「ザトウクジラと泳ぐツアー in コーラルベイ」、その全貌とは?
西オーストラリア州の北に位置する、人口200人ほどしかいない小さな町、コーラルベイ。
世界遺産に登録されているニンガルーリーフの海岸沿いに位置するこの町で、ザトウクジラと一緒に泳ぐツアーに参加して来ました!
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毎年7月から10月にかけて3万匹にものぼるザトウクジラが子供を育てるために、ここニンガルーリーフにやって来ます。
19世紀から20世紀にかけてオーストラリアで活発に行われた捕鯨によって、3〜5%までその数が減ってしまったザトウクジラ。
しかし、1963年に商業用の捕鯨が禁止されてから、オーストラリアではその数が捕鯨前まで戻りつつあります。
そんな歴史もあってか、2016年から試験的に始まった、「ザトウクジラと泳ぐツアー」には厳しい規則が定められています。
そのルールの一つは、ザトウクジラにストレスを与えないため、ボートも人もザトウクジラには100メートルよりも近くには寄ってはいけないというもの。
また、スキューバダイビングも禁止されています。
さて、コーラルベイでしっかりとクジラの保全も行われていることがわかったところで、今回参加したCoral Bay Ecotours のツアーレポートをお届けします!
朝7時半にまずはショップにて集合。
ここでシュノーケルセットやフィン、ウエットスーツを選んでから早速バスに乗り込み、近くの船着き場まで向かいます。
船に乗って船員から簡単なアナウンスがあった後、まずは最初のシュノーケリングスポットでマスクやシュノーケルに慣れるため軽く泳ぎます。
大きなサンゴの近くをサメが優雅に泳いでいたり、魚の群れにも遭遇。
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体も水に慣れたところで、今回のツアーの目玉、ザトウクジラの捜索が始まりました!
ザトウクジラは水面でジャンプするブリーチングを行ったり、潮を吹いたりするので比較的素人目でも探しやすい動物です。
クルーも客も総出で探す事30分。
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ここ数日はアンラッキーなことにザトウクジラを見つけられなかったという話もキャプテンから聞いていたので、ボート内には不穏な空気が流れます。
上空からも、ツアー会社と契約を結んでいるザトウクジラやジンベイザメを探す専用の飛行機(スポッタープレイン)で必死の捜索が続けられました。
みんなが少し諦めかけていたその時に、”Whale shark! Whale shark!”と客の一人が海を指さしました!
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客によって発見されたザトウクジラを目指してボートは高速でその方角へ向かいます。
その間に私たち客は3つにグループ分けされます。
というのも、またここでルールが発動。
まとめて海の中に入れるのは10人1グループまでと決まっています。
私はAグループに割り当てられたので、全ての装備をつけて、いつでも海にエントリーできるよう待機させられます。
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一度海に入ると、無線機を持ったクルーが絶えず上空に飛ぶスポッターと連絡を取り合いながら、ザトウクジラの正確な位置までグループを誘導して行きます。
ザトウクジラの進む方向に先回りして、彼らが泳ぎ去るのを水面から見るのです。
これもニンガルーリーフの規定で、クジラがいる時には水中に潜ることができません。
「あと少しでザトウクジラがくるよ!」
「顔を水面につけて、注意してみて!」とクルーが全員に叫びます。
次の瞬間、ザトウクジラの親子が水面からほんの2メートルほどのところに現れました。
ボートの上から彼らの背びれや尾びれは見えていましたが、同じ空間を水中で過ごすのは全く違う感覚でした。
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少し濁った海の中で、なんとも言えない幻想的な雰囲気に包まれ優雅に泳ぎ去っていく親子。
そのあとも何度も違う親子やペアがボートの真横に突然現れたり、ブリーチングをしたりとまるでショーのように楽しませてくれました。
そして船上で食べるお昼のメニューは、ハンバーガー。
ビーガンである事を事前に伝えていた私にはビーガン用のパテを使った美味しいバーガーをちゃんと用意してくれていました!
さすが、オーストラリア。ビーガン食に対しての対応も完璧です。
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ザトウクジラが何度も近くまで遊びに来てくれて大満足!なツアーでしたが、最後にまたまたスペシャルゲストに遭遇しました。
魚の中で一番大きな脳を持っていると言われているある動物ですが、一体何でしょう?
答えは、、、
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マンタです!
エリーと呼ばれているこのマンタは大変賢く、人にも慣れています。
海洋生物の研究が進んでいるここニンガルーリーフでは多くの哺乳類の個体が識別され、名前もつけられています。
泳ぐのがとっても早いエリー。
私と水中カメラマン以外の方はその泳ぎについて来れず、ラッキーなことに多くの時間をエリーと2人で過ごせました。
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10時間にも及ぶツアーもようやく終盤を迎え、最後にはスパークリングワインが全員に配られ、無事港に戻ってきました。
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オーストラリアで初めて参加したツアーはザトウクジラの保全を行いながらも、内容盛りだくさんで大変満足のいくものでした。
私の住むここオーストラリアには今まさに夏が到来したので、これからまた違うツアーに参加するのが楽しみです!
Text:Kanae Hasegawa