“残圧計を見ながらバルブを回してはいけません”は都市伝説か!?

連載イメージ(提供:高尾珠実)

「残圧計を直視しながらバルブを回してはいけません」

講習のとき、インストラクターからそう教わった方、多いのではないでしょうか。

ちなみに私は18年ほど前、「残圧計が破裂しガラスが割れて飛び散り、目に刺さって失明する危険性がある」と教えられました。
それが本当なら恐ろしい、恐ろし過ぎます!

そんな恐ろしいことが実際に起こるのでしょうか?

現在、製造販売されているゲージの残圧計には「セイフティーバルブ(安全弁)」
なるものが付いていることが大半です。

万一、ブルドン管が破裂した場合、高圧のエアがケース内部に充満しますが、この安全弁がついていれば、弁からエアが抜けるため、さしたる問題にはなりません。
100%とはいえませんが、そういうコンセプトのもとにつくられています。

■安全弁:上部についているタイプ

残圧計(提供:高尾珠実)

ケースからはずして撮影、ケースには穴が開いていません

■安全弁:背面についているタイプ

残圧計(提供:高尾珠実)

これはケースにも穴が開いているタイプ

しかし、現在も製造販売されている中で、
少数ではありますが安全弁のついていない残圧計があります。

この出っ張りは、安全弁ではありません。
残圧計(提供:高尾珠実)

このタイプの場合は、ブルドン管が破裂した場合、前面ガラスが圧で持ち上げられて隙間ができるか(片側だけ開く程度)、場合によってはガラス面が外れます。

ですが、それが飛び出すほどの勢いはないといえると思います。
なぜなら、高圧ポートからホース→残圧計に送り込むエアの流量には規定が定められているからです。

ちなみに、EN250(ヨーロッパ規格)では、1分間に40リットル以下と定められており、某社はその1/2の20リットル。
理由は、万一の破裂時にも安全に水面まで上がって来られるようにと、流量を抑え目にされているためです。

高圧ホースの穴をご覧になったことがありますか?
針も通らないような小さな穴であることが一般的です。

よって、“ガラス面が割れて飛び散り、目に刺さって失明する危険性がある”というのは、極めて低い可能性である、といえるかと思います。

もちろん100%ないとは言い切れません。
念には念を入れて、直視しながらバルブを回さないという習慣を継続していただくにしても、必要以上に恐れることではないということです。

ちなみにブルドン管のトラブル原因は、金属腐食・疲労・劣化が主。

亀裂が入ったり、穴が開いたりするケースが多く、ブルドン管自体がドカーンと破裂するのではなく、破裂する箇所は管の接続部分であることが一般的です。

では、予防のためには? 以下、気をつけていただきたいことの例です。

  • 衝撃を与えない
  • 1stステージを水没させない
  • 1stステージ内に湿気を入れないようにする
  • ゲージジョイント部のオーバーホールを定期的に行ない、エア漏れさせない

ぜひ正しい知識を持って、安全にご使用ください。

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PROFILE
大学在学中、グアムで体験ダイビングをしたのを機にライセンスを取り、卒業と同時にダイビングの会社に就職。
その後、数店舗の都市型ダイビングショップで、スクールや器材販売、ツアーの企画・引率をし、2000年にインストラクターに。

数メーカーのメンテナンス講習を受けた後、ダイビング器材オーバーホール専門店「アイバディ」に10年間勤務。
現在はフリーインストラクターとして活動する傍ら、ダイビング器材・オーバーホールについて執筆活動中。

「器材の中身は見えない。だから伝えねばならない」がモットー。

ダイビング器材の中身は見えない。だから伝えねばならない~オーバーホールの現場から~ | オーシャナ
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