粟国島ダイビングは大物好きなら吐いてでも行け〜ギンガメアジの婚活パーティ〜

私は船酔いダイバーだ。近場やあまり揺れていなければ大丈夫だが、そうでない場合、特に取材の時は基本的に酔い止め薬を飲んで対策をしている。しかし少しでも薬を飲むタイミングを見誤ると最後、地獄と化す。船で片道30時間のソコロクルーズの帰りに船酔いを起こし、30時間近く船室のベッドの上からまったく動けなくなってしまったこともある。

今回は水中写真家の清水淳さんの渡名喜島〜粟国島の2日間にわたるクルーズツアーに参加させていただいたのだが、2日目の粟国島では、ソコロクルーズに次ぐほどの船酔いに見舞われた。粟国島といえば回遊魚がバンバン現れるポイント。つまり潮通しが良く流れが速いこともしばしば。そりゃ船も揺れるし波も激しいよね。と、覚悟をしていたものの、想像以上の船酔い。

1本目終了後のスイカ。ウエイトとフィンを外す余裕もない。

1本目終了後のスイカ。ウエイトとフィンを外す余裕もない。

毎度のことながら船酔いは本当に辛くて、そのたびに二度とダイビングはしないと思うのだが、また潜ってしまうのはなぜなのか。それはやはりその辛さを超える体験をそこでしてしまうからであろう。

粟国島もすごかった。初めて潜ったのだが、他の方のレポートやSNSで流れてくる情報のとおり、いやそれ以上だった。今回はひどい船酔いを吹き飛ばすほどの粟国島での出会いをレポートしていきたい。

カマスの大群を狙うロウニンアジ

潜ったのは毎年4~7月にかけてギンガメアジの群れをはじめとする大物が出るといわれる「筆ん崎」。ポイントに到着し、エントリーの時間まで船の上まで待つ。粟国島のダイビングにおいては、このポイントを守り、価値を高めていくために、島のダイビングショップと那覇から遠征するショップの間でルールが定められており、後者はエントリー・エキジットの時間や場所が決まっているのだ。

粟国島ダイビング

私たちが1本目にエントリーした時刻は午前6時50分。日が昇るか昇らないかの薄明るい空を眺めているとガイドの小山学さんからエントリーの合図が。流されてはぐれてしまわないように、前の人と間を開けずにエントリーをしていく。その瞬間、足元に大きな塊が蠢いているのが見えた。カマスの群れだ。そしてそこに突っ込むロウニンアジ。

粟国島ダイビング

一気に水深20m近くまで潜降し、カマスの群れがロウニンアジの動きに合わせて散っていく様子を目の前に、ひたすら流れに逆らい泳いでいった。カマスも逃げるのに必死なのか、私を大きく避けることなくビュンビュンと横切っていく。

粟国島ダイビング

ギンガメアジが川から城へ

カマスとロウニンアジの攻防に目を奪われ他のダイバーに遅れをとってしまったが、ふと横を見ると後ろの方からギンガメアジが川のように連なっている。そしてその少し先の根のあたりで何人かが止まって上を見上げている。

粟国島ダイビング

ギンガメアジの川に沿って泳いでいくと、水深10mあたりに大きな群れが形成されていた。ちょうど根に隠れると潮の当たりも防ぐことができ、ゆっくりと群れを観察することができた。ここまでで驚いたのが、エントリーしてたった10分程度しか経っていなかったこと。こんなに短時間で、こんなに盛りだくさんでいいのであろうか。

自撮りの余裕も(無表情だけど興奮してます)

自撮りの余裕も(無表情だけど興奮してます)

しばらく見ていると群れは少しずつ離散していった。しかし一息つく間もなく、今度は根の反対側へ向かうダイバーたち。バラクーダフィンを履いたダイバーに負けじとミューフィンでついて行くとさらに大きな群れが現れた。

粟国島ダイビング

ぐるぐると流れに逆らいながら群れをなすギンガメアジ。私も流れに慣れてだんだんと余裕が出てきたのか、下からギンガメアジの群れとダイバーを、空に浮く城「ラ●ュタ」と人が出会った瞬間って、きっとこんな感じかなと勝手に考えながら眺めていた。

ラピュ●(ギンガメアジ)と邂逅

ラピュ●(ギンガメアジ)と邂逅

約30分にわたり、ギンガメアジやカマスとの邂逅を楽しみ浮上。夢のような時間は終わり水面で波に揺られ船が来るのを待つ。船酔いというより波酔いだろう、エキジット後はフィンを脱ぐ余裕もなく倒れ込み吐く。酔いと目に焼きついたギンガメアジ群れが頭の中をぐるぐる回りもはや気持ち良いとさえ感じる。

船酔い

実はギンガメアジの婚活パーティが行われている?

そして2本目、エントリー前にまた吐いてスッキリしてからのダイビング。2本目で私が狙っていたのはペアではぐれて泳ぐギンガメアジだ。群れをよく見ると黒い個体が紛れているのがわかるだろうか。

粟国島ダイビング

小山さんによると、黒い婚姻色を出しているのがオスで、この群れの中でペアになれるメスを探しているのではないかとのこと。確かに、たまに黒い個体が何匹かを追い回しているのを見かけた。そしてペアとなった2匹は群れから離れて泳いでいると。ということは、ここは婚活パーティ会場で、マッチングした2匹は会場を抜けてデートしているっていうわけだ。

ギンガメアジ

このペアをひたすら見つけ、「いいですね〜!」とニヤニヤしながら潜っていた。過去に婚活パーティの司会の仕事をしたことがある私。その頃を思い出しながらお互いのどんなところがマッチしたポイントなのかなと想像して楽しませていただいた。そうしているうちにあっという間に40分経ってエキジット。大きな群れに出会うことはなかったが、安全停止中にロウニンアジが私たちの周りを回遊し、最後の最後にまた興奮してダイビングを終えた。

大物好きなら吐いてでも行け、とタイトルに入れさせていただいたが、粟国島ステイであればもう少し楽なのだろうか。それともポイントは同じなので変わらないのだろうか。とはいえ一本でこれだけの興奮を味わえた粟国島「筆ん崎」。二本目は群れに出会えなかったものの、そのギャンブル性もダイバーを夢中にさせる一つの理由だろう。次回は早めに酔い止めを飲んで、より快適に粟国島を楽しみたいと思う。

取材協力:マリーンプロダクト

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PROFILE
IT企業でSaaS営業、導入コンサル、マーケティングのキャリアを積む。その一方、趣味だったダイビングの楽しみ方を広げる仕組みが作れないかと、オーシャナに自己PR文を送り付けたところ、現社長と当時の編集長からお声がけいただき、2018年に異業種から華麗に転職。
営業として全国を飛び回り、現在は自身で執筆も行う。2020年6月より地域おこし企業人として沖縄県・恩納村役場へ駐在。環境に優しいダイビングの国際基準「Green Fins」の導入推進を担当している。休みの日もスキューバダイビングやスキンダイビングに時間を費やす海狂い。
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