Oリングの入れ忘れも起こっているオーバーホールの現場

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今日、オーバーホールの作業現場で、衝撃の器材が見つかりました。

オクトパスの分解をする際、作業担当者が「部品がカタカタと動く」とのこと。
BOSSが「Oリング入ってないんじゃない?」「まさか、ありえないでしょう!」といった会話の後、全員凍りつく事態が。

ケースと金属部品(ノズルガイド)の間に入っていなければならない、Oリングが入っていない!

本来はこのようにOリングが入っています。

オーバーホール器材

それが、Oリングが入っていませんでした。

<img src="https://oceana.ne.jp/wordpress/wp-content/uploads/2014/08/overhall-20140806-1-500x375.jpg" alt="オーバーホール器材" width="500" height="375" class="alignnone size-large wp-image-51190" />

だからカタカタと部品が動いていたというわけです。

このOリングの役目は、“ケース内部に海水を流入させない“ためのもので、このOリングが無いと、ケース内に海水が入り込んでしまいます。

器材の構造に精通していなければ、「んっ、どういうこと?」と思われるかもしれませんが、ものすごく危険なことです。

ダイビング中に、バディがエア切れを起こしてこのオクトパスをくわえた、あるいは、自分自身がメインの呼吸源(2ndステージ)の調子が悪くてオクトパスにくわえ替えた場合、空気を吸うつもりで吸ったら、海水が出てきて飲んでしまうことになるのです。

オクトパスは、非常時、緊急時に使用することが多いですが、そんな冷静でない中、もし海水を飲み込んでしまったら……と思うと本当に恐ろしいですよね。

“Oリングの入れ忘れ”

作業的にはケアレスミスですが命に関わる問題です。

前回1年以上前に他店でオーバーホールしている器材なのですが、じゃあ、オーバーホール後に、ユーザーが器材の異変に気付くことができる症状があるのか?というと、残念ながら“ない”と思います。

エントリー直後、Oリングが無いためにできたケースと部品の隙間からは、ケース内の空気が抜け出た後すぐに、そこから海水が入ってケース内は海水で満たされてしまいます。

エアが出るのは一瞬のことなので、気付かないでしょうし、仮に気付いても器材の構造を理解していなければ、見抜けないと思います。
まさか、ご自身の器材がそのようなことになっているとは思ってもみないだろうし…。

また、セッティング時にチェックしたとしても、陸上では、通常のように呼吸ができてしまうのです。

このオクトパスは、使用されなかったことが幸いでした。

オクトパスを使う必要のないダイビングをする、というのは大前提ではありますが、万一のときのために常備するオクトパスですから、いつ使用しても安全にしておくことは本当に大切なことだと思います。

自分で防ぐことはできないことではありますが、お店選びは自身でできます。
ぜひ、料金や納期のみだけで判断するのではなく、しっかりと見極めをして、信頼のおけるお店にオーバーホールを依頼してください。

プロの目線で見る良い業者と悪い業者の見分け方
良い業者と悪い業者の見分け方はある? | 一から分かるオーバーホール特集 | オーシャナ

今、1年の中で一番たくさんの方が、海に潜られる時期かと思います。
事故などないように、安全で充実したダイビングができますように心よりお祈りしています。

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PROFILE
大学在学中、グアムで体験ダイビングをしたのを機にライセンスを取り、卒業と同時にダイビングの会社に就職。
その後、数店舗の都市型ダイビングショップで、スクールや器材販売、ツアーの企画・引率をし、2000年にインストラクターに。

数メーカーのメンテナンス講習を受けた後、ダイビング器材オーバーホール専門店「アイバディ」に10年間勤務。
現在はフリーインストラクターとして活動する傍ら、ダイビング器材・オーバーホールについて執筆活動中。

「器材の中身は見えない。だから伝えねばならない」がモットー。

ダイビング器材の中身は見えない。だから伝えねばならない~オーバーホールの現場から~ | オーシャナ
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