2017年夏・ダイビング事故まとめ ~11件の事故から考える、安全に潜るための意識〜
2017年夏のダイビング死亡事故
1カ月間で8件
毎年、水難事故が増える夏のシーズン。
ダイビングも例外ではなく、残念ながら、今年(2017年)も死亡事故が続いています。
「潜水救急ネットワーク沖縄」の協力により得た事故情報をまとめると、7月末から8月31日現在に報道されているダイビング事故は11件。
当然、報道されたものに限っているので、死亡や重大事故に限られますが、死亡8件、重体1件、不明1件、無事1件という内訳です。
気になるのが、事故者の年齢。
60代が4人、70代が2人と、60歳以上が10人中6人。
死亡事故に限っては、8人中4人が60歳以上です。
まず、この期間にダイビングをした総数や年齢分布などの母数データもなく、個々の事故を精査しているわけではないので、すぐに年齢と関連づけるのは早計だということはお断りしておきます。
しかし、感触ではありますが、ダイバー全体数の中で、60歳以上のダイバーはボリュームゾーンではないと思われるので、やはり、高齢者の方や普段、あまり運動をしていない方は、より慎重に準備をして潜ることをおすすめします。
ダイビングは、ハイキングではなく
せめてトレッキングくらいの意識で!?
今回の個々の事故とは直接関係はないですが、一般論として、まずは、ダイビングは、アクティビティやレクリエーション(レジャー)ではなく、スポーツだと思って準備することをおすすめします。
陸のスポーツや山登りであれば何となくリスクや必要な体力がイメージしやすいですが、興味はあってもダイビングは未知の世界。本来であればより慎重であるべきですが、そこに「手軽だよ」「散歩だよ」という間違ったアナウンスが入るので準備不足のまま潜るという状況が生まれることも。
よく準備体操やストレッチすらしないで、いきなり潜る人を見かけます。勝手知ったる海ならさておき、散歩の延長で潜る意識は、少し“気軽”過ぎるのではないでしょうか。多くの場合は、イントラやガイドが個々の技量に合わせて、準備運動のような1本目にアレンジしていますが、そんなイントラばかりではありません。
また、ダイビングに興味を持っている人に、「ダイビングを始めたいのですが、私にもできるかな? 大変?」といったことを聞かれることがありますが、「ハイキングというより、せめてトレッキングを始めるくらいのイメージは持っていた方がいいですよ」と伝えたりしています。
実際、ちょっぴりおデブで普段あまり運動をしていない僕の母みどり(63歳)がハイキングをしたいと言っても止めませんが、トレッキングをしたいと言ったら「もうちょい痩せた方が……」「まずは歩いてから」と言うでしょう。
自分の場合、いろいろ情報が入り過ぎて頭でっかちになっている部分もありますが、母みどりが「ダイビングをやりたい」と言い出したら、「とりあえず落ち着こう」と、いったん全力で止めます。その後、健康診断に行かせて、しばらくは、自分がバディでない限り絶対に潜らせないと思います。
またそれなりの経験のあるダイバーでも、登山の装備が必要なのにトレッキングの装備で潜っている、なんてこともありますので、レベルや経験にかかわらず、安全マージンを考慮し、いつでも慎重に潜るように心がけたいですね。
逆にいえば、しっかり準備さえできれば、そこで初めて、ダイビングは手軽で散歩のような遊びにもなることでしょう。
※最後に、もう一度、言っておきますが、今回の事故者が慎重に潜っていなかったということではありません。慎重に潜っていても、事故は起きる時は起きます。ただ、事故が続く中で、ダイバーが潜りに行く際、あるいは、家族がダイビングを始める際に、きちんと準備をする意識を持ち、事故防止につながれば幸いです。
2017年夏のダイビング事故まとめ
7月29日/沖縄県宮古島市伊良部島沖/65歳男性
29日午前10時30分ごろ、伊良部島の白鳥崎西側約1300㍍の海域で、静岡県からダイビングに来ていた男性(65)=が、海中で意識不明の状態になった。男性は心肺停止状態で宮古病院に搬送されたが、同日午前11時46分、死亡が確認された。
宮古島海上保安部によると、亡くなったのは静岡県浜松市に住む男性医師。宮古島市にあるダイビングショップが主催するダイビングに参加し、午前10時ごろから現場付近でダイビングを始めた。
参加者は16人で、男性は4人のグループで泳いでいたが、海面に浮上中、水深5㍍付近で、口からレギュレーターが外れ意識のない状態であることを付き添っていたガイドが気付いた。
男性は船に引き上げられたが意識が戻らず、心肺停止状態で病院に緊急搬送された。
8月11日/静岡県伊東市新井沖/62歳女性
11日午後0時50分ごろ、静岡県伊東市新井の沖合で「ダイビング中に意識がなくなった」と119番があった。県警伊東署などによると、埼玉県本庄市のパート従業員宮本芳子さん(62)が心肺停止状態で病院に運ばれたが、死亡が確認された。
宮本さんはインストラクターら4人と船で沖合に出て、ダイビングをしていた。海中でトラブルを示すジェスチャーを始め、インストラクターが船に引き上げたが意識不明の状態だった。
現場は沖合約1キロ、水深約5メートルの海中。波は約1メートルの高さで、海は荒れていなかったという。宮本さんは、友人と2人でダイビングツアーに参加していた。
8月11日/高知県大月町柏島沖/71歳女性
午前10時半ごろ、高知県大月町柏島沖で「ダイバーが溺れ、心肺停止状態だ」と110番があった。ダイバーは大阪府寝屋川市の無職壇美知子さん(71)で町内の病院に搬送されたが、死亡が確認された。
午前9時すぎから柏島の北東約150メートルの海でダイビングをしていた。同10時すぎ、壇さんが潮に流されているのを一緒に潜っていた夫とインストラクターが発見した。
現場付近の水深は約10メートルで、海は荒れていなかった。同署によると、壇さんはダイビング歴約20年だった。
8月11日/鹿児島県三島村薩摩硫黄島沖/37歳女性
午後3時15分ごろ、鹿児島県三島村の薩摩硫黄島で、ダイビングをしていた北九州市小倉北区の女性(37)が溺れたと118番があった。救助されたが、病院で死亡が確認された。
午後2時15分ごろ、ダイビング中に行方不明となった。他のダイバーが海中に沈んでいるのを見つけ引き上げたが、心肺停止の状態だった。
8月13日/鹿児島県薩摩川内市鷹島沖/76歳男性
13日午後3時20分ごろ、鹿児島県薩摩川内市の鷹島沖で、スキューバダイビングをしていた熊本市中央区の冠婚葬祭会社会長、安田征史さん(76)が行方不明になった。
串木野海上保安部などが周辺を捜索、約3時間後に心肺停止の状態で海底に沈んでいるのが見つかり、病院で死亡が確認された。
海保によると、安田さんはプレジャーボートで島を訪れ、13日午後1時半ごろから1人でダイビングをしていた。ボートに戻らないことを心配した同乗者が通報した。
8月14日/香川県高松市庵治町沖/37歳女性
高松市庵治町では午後0時45分ごろ、スキューバダイビング中の高松市塩上町の医療事務員、木川裕美さん(37)が行方不明になった。約1時間後に水上バイクに発見されたが、死亡が確認された。
男女4人でキャンプ場を訪れ、午後0時25分ごろからダイビングを始めたが、浜に戻る途中で空気を吸う「レギュレーター」が口から外れ、パニック状態になった。一緒に潜っていた男性が助けようとしたが、海中に沈んで行方が分からなくなったという。
8月16日/和歌山県串本町本町有田漁港沖/66歳男性
串本町でダイビング中だった男性が、一時行方が分からなくなりましたが、夕方になって見つかり、無事救助されました。
午前11時前、串本町のダイビングショップから、「ダイビング客1人が行方不明になった」という118番通報がありました。このため、串本海上保安署などが、巡視艇やゴムボート、また、ヘリコプターなどを出して捜索活動が行っていたところ、午後5時半ごろに、漁港の西およそ1・4キロの岩場で懐中電灯のようなものを振っている男性が見つかりました。
男性は、串本町のダイビングショップのボートで、インストラクター1人とダイビング客8人とともに、串本町有田漁港の沖およそ1・2キロ付近に向かい、午前9時ごろから、ダイビングを行っていたもので、午前10時ごろに一度浮上した際、男性の姿が見えないことが分かりました。インストラクターが海の中を探しましたが見つからなかったため、通報したということです。
男性は、ダイビング中に足がつったために浮上しましたが、ダイビングボートと距離が離れていたため、近くの岩場に上がったということです。
8月22日/和歌山県串本町スミ埼沖/68歳女性
昼前、串本町でダイビングの講習を受けていた大阪市の68歳の女性が意識を失い、ドクターヘリで搬送されて手当てを受けていますが、意識不明の重体となっています。
午前11時40分頃、串本町潮岬にあるスミ埼(さき)の北およそ900メートルの沖合いで、海に潜ってダイビングの講習を受けていた大阪市に住む68歳の自営業の女性が、意識を無くしたという119番通報がありました。
大阪市にあるダイビングショップのインストラクターと友人の68歳の女性と3人で串本町を訪れ、ボートで沖に出てインストラクターと一緒に潜っていましたが、水深16メートル付近で急に苦しいと訴えてもがき始めました。
このため、インストラクターが緊急浮上し、女性をボートに引き揚げましたが、すでに意識がなかったということです。
8月26日/鹿児島県西之表市国上沖/19歳男性
26日午前11時5分ごろ、鹿児島県西之表市国上の沖で、ダイビングをしていた東京都世田谷区の東大2年永田義信さん(19)が水深2メートルの海底に沈んでいるのをインストラクターが見つけ、引き揚げたが、死亡が確認された。
学生4人とインストラクター2人が海岸から約150メートル沖まで行って戻る途中で、学生1人とインストラクター1人が遅れた。もう1人のインストラクターが様子を見に行き、戻ったところ永田さんが沈んでいた。
8月26日/和歌山県串本町潮岬近海/38歳男性
26日午前9時半ごろ、和歌山県串本町潮岬近くの海上で、堺市堺区の会社役員、知野英敏さん(38)がダイビング中に意識を失った。知野さんは心肺停止の状態で和歌山市内の病院に搬送された。
妻と友人の3人でダイビングに来ていた。水深18メートル付近で待機するようインストラクターから指示を受けていた知野さんが突然浮上。海面に浮上した直後に意識を失った。
一昨日午前9時半ごろ、串本町の潮岬沖でスキューバダイビングをしている最中に意識を失い、心肺停止となっていた男性が今日、搬送先の病院で死亡しました。
8月30日/鹿児島県奄美大島付近/48歳男性
行方がわからなくなっているのは、奄美市笠利町万屋の原伸男さん(48)です。
原さんは30日午後、奄美市笠利町用安の海でダイビングをすると家族に伝えて自宅を出ましたが、夜になっても帰らないことから心配した原さんの知人が第10管区海上保安本部に連絡しました。
奄海上保安部によりますと、原さんは30日、自宅近くのダイビングショップで酸素ボンベをレンタルした後、ダイビングをしに30日の午後1時から午後2時ごろまでの間に自宅を車で出発したということです。原さんはその後、奄美市笠利町用安の海岸から海に入ったとみられ、海岸の近くに原さんの乗用車が停められていました。
【番外編】スノーケリング事故
8月27日/沖縄県渡嘉敷村渡嘉敷島沖/70歳男性
27日渡嘉敷村の西の海上でシュノーケリングをしていた70歳の男性が意識不明の状態で見つかり、その後病院で死亡が確認されました。
男性は茨城県土浦市の檜山充康さん(70)で、27日午前10時ごろから渡嘉敷島の沖合でスノーケリングをしていましたが、途中、意識のない状態で浮いているを一緒にいた家族が見つけました。
檜山さんは、スノーケリング業者の船で阿嘉島の診療所に運ばれましたが死亡が確認されたということです。
※9月1日11:00、事故まとめに「8月30日/鹿児島県奄美大島付近/48歳男性」追記。それに伴い、集計データなどを修正しました。
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