腰痛、足のつり。悩めるダイバー必見!ダイビング前後にできる体操をセリーナが実践!

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「腰が痛くなってきて、タンクを背負うのがつらい…」、「フィンでキック中に、足をつって激痛が…」などなど。ダイビングをしていると、体のさまざまな箇所の痛みが辛い経験は皆さんないだろうか。筆者であるセリーナも運動不足のせいか、ときどき体に不調が出る。せっかくなら、万全な状態でダイビングをいつまでも楽しみたいものだ。

そこで今回提案したいのが、それらの痛みを予防するダイビング前後にできるトレーニングやストレッチといった体操。お話を伺ったのは、長年にわたり水泳やフェンシングのスポーツトレーナーとしてオリンピックへの帯同経験もある現役の鍼灸マッサージ師の栗田英行氏。実際にセリーナが実践しながら紹介していく。一つの例として参照していただけると幸いだ。
※記事の最後には一連の体操を映像でも説明

1 腰痛は、日頃のちょっとしたトレーニングで防げる!?

ダイバーを悩ます体の痛み第一位と言っても過言ではないのが腰痛ではないだろうか。発生する原因のひとつには、体の姿勢が関係している。上半身を支える骨盤が前傾し、それに伴いお腹が前に出たような状態になり、腰に負担がかかっているのだ。

腰痛の原因になる姿勢(悪い例)

腰痛の原因になる姿勢(悪い例)

この状態で重たいタンクを背負うと、さらに腰に負担がかかり、腰痛が悪化してしまう。腰やお尻のストレッチをするだけでは一時的に筋肉の張りを取るだけで、根本的な改善にはならない。

この腰痛は、日頃から簡単にできるお尻とお腹のトレーニングを行うことで改善できる。お尻の筋肉を鍛えておくことで、骨盤を下に引っ張る力が働き、前傾することを防いでくれる。さらにお腹の筋肉を鍛えることで、体に軸ができ、お腹が前に出ることを防いでくれるのだ。正しい姿勢になるには、トレーニングもそうだが、日頃から頭が釣り糸で引っ張られているような感覚で、頭から足まで一直線に伸びている意識を持つと良いだろう。

腰への負担が少ない姿勢(良い例)

腰への負担が少ない姿勢(良い例)

お尻のトレーニング

・ヒップリフト
横になり、膝を立てて、腰が反らないように、お尻を持ち上げる。肩と膝までが一直線になるように。一直線になったところで少しキープすると、お尻への負荷がアップ!

・スクワット
手は胸に当てて、股関節から曲げ、頭・膝・足の重心が一直線になるように。膝がつま先より前に出ないようにすると、太ももの表側、裏側、お尻にも効いてくる。膝を痛める原因になるので、つま先と膝は同じ向きになるように。

空気椅子のイメージで、膝がつま先より前に出ないようにする

空気椅子のイメージで、膝がつま先より前に出ないようにする

お腹のトレーニング

・ドローイン
お腹の表面ではなく、内側の筋肉(インナーマッスル)に効くトレーニング。横になり、膝を立てた姿勢で、お腹を床に押し付けるように凹ませる。このトレーニングは腰痛予防への効果大なので、ぜひやっていただきたい。

・クランチ(腹筋)
お腹の内側に効くドローインに対して、お腹の表面の筋肉に効くトレーニング。一般的に「腹筋」と言われるトレーニング。こちらもドローインと同じ姿勢で、手を膝の上に置き、スライドさせるようにお腹を縮めていく。肩甲骨を常に浮かせた状態でやると、負荷がアップする。このトレーニングはいかにゆっくり丁寧にやるかで、効果が変わってくる。

・プランク(膝付き、つま先)
うつ伏せになり、肘と膝を支点にお腹を浮かせる。お尻を突き出したり、体が反らないようにして、頭からお尻までが一直線になるようにしよう。もう少し腹筋を追い込みたい人は、膝ではなく、つま先を支点にすることで、倍以上の負荷がかかるはずだ。

どのトレーニングも無理のない範囲で、体の調子を見ながら行ってほしい。普段あまり運動をしない人は、まずは10回、丁寧に行っていくことをおすすめする。プランクは1分を目標に頑張ってみよう。

2 ダイビング前の体操のススメ

ダイビング前の体操では、筋肉を動かしておくことで、血液の巡りをよくして体を温めたり、足のつりを防ぐことが期待される。ここでは朝家を出る前や、ボートに乗る前など少しの時間で簡単にできる体操を紹介。

腰の体操

・腰回し
タンクを運んだり背負うことを考えて、腰の体操は念入りに。ゆっくり大きく腰を回して、寝起きの固まった筋肉や関節をほぐしておこう。

・前屈後屈、側屈
誰もがラジオ体操などでも一度はやったことがあるであろう、一般的な前屈後屈。足を肩幅に開いて、体を大きく前に倒した後は、腰に手を当て大きく後傾。プラスで、即屈もやっておくと、なお良し。伸ばしたい体側の手を耳の横に伸ばし、体をゆっくり横に倒す。腰に痛みがある人は無理をしないようにしていただきたい。

足の体操

・ふくらはぎ伸ばし
足の裏を床につけ、前足に体重をかけて、後ろ足のふくらはぎを伸ばしていく。ふくらはぎは「第二の心臓」とも呼ばれるくらい、全身に血液を送り出す役割を持つ部位でもある。足のつり予防のためにもしっかり伸ばしておこう。

首の体操

・首伸ばし・首回し
首をゆっくり前後左右に首を倒してじんわりと伸ばしておこう。ゆっくり大きく回すのも良いだろう。首が凝っていると、呼吸がスムーズにできなかったり、頭痛の原因にもなる。首に血液を巡らせて柔らかくしておく必要があるのだ。

ダイビングを一緒にするメンバーで、輪になって掛け声に合わせて準備運動をすれば、アイスブレイクにもなってよいかもしれない。ただし、痛みがあったら無理をせずに自分ができる範囲で行おう。

また、足のつり防止には水分補給も欠かせない。利尿作用のあるコーヒーやお茶ではなく、ナトリウムやカリウムが含まれているスポーツドリンクがおすすめ。スポーツドリンクを手作りしてお好みの味にするのもいいかもしれない。

3 万が一水中でつってしまったときには…

つっている筋肉を伸ばすのが一番効果的。水中でふくらはぎがつったときには、フィン先を持って、手前に引っ張り、じんわりと伸ばしていく。1人で伸ばせないときはバディに協力してもらおう。

4 ダイビング直後の体を温める体操

海から上がったダイビングの後は体が冷えていることもある。そんなとき、体を温める方法としておすすめなのが肩甲骨周りを動かす体操。体を温めるためには筋肉を動かさなければ血液の巡りが良くならないので、じっと座っているより動いていた方が、体を温めるのには効果的だ。

・スクワット
体の中でも比較的大きな太ももの筋肉を前述したスクワットを行い、軽く動かしてあげると良いだろう。

・腕振り
座ったまま、走るときのように腕を素早く前後に振る。このとき肩甲骨もしっかりと動くように振れば、温め効果アップ。手前後20回ずつくらい振れば、だんだんと体が温かくなってくる。この体操は、狭いボートの中でもできるので、ダイビングとダイビングの休憩中にもおすすめだ。

5 家に着いてからできるクールダウン

ダイビングをやった後は、心地よい疲労感がある。その疲労を次の日に残さないために、寝る前の布団の上で簡単なストレッチを行ってほしい。

足のストレッチ

・太もも前伸ばし
フィンキックで一番使うのが太ももの前側。仰向けになり、片足を曲げ、太ももの前側を伸ばしていく。上半身を上げた状態でも十分に伸びるが、さらに伸ばしたい人は上半身も倒してしまおう。

・太もも裏伸ばし
太ももの裏側は使ってなさそうで、キックのときに意外と使っている部位。ここをしっかり伸ばしておくと、次の日の足のだるさが軽減されるはずだ。仰向けになり、片足を上げてできる人は、手で足先を持って手前に引っ張る。もし、足先まで手が届かない人は、ふくらはぎのあたりを持って、手前に引いても効果はあり。

お尻のストレッチ

・お尻伸ばし
お尻もフィンキックをするときに使う部位。お尻の筋肉が凝り固まると、腰痛の原因にもなるので、ダイビングをした日以外でもやっていただきたい。座って、片足の足首を反対側の太ももの上に乗せる。さらに伸ばしたい人は体を倒し、足を手前に引くと良し。

腰のストレッチ

・腰伸ばし
重いタンクによって、負担がかかった腰をストレッチ。仰向けになり、両手を左右に広げ、片足を大きく反対側に倒す。このとき、倒した足側の方が浮くと効果が半減してしまうので、なるべく浮かないようにしよう。

※腰痛がある人は無理をしないように

※腰痛がある人は無理をしないように

体操を映像で見たい方はこちら(2分57秒)

以上が、ダイビング前後にできるトレーニングやストレッチなどの体操になる。ぜひダイビングのルーティーンにこれらの体操を入れて、体調を万全にしてダイビングを楽しんでいただければ幸いだ。

栗田英行氏プロフィール

くりたひでゆき
鍼灸マッサージ師、体育学修士
長年、水泳やフェンシングのスポーツトレーナーとして活動し、オリンピックへの帯同経験あり。症状の根本的な改善を第一とし、筋肉や関節にアプローチしていく治療を行なっている。

治療院「FIET Conditioning」

アスリートから一般の方まで、痛みを取り除くだけでなく、痛みが無くなった後の良いコンディション作りまでを目指した治療院。ダイビングに支障が出る腰痛でお悩みの方も大歓迎。
FIET Conditioning WEBサイト
住所:埼玉県さいたま市浦和区上木崎2丁目6番1号 楽風雅殿202号室

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PROFILE
0歳~22歳まで水泳に没頭し、日本選手権入賞や国際大会出場。新卒で電子部品メーカー(広報室)に入社。同時にダイビングも始める。次第に海やダイビングに対しての想いが強くなりすぎたため、2021年にオーシャナに転職。ライターとして、全国各地の海へ取材に行く傍ら、フリーダイビングにゼロから挑戦。1年で日本代表となり世界選手権に出場。現在はスキンダイビングインストラクターとしてマリンアクティビティツアーやスキンダイビングレッスンを開催。
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