フリーダイビング国際大会「Vertical Blue2022」。日本人選手が金、銀獲得!選手コメントも

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8月1日(月)〜11日(木)にかけ、世界で2番目に深いブルーホール(海中にできた陥没穴)として知られる、中米バハマ・ロングアイランドのDean’s blue holeにて開催された「Vertical Blue2022」。このブルーホールは水深が202mあり、その穏やかな海峡から「世界最高のフリーダイビング環境」と言われている。

本大会は2008年から毎年開催され、トップを狙うフリーダイバーなら誰しもが出場を夢見る世界最高峰の大会。今年の参加者も強者揃いで、世界22か国から42名、そのうち日本からHANAKO選手、岡本美鈴選手、尾関靖子選手、北濱淳子選手、知野見光選手、原哲雄選手の6名が参加した。

日本代表選手もメダル獲得!

本大会には22か国から42名のトップフリーダイバーが参戦。選手たちはCNF(フィンを使わず平泳ぎで潜る)、FIM(フィンを使わずロープをタグって潜る)、CWT(1枚のフィンを使って潜る)、CWTB(2枚のフィンを使って潜る)にエントリーし、それぞれ自己ベストやメダル獲得を目標に挑戦。

本大会の結果は、世界記録が3個、国別記録61個が誕生した。世界記録は、ポーランド代表Mateusz Malina選手(男性)がFIMで127m、フランス代表Arnaud Jerald選手(男性)がCWTBの2本目のダイブで119m、3本目のダイブで120m(※)を樹立。女性は世界記録更新とはならなかったものの、男性と同じく多くの国別記録を樹立した。
※選手たちは同じ種目に連日出場し、潜水する水深を徐々に深くしていき、体を慣らしながら記録を伸ばしていく。そのため、Arnaud Jerald選手は連日記録を伸ばし、世界記録を2回更新した。

日本代表の中で目立った活躍を見せたのは、尾関靖子選手とHANAKO選手。尾関選手はが同大会初出場ながら、なんとCNFで64mの記録を出し優勝し、本人も驚きと嬉しさが溢れている様子だった。CWTでは、昨年の同大会で3位だったHANAKO選手が自己ベストに迫る103mで準優勝を果たした。

また、大会主催側の発表によると、大会期間中に選手が潜水した平均水深は81.4mで、同大会史上最も深い水深。さらに4日目の平均水深は92mでフリーダイビング競技会史上最も深い水深となったことから、本大会が世界最高峰の大会であることを裏付ける結果となった。

大会総合結果



※CTWとCTWBはフィンを使った種目としてCTWに統合して順位づけられる
※Overallは各選手が出場した各種目すべての記録を合計して順位づけされる

すべての結果はこちら▼
http://2022.verticalblue.net/results/?action=days

日本人代表選手コメント

本大会に出場した6名の選手それぞれからコメントをいただいた。

HANAKO選手

「例年と同じく約1ヶ月弱前から日本チームと現地トレーニングを開始。自分の課題に取り組みながらも仲間と支え合い、毎日楽しく、大会に向けて調整していきました。

大会では、6回のダイブのうち106mを申告した3回とも失敗してしまい、今回目標だった自己ベスト更新が達成できなかったことは殘念でなりませんが、心身共に自分の弱点と、とことん向き合えた貴重なダイブになりました。

最終結果では2日目に潜ったCWT103mの記録で2位となり銀メダルをいただきました。100m以上を申告する女子も増え、今後メダルを狙うには100m以上は確実に潜らなければいけなくなってくるはず。いつもながら、この大会に集う最強のダイバーたちの潜りを目の当たりにし、沢山の刺激と新しいモチベーションをもらえたことに感謝しつつ、目標を諦めずに、一から再出発したいと思います。最後まで暖かく見守ってくださった皆さんの応援の声が日々力になりました。本当にありがとうございました!」

刺激と新しいモチベーションを胸に、今後さらなる記録を狙う

刺激と新しいモチベーションを胸に、今後さらなる記録を狙う

岡本美鈴選手

「身体的・精神的にも“良い意味で”全力を出し切り、疲れました。練習では、計画通りの仕上がりに持っていけず、身体的・精神的に辛い日々でした。

大会初日は、85mがいっぱいいっぱい。3本目で95mに成功したものの、その後の100mは、途中で引き返すEarly turnとなり、自己ベスト更新ならず。それでも、不調を解決し100mに申告を持っていけたことや100mを現実的な目標に感じられたことは大きな収穫です。

また、水深が深く長期の競技会に関わらず、大きなトラブルがなかったことも素晴らしいと思いました。しかし今年の大会運営は大赤字らしく、来年以降の開催は資金調達が課題だそう。世界中のフリーダイバーが夢みる大会が継続できるよう祈っています。

応援、サポートしてくださる皆さまには、結果だけでなく大会までの過程も支えていただいています。本大会も、応援のおかげで最後まで全力を尽くすことができました。本当にありがとうございます。また次の大会に向けて、トレーニングを積んでいきます!これからも、応援よろしくお願いします」

水面に浮かぶ海藻が幻想的なDean’s blue hole(写真提供:Daan Verhoeven氏)

水面に浮かぶ海藻が幻想的なDean’s blue hole(写真提供:Daan Verhoeven氏)

CWT(写真提供:Daan Verhoeven氏)

CWT(写真提供:Daan Verhoeven氏)

 ホワイトカード獲得の瞬間(写真提供:Daan Verhoeven氏)

ホワイトカード獲得の瞬間(写真提供:Daan Verhoeven氏)

競技終了後の安堵の表情(写真提供:Daan Verhoeven氏)

競技終了後の安堵の表情(写真提供:Daan Verhoeven氏)

尾関靖子選手

「今回、VBに初めて参加し、想像もしていなかった金メダルが獲得できたこと、大変嬉しく思います。また、トップレベルの選手のダイブを目の当たりにでき、学びの多い大会となりました。今大会の申告深度は自己ベスト+3mまでと規定されており、大会が始まる前の練習時から自己ベストチャレンジが続くタフな競技生活となりましたが、参加する選手は誰もが暖かく、スタッフを含め大きな家族のような雰囲気に包まれ安心して潜ることが出来ました。

日本人選手同士も栄養管理やダイブのサポート、課題の共有など、お互いに助け合いながら、チームとして動いていました。個人的には目標としていた全種目出場とCNF60m以上は達成できましたが、まだまだ課題は山積みなので日本に持ち帰り、またトレーニングに励みたいと思います。応援してくださった皆様ありがとうございました」

集中する潜水前(写真提供:知野見光選手)

集中する潜水前(写真提供:知野見光選手)

CNFは平泳ぎで潜っていく(写真提供:Daan Verhoeven氏)

CNFは平泳ぎで潜っていく(写真提供:Daan Verhoeven氏)

ホワイトカードの判定で歓喜の瞬間(写真提供:Daan Verhoeven氏)

ホワイトカードの判定で歓喜の瞬間(写真提供:Daan Verhoeven氏)

左からハンガリー代表Fatima Korok選手、尾関選手、ベルギー代表Marine Simonis選手

左からハンガリー代表Fatima Korok選手、尾関選手、ベルギー代表Marine Simonis選手

北濱淳子選手

「2013年、同大会で亡くなったNick選手の次の競技順だった私は、事故後、競技者として潜れなくなっていました。2018年に再度競技に復帰するも、まだまともに潜れない状況で。そして今回、事故から9年後。覚悟を決めて参加するも、やはり当時の記録まではまだ遠く、心身共にもう少し時間が必要だと感じた大会になりました。

2009年から、この大会に参加していますが、当時から一緒に潜っている仲間もまだおり、同窓会モードになったり、新しい若い選手の台頭を目の当たりにして、時間の経過を感じたりと、自分の中のフリーダイビング史と向き合う良い時間にもなりました。また一緒に練習している原選手の自己ベスト更新に立ち会うこともでき、同世代として励みになりました。最後に、日本チームの夕食は美味しいと評判で、どのようにお呼ばれされるかを真剣に考えている外国の選手たちがいたことを記しておきます(笑)」

幻想的なDean’s blue hole(写真提供:Daan Verhoeven氏)

幻想的なDean’s blue hole(写真提供:Daan Verhoeven氏)

FIMで浮上中(写真提供:Daan Verhoeven氏)

FIMで浮上中(写真提供:Daan Verhoeven氏)

FIM55mで見事ホワイトカード(写真提供:Daan Verhoeven氏)

FIM55mで見事ホワイトカード(写真提供:Daan Verhoeven氏)

長年ともに潜り、ともに酸いも甘いも経験してきた、大切な仲間(左から岡本選手、チリ代表サイモン選手、北濱選手)

長年ともに潜り、ともに酸いも甘いも経験してきた、大切な仲間(左から岡本選手、チリ代表サイモン選手、北濱選手)

知野見光選手

「今回のVerticalBlueは、海洋公式戦の初陣であり、僕のフリーダイビング人生にとって非常に大きな意味のある大会になりました。今大会の参加にあたって、周りの皆様には本当に心強い応援とサポートをいただき、感謝の気持ちでいっぱいです。

大会は、全6ダイブ予定のうちの2ダイブ目のナショナルレコード狙いのダイブで水中ブラックアウトを起こしてしまい、規定によって失格となる悔しい結果に終わってしまいました。ブラックアウトしたことも悔しかったのですが、一番悔しかったのは応援してくださっていた皆様にご心配をおかけし、良い結果を報告できなかったこと。思い描いた結果は得られなかったものの、練習から1本1本のダイブが本当に楽しく、刺激的で自己ベスト更新を含めて大変多くの貴重な経験をさせてもらいました。また改めてトレーニングに励み、次大会ではさらなる高みを目指したいと思います」

日本記録を狙ったCNF

日本記録を狙ったCNF

FIM52m、ホワイトカード

FIM52m、ホワイトカード

原哲雄選手

「本大会は2018年の参加以来4年振りの参加で、正直自分の年齢(55歳)で記録を伸ばせるのか分かりませんでした。大会まではFreedive湘南をベースに湘南の潮の流れが速い中でCWT70m~75mの深度を繰り返し練習していました。本番は、4年前に自己ベスト90mを潜った時は一杯一杯でしたが、今回出した自己ベストCWT96mではまだ大分余裕があったので自分の心技体の進化を実感することができました。フィンも4年前と同じMolchanovsを使ったので道具の進化に頼らず自らの進化を実証できたと思います。

55歳でもまだまだ進化できることを示せたので、同世代のフリーダイバーの励みになればと思います。そしてこの歳でも進化可能なフリーダイビングというスポーツの魅力を改めて感じました。また、日本チームは定評通り、参加国の中でも最も雰囲気が良く、助け合いの精神に満ちたチームだと思います。日本チームの自炊料理も他国が羨む美味しくバラエティーに富んだヘルシー&リカバリーフードで、皆で自炊し毎晩美味しい料理で食卓を囲むのもチームビルディングの秘訣かもしれません」

96mに挑んだCWT(写真提供:Daan Verhoeven氏)

96mに挑んだCWT(写真提供:Daan Verhoeven氏)

浮上中。まだ大分余裕があったという(写真提供:Daan Verhoeven氏)

浮上中。まだ大分余裕があったという(写真提供:Daan Verhoeven氏)

CWT96mで念願の自己ベスト更新

CWT96mで念願の自己ベスト更新

4年前と同じMolchanovsのフィン

4年前と同じMolchanovsのフィン

年々、ハイレベルになっていくVertical Blue。また来年、Dean’s blue holeにトップフリーダイバーが集い、どのような感動のドラマが繰り広げられるか、今から楽しみで仕方ない。

Vertical Blue2022
VB公式サイト▼
http://2022.verticalblue.net/
VBライブ配信アーカイブ▼
http://2022.verticalblue.net/news/#clip=415ts47m7l44
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PROFILE
0歳~22歳まで水泳に没頭し、日本選手権入賞や国際大会出場。新卒で電子部品メーカー(広報室)に入社。同時にダイビングも始める。次第に海やダイビングに対しての想いが強くなりすぎたため、2021年にオーシャナに転職。ライターとして、全国各地の海へ取材に行く傍ら、フリーダイビングにゼロから挑戦。1年で日本代表となり世界選手権に出場。現在はスキンダイビングインストラクターとしてマリンアクティビティツアーやスキンダイビングレッスンを開催。
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