画期的!“フィンの分解”という価値はダイバーに受け入れられるのか~TUSA HyFlex System開発者に聞く~
タバタのTUSAブランド・フィンの開発者、藤本貴史さんインタビュー後編。
フィンを分解するというTUSA HyFlex System。これまでにないコンセプトが生まれるまでの経緯やこの価値がダイバーに受け入れられるのかなど、今後の展開も含めてお聞きしました。
■聞き手:寺山英樹(Office Divingman)
■写真:菊地聡美
“フィンを分解する”という新しいコンセプト
TUSA HyFlex Systemのメリットと課題
寺山
フィンを分解するという発想はどのようにして生まれたのでしょうか?
藤本
前編でも話しましたが、日本だけではなくワールドワイドに展開していると、海外と日本で要望のズレがあるんですね。
そして、フィンを新規開発するには、最低4サイズは作る必要があり、さらに多色成形や多様なブレードが必要となれば、金型の初期投資が膨大にかかります。
そんな事情からフィンを新しく作る時にはどうしても多くの需要を同時に入れ込もうとしてしまいます。すると、最大公約数的な無難なフィンになってしまい、結果として、日本市場だけにフォーカスしているフィンには、どうしても敵わないといったジレンマがありました。
そんなジレンマをどう解決したらいいかということで考えついたのが、TUSA HyFlex Systemです。
寺山
フットポケットとブレードを分離することによってフットポケットは流用。そうすることによって、ユーザーは自分のサイズに合ったフットポケットを購入したら、あとは、海の状況や好みによってブレードを使い分けができるという発想ですね。
藤本
そうです。逆に、フットポケットをウエットスーツとドライスーツで履き替えたりすることもできます。人それぞれ自分に合ったフィンを自由に選択できるというシステムを考えたんです。
寺山
海外によく潜りに行く旅慣れた友人が、「分解できるからパッキングがしやすくて、本当に便利」と言ってたんですが、その点も狙いだったのでしょうか?
藤本
もちろんそうですね。飛行機内に持ち込めるサイズにできるのも大きなユーザーメリットです。
こういった新しい取組みを始めるときには、メーカー側の都合だけで考えていたらユーザーは満足できないし、ユーザーの満足だけを考えていたらコストが合わなくて商品にならなかったり、そこらへんのバランスを考えないといけないですよね。
フットポケットを流用するというのは、ブレードの開発だけで新しいフィンが生み出せるということで、メーカー側のメリットとしても大きいのですが、ユーザーとしてフィンの選択肢が広がることになったり、分解できて持ち運びできたり、メーカーユーザー双方のメリットを同時に満たします。
寺山
それでいうと、ごく個人的な印象では、分解できて持ち運びできるというメリットがとても受け入れられているという印象があります。逆に、ブレードを目的によって変えることの価値が伝わっていないとも思うのですが、この点についてはどう思われますか。
藤本
まだこの2つのブレードしか出していないので、今後さまざまなブレードを作り、展開を増やしていきたいと思っています。その中で、徐々にそうした価値観を伝えていければなと。
母数が増えると、例えば、すべてのサイズに、どのブレードもつくようになっているので、人が使っているブレードを「ちょっと試してみたいから貸してよ」なんて動きが出ることも期待できます。
今までは、そもそもサイズが合わないと試すことすらできませんでしたが、サイズ関係なく貸し借りができるようになるんですよね。
寺山
今後、選択肢も増えるし、新しい価値が生まれるという展開を考えているのですね。
また、あえてデメリットの話をすると、ドライスーツの場合はとても使いやすいという声を聞くのですが、南の島など温かい海では、素足とか薄いソックス型のブーツで潜ることに慣れているダイバーも多い。その場合、フットポケットが大きいとかいう声も聞きます。
藤本
確かにその点は課題です。ここ数年、ストラップフィンを中心に開発してきたので、フルフットを利用する方も納得するというラインアップにはまだまだ手薄というのは否めないと思います。
寺山
私もドライスーツとウエットスーツでは違うフィンを履いていますが、それを同時に実現するというのは難しそうですが、面白いし、実現していただきたい。
ブレードだけでなく、フットポケットにもバリエーションあっても、より組み合わせが増えて良さそう。言うだけは簡単ですが(笑)
藤本
そうですね。もちろんブレードだけでなく、フットポケット側の展開というのも考えていますので期待していてください。
初心者でもプロにもオススメしたいフィン
「まずは、ぜひ履いてみて」
寺山
スペックに関してもうひとつお聞きしたかったのが、蹴り心地や素材のほかに、重さについて。
テックダイビングの注目と同時に、中性浮力だけでなく、トリム(水平)姿勢も意識されてきました。その中で、フィンが浮く、沈むという要素は重要な視点ですが、その点はどのように考えていますか?
藤本
それはやはり目的次第。足と頭を真っ平らに同じ高さにするのをよしとするのか、ダイビング中に、足をちょっと下げ気味にする姿勢を基本とするのか。
そのへんをどう考えるかの違いだと思うんですね。
ただ、ひとつ言えるのは、フィンが重ければ重いほど、必ず疲れるんです。団扇(うちわ)を扇ぐときに重かったら疲れますよね?それと同じで、動かすものが重いというのは疲れます。
ですから、フィンは、人間の体の比重に近いぐらいが一番取り扱いやすいんじゃないかなと、個人的には思っています。
寺山
素材のこともあり、これらハイスペックフィンは、最も高いクラスのフィンとなっていますが(SWICHが定価24,000円)、プロユーザーというイメージもあるのでしょうか?
藤本
そこは特にこだわってはいないです。
特にSWITCHなんかでいうと、どんな蹴り方をしてもさまざまな反応が返ってきて面白いんですよね。初心者が蹴ると初心者なりの使い心地が得られるし、アップキックとダウンキックの切り返しがものすごくうまい人が使うと、それに合わせてグングン進むと好評だったり。どんな層の方からも面白い反応をいただけるフィンですね。
寺山
フィンは“泳ぐ”という基本動作に関係する重要な道具。履き比べてみなとそのメリットがなかなか伝わらないでしょうから、ぜひ、試してみてほしいですね。
藤本
はい。一度履いていただければ、気にいっていただけると思いますので、モニター会などで気軽に試していただければ幸いです。