楽しい、きれいということを伝えたいのが第一にあります。環境に関して言えば、ある年に石垣島に潜りに行き、ボロボロになって白化した“サンゴの墓場”のような光景を見たことがきっかけです。直前にそのすぐそばにある石西礁湖で美しいサンゴを見ていたので、そんな場所の近くにこういう景色があるんだと初めて知り、とてもショックを受けました。その時から、自分にできることがないかと考えるようになりました。私が今までやってきたのは役者として表に出て何かを伝えることだったので、私を媒介として、環境のことを知ってもらえたらと思い、その第一歩が今回の企画となったと思っています。

渡嘉敷の夏と夜
それぞれのテーマに込められた想い

なぜ夏と夜というテーマにしたのですか?

公開の順番と逆なのですが、先に構想ができたのは夜の方なんです。渡嘉敷に宿泊することを訴求したくて。そしたらやっぱりサンゴと星空が見どころだろうということで、それを全面に出そうと。夏の方は、シンプルに楽しさを訴求したいというところですね。渡嘉敷フィルムとしては、環境保全ムービーと、夜の神秘的な映像しかなかったので、単純に誰が見ても渡嘉敷島って楽しいんだなって思えるものをノリよく作りたかったんです。

シーカヤックなど陸上からの映像もありましたが、個人的には水中で泉さんが楽しそうに泳いでいる姿が印象的でした。

そうですね。渡嘉敷の水中は透明度が良くて、色が本当にきれいなんですよ。あの水の色に惚れています。泉さんにはとにかく遊んでとしかオファーしてないです(笑)。もちろん、こっちに泳いできてとかカメラ目線ちょうだいとかはありますが、泉さんはゆっくり動いたり加速したり、自由自在にできるんですよ。魚を見て、反対側に興味があるものを見つけたら回り込んでまた見る。

確かに楽しんでいるだけかもしれないなと思いました。自然の撮影って、魚が急に泳いでくるとか、ウミガメがこっち向かってくるとか、自分の動きだけではコントロールできないじゃないですか。なので、自然に任せるしかないというのもあるかもしれません。

多分、泉さんの個性というか、海との接し方が確立されているのかなと思います。たとえば、「にっこり笑って太陽を背にして上がってください」とか指示したらやってくれると思うし、思ったものにはなると思います。でも思った以上にはならないと思うんですね。泉さんは “遊ぶ”というのを見事にやってくれたと思っています。

撮影時にたまたま現れた深海魚・サケガシラと

撮影時にたまたま現れた深海魚・サケガシラと

それから、それが許される環境だったのが僕にとってはラッキーでした。滞在を延ばしてもらったり、ガイドさんなど協力してくれている方々が、環境がいい時を待ちましょうって言ってくれたり。ガイドさんも撮影にいい場所を探してきてくれたし。とても助かりました。

そうだったんですね。夜の方はいかがでしょうか?先ほどおっしゃっていたとおり、サンゴと星空。特にサンゴは夜しか見られない産卵を惜しみなく映像に使われていますね。

渡嘉敷の夜であれば、ナイトライフよりもこっちだろうと思い、サンゴと星にフォーカスしました。ただ、ここ数年でサンゴの産卵はキー局のニュースでも放映されていて、それ自体は目新しくなく、どう表現するかに悩みました。ワイドであれマクロであれ、産卵自体の作品はよく目にしますよね。それで何を撮りたいのかをよくよく考えてみたら、自分としては、サンゴにいる人を撮りたいなと。サンゴと、バンドル(※)に埋もれる人。

※バンドル:一般的に“サンゴの産卵”と呼ばれているが、実際は卵と精子が入ったカプセルのようなバンドルをサンゴは放出しており、それが水面で弾けて別の個体同士の卵と精子が受精する。

泉さんはカメラを持っているのに撮影もせず、ただバンドルの動きに身を任せているのがとても印象的でした。

これ実は何も打ち合わせしてないんです。泉さんはフォト派ダイバーではなく、ロケ全体を通してとにかく海を楽しむのに全力だったので、この撮影時もその自然な姿を映しただけです。

実際に生命が生まれた瞬間に出会えて、とても感動しました。まさか時期を狙えばサンゴの産卵が見られるなんて、思ってもみなかったです。今、環境のことを考えるうえでまず名前があがる生き物だし、この動画を見た人が環境を考えるきっかけにもなったらいいなと思いました。とにかく何よりもきれいですし、すごくいい映像だなと客観的にも思います。

ムービーをよく見たら泉さんがものすごく目を見開いていて、感動というか、緊張感というか、その場の空気がとても伝わってきました。撮影はいつ頃されたんですか?

5月の末だったかな。ビーチエントリーで10mくらい進むとすぐに深場になるポイントがあって、そこで撮影しました。行くのは楽だったのですが寒かったですね。今年の梅雨は雨がずっと降っていたせいで水温が全然上がらなかったんです。そのせいか、なかなか産卵もしなくて。地元のガイドさんたちはプロなので、産卵しそうな日に当たりをつけてパトロールしてくれていたのですが、それでも一週間か十日くらいは毎晩ナイトダイビングしていました。

満月とか潮位とか、いろんなものをみて皆さん予想を立ててくれるのですが、自然相手なので行ってみないとわからない。でも、その数日があったからこその感動は確実にありました。と言いながら、毎日昼と違う景色が見られて、ナイトダイビングに行くだけでも楽しかったです(笑)。ミステリーツアーみたいでした。

ナイトダイビング楽しかったですね。生き物がいろいろなところで寝ていました。

楽しそうですね。産卵は何日見られたんですか?

一日です。本当はその翌日に海から生臭い匂いがしていたから、翌日の方が産卵していたと思うんだけど、海況が悪くて潜れなくて。でもやっぱりおもしろいなと思ったのが、水温との関係ですね。産卵前にナイトダイビングを毎日していた時、水温が23℃くらいだったんですが、産卵の日に海から上がって水温を見返してみたら24℃だったんです。今まで石垣島などでサンゴの産卵を撮影してきて、自分の経験値として水温23℃では産まないと思っていたので、やっぱりそうなのかなというか。でも、24℃だとちょっとまだ低いのか、心なしかバンドルが浮上するのがゆっくりだった気がします。

そうだったんですね!おもしろい‼︎

一斉産卵でなくてもすごい量でしたね。まるで泉さんが宇宙空間を漂っているようでした。

すごかったです。当日は寒いから水面で待っていたんですけど、ガイドさんに呼ばれて見に行ったらもう辺り一面ピンクなんですよ。さっきまでただの暗い海だったのに、ちょっと顔をつけたらそこはもう宇宙みたいな。おもしろかった。皆さん、絶対見たほうがいいです。

最後に星空の映像につながったのも印象的でした。

星も本当にきれいです。撮影の日じゃなくても、日が沈んで遅い時間にみんなでビーチに行って、寝転んで星を見たりしましたね。流れ星もたくさん見られました。

星は本当にきれいな島だから撮影しやすいですよ。この映像はGoProを一晩中外において撮影したもの。盗まれる心配などないのどかな島なので、外に置いていても安心でした(笑)。

図らずも約2ヶ月のロケに
スキンダイビングスキルを磨き、島に溶け込んだ藤本さん

今回泉さんは結構長期で渡嘉敷に滞在されたと伺いましたが。

2ヶ月弱、渡嘉敷で過ごしました。

本当は5月のゴールデンウィーク明けに10日間くらいで撮影しようと思っていたんですが、今年の梅雨は雨続きでほとんど太陽が出なかったんです。天気の良い日を待ちつつ、僕自身も東京の仕事があり行ったり来たりしているうちに、結局2ヶ月ほど泉さんに滞在してもらうことになってしまいました。本当にすみません…。

いえいえ、むしろラッキーでした。

本当にありがたかったんですけど、泉さんの泳ぎ手としての完成度がすごい勢いでレベルアップしたですよ。撮影に行くたびにすごくうまくなっていくので、だんだん無茶が言いやすくなっていきました(笑)。何もないところから彼女がブワーって泳いできて通り過ぎるっていう姿を撮影したくてお願いしたら、すごいダッシュで泳いできてくれて。

「夏」の最初のシーンですよね。すごい速いですよね。

そうそう。早回しにしたらもちろん簡単なんだけど、そうすると波のゆらめきとかも不自然になっちゃうから、ここは気合を入れてダッシュできてくださいってしれっとお願いしてみたんです。一見簡単そうに見えるけど、実際は肩とかも揺れてしまうし難しいんですよ。ところが泉さんはすごい安定した泳ぎで、魚雷のような勢いでビューンってきてくれて驚きました。

あのシーンを撮影した日は、陽の光がとてもきれいだったんですね。本当にお天気の良い日が少なかったので、今日ここで決めないとという緊張感ある中で撮ったカットだったので印象に残っています。カメラ位置もあまりよく見えない位置からスタートして、とにかく全速力で泳ぎました。

実際に2ヶ月でスキンダイビングが上達したなと自分でも思いますか?

思います。スキューバダイビングって冬の間でも皆さんされますけど、スキンダイビングって軽装備だから私は暖かい季節しかやらないんですね。だから撮影の時期は結構久しぶりで、ちょっと心配していたんですが、2ヶ月いたことで、すごいみっちり教えてもらえたんですよ。「月の翼」というダイビングショップのインストラクターのカズさんがとてもスキンダイビングが上手な方だったので、水中での見られ方や見せ方、安全を考慮した息の止め方、ウエイトコントロールなど、きちんと教えてくださいました。できることが増えましたし、撮影で求められることに応えられるようになったという感覚があります。

月の翼さんだけでなく、泉さんはいろんなショップを利用して潜ってくれたので、泉さんが地元の方と交流を深めて「島で育ちました」みたいな雰囲気になっていたのもすごく良かったです。

皆さんとてもフレンドリーでした。ガイドさんによって連れていってくれる場所もさまざまですし。マクロフォト派のお客さんばっかりのショップさんもあれば、景色やきれいな光を見せてくれるショップさん、生き物を見せてくれるショップさんとかいろいろで。お客さんの装備とか好みもそれぞれで、すごい大きい高そうなカメラ機材を持ってくる人もいればご夫婦でゆるりと楽しんでいる方もいて、ダイビングの楽しみ方って本当にいろいろあるんだなって思いましたね。

それだけいろんな楽しみ方ができるのも、渡嘉敷の魅力ですね。

最後に、お二人から読者の皆さんにメッセージをいただけますか?

まずは映像を見ていただければと思っています。僕はこの道一筋で勉強してきたという人間ではありませんし、ムービーに正解はありませんから、楽しいところを思ったように切り取って表現できたら良いと思っています。フォトコンテストへの応募を考えている方は、ぜひ参考にしていただければと思います。

渡嘉敷に来ていただきたいなと思います。ビーチもきれいだし町も落ち着くところです。10年前にも一人旅で訪れたことがありましたが、今回初めて水中映像の撮影をやらせていただいて、長期滞在もして、豊かな時間がある島だと改めて感じました。一人旅してみたいなとか、どこ潜ろうかなと思ったら渡嘉敷島を訪れてみてください。そして、フォトコンテストにもぜひ応募してくださいね。

たぶん泉さんは渡嘉敷島をものすごく満喫していたと思います。撮影がひと段落ついて、休んでてねって言ってもビーチで泳いでました(笑)。

たしかに、撮影がない日もビーチで散歩していたのに、気付いたら海に入っているなんてこともありましたね(笑)。

(笑)。ゆったり、自然体で海を楽しめる島なんじゃないかなと思いました。次は私も滞在したいと思います。お二人とも、ありがとうございました。

お二人が審査員を務めるコンテスト「渡嘉敷フィルムフォト&ムービーフェスティバル」はまだまだ作品募集中!渡嘉敷をはじめ、慶良間で撮影した“楽しい”を自分なりに表現して、応募してみよう。

応募方法

応募にはInstagramを使用。下記の手順で手軽に応募できる。
1.Instagramで@tokashikifilmをフォロー
2,ご自身のアカウントに「投稿」もしくは「リール」から応募作品をアップロード
3.キャプションに「作品タイトル」、「撮影地」、「応募賞と部門」を記入
4.「#tokashikifilm」、「#渡嘉敷フィルムフェス」の2つをタグ付けして投稿

渡嘉敷フィルムフォト&ムービーコンテスト概要

・応募期間:2022年5月1日〜2022年10月15日24時
・対象:日本国内に住所をお持ちの全ての方
・使用機材:不問
・撮影地:慶良間諸島
・応募写真:ご自身か撮影し著作を有している写真
※スキンダイビング賞に関しては、ご自分が写っている写真の応募も可能。ただし、その場合カメラマンの名前を明記、またはメンション必須
・応募ムービー:ムービーの長さは60秒以上90秒以下。音源は使用許諾を得たものを使用すること
・応募点数:何点でも応募可能。ただし、1投稿に複数点の投稿があった場合「組み写真」として審査
・応募方法:Instagram
・賞:
水中マクロ賞(一般部門/島⺠部門)
水中ワイド賞 (一般部門/島⺠部門)
スキンダイビング賞(一般部門/島⺠部門)
環境賞 (一般部門/島⺠部門)
ムービー賞(一般部門/島⺠部門)
ビーチ賞(一般部門/島⺠部門)
渡嘉敷子供賞(島⺠部門のみ)
Fisheye 賞(部門設定なし)
RGBlue 賞(部門設定なし)
渡嘉敷村⻑賞(部門設定なし)
全10賞16部門
・審査方法:
各部門の担当審査員がお気に入りの 10 点をセレクト、ショートリストを作成。その後審査員が審査会議で各賞のベストを合議制で決定 (渡嘉敷村⻑賞、クライアント賞を除く) 。一部始終は後日「渡嘉敷フィルム YouTube Ch.」で公開予定。
・オンライン授賞式:2022年10月22日渡嘉敷フィルムYouTube Ch.にて発表 時間未定。

詳細はこちら
▶︎渡嘉敷フィルムフォト&ムービーフェスティバル公式サイト

Sponsored by 渡嘉敷フィルム
渡嘉敷村観光協会からスピンオフした映像プロジェクト。写真やムービーのコンテスト、水中カメラマンやインスタグラマー、フィルムメーカーなどプロフェッショナルを講師に迎え、セミナー開催などさまざまなイベントを企画運営を行う。ホームページでは来島者やこの島に住む人々の写真やムービーをまとめて閲覧できるよう準備中。
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PROFILE
IT企業でSaaS営業、導入コンサル、マーケティングのキャリアを積む。その一方、趣味だったダイビングの楽しみ方を広げる仕組みが作れないかと、オーシャナに自己PR文を送り付けたところ、現社長と当時の編集長からお声がけいただき、2018年に異業種から華麗に転職。
営業として全国を飛び回り、現在は自身で執筆も行う。2020年6月より地域おこし企業人として沖縄県・恩納村役場へ駐在。環境に優しいダイビングの国際基準「Green Fins」の導入推進を担当している。休みの日もスキューバダイビングやスキンダイビングに時間を費やす海狂い。
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