シーズン到来!串本と伊豆にドラマチックなアオリイカの産卵を見に行こう!
毎年、5月から6月にかけてが産卵期を迎えるアオリイカ。アオリイカには、卵が外敵に襲われないよう、岩の陰や海藻に卵を産み付ける習性がある。しかし、近年はアオリイカの産卵場所である海藻が減ってきているため、アオリイカの個体数が減らないように、雑木を束ねてつくった産卵床をダイバーが設置している。人気のダイビングスポットである和歌山県の串本と静岡県の伊豆は、この産卵床が設置され、ビギナーダイバーでも産卵シーンが見ることができる場所となっている。
実はこの産卵シーン。メスをめぐるオス同士のケンカや、オスがメスにアプローチをする様子、ケンカやアプローチの際に瞬時に体色を変える様子など、エキサイティングかつドラマティックなシーンが、ダイバーお構いなしに繰り広げられる一大イベントにもなっているのだ。今回は、その串本と富戸の今年の産卵床の様子と、見どころをご紹介したいと思う。
串本の産卵床の様子
関西のダイバーに人気のある串本。ここでの産卵床設置の歴史は長く、18年前から毎年の恒例行事として産卵床を設置している。今年は串本ダイビング事業組合のガイド11名を中心に4月12日、約2mの雑木をボート2隻分用意。串本海中公園沖100mほどにある「イスズミ」と潮岬沖200m程にある「備前」、そして「グラスワールド」と呼ばれる水深約15〜18mのダイビングポイントの3か所に設置された。産卵は5月から6月中旬までがピークとのことで、今まさに産卵シーズン真っ盛り!
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ボートいっぱいに積まれた雑木(写真:串本ダイビング事業組合)
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数人掛りでボートから下す(写真:串本ダイビング事業組合)
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10〜15本ほど束ねられた雑木をロープで土のうに固定させた(写真:串本ダイビング事業組合)
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ダイバーに見守られながら産卵をするアオリイカ(写真:マリンステージ串本店・谷口勝政氏)
伊豆の産卵床の様子
伊豆の東側に位置する富戸では、「ヨコバマ」というダイビングポイントの水深13〜16mの砂地に4月4日に産卵床が設置された。設置場所に関して、現地ガイド曰く、根から近いとダイバーは行きやすいが、アオリイカを狙うウツボなどの天敵も多くなる。とはいえ、根から遠いとダイバーも行きづらいし、沖からの冷たい潮の影響受けやすいのかもしれないとのこと。そのため、毎年設置場所を少し変えて様子を見ているのだとか。
ちなみに、アオリイカは、個体ごとに微妙に産卵時期をずらして、年に10回ほど産卵するという。なぜ産卵時期をずらすかというと、台風などでの全滅を避けているとの説もあるんだとか。産卵は、串本と同じく今がベストシーズン。
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ヨコバマに設置された産卵床(写真:城ヶ崎インディーズ・矢北拓也氏)
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パートナーを探すメスとオス(写真:城ヶ崎インディーズ・矢北拓也氏)
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カップルになったと思われるアオリイカが産卵場所を探す(写真:城ヶ崎インディーズ・矢北拓也氏)
最後に、アオリイカの生命の営みがより興味深く観察できる、最低限これだけは押さえておきたいという、アオリイカの知識を串本ダイビング事業組合の谷口さんから教えていただいたのでご紹介したい。
1. オス・メスの見分け方
メスをめぐるオスの戦いやカップル成立の瞬間を見たい方は、オスとメスの区別をできるようにしておこう。背中の模様が、横縞だったらオス、ドット柄だったらメス。また、オスはメスよりも体のサイズが大きいのも特徴であることを覚えておきたい。
2. オス同士のケンカ
メスとオスの見分け方がわかったら、次はオス同士のケンカ理由やケンカ方法も押さえておこう。ケンカ理由としては、メスに対してオスの数が多い場合や、ナンパをするオスがいる場合が多いこと。その方法は、互いに触腕を広げながら上下に重なり合ったり、時には絡み合ったりしながら、体色を変化させ威嚇することもあるそう。
3. 産卵の仕方
見事結ばれたアオリイカのカップルによる産卵は、オスがメスを産卵床までエスコートし、オスの真下でメスが卵を産むというロマンティックなもの。だがしかし、残念なことに肝心な産卵の瞬間は木の影に隠れてよく見えないのだとか…(笑)。
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(写真:城ヶ崎インディーズ・矢北拓也氏)
今の時期、串本や伊豆へダイビングに行くならガイドにアオリイカの産卵をリクエストしてみよう!また、産卵シーズンが終わっても、初夏から秋にかけては卵からアオリイカの赤ちゃんが孵化するハッチアウトシーズンがやってくる。ぜひ、新たな生命誕生の瞬間を観察しに行ってみては?