自宅にマングローブ林を再現!? 市民科学の可能性を秘めるアクアリウムアワード最終審査会

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深刻化する海洋や河川湖沼の水環境課題の解決を目指し、アクアリスト(水棲生物飼育者)の生物飼育技術を市民科学として結集するべく、環境移送ベンチャー企業「株式会社イノカ」(以下、イノカ)主催の「第1回 INNOVATE AQUARIUM AWARD -アクアリウムで、世界を変えよう。- 」(以下、本アワード)が開催された。本アワードの一次・二次審査を勝ち抜いた6名のファイナリストの中から、グランプリを決めるべく、都内にて最終審査会が行われたので、その模様の一部をお届けしたいと思う。

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本アワード立ち上げの経緯

本アワードは、水環境の問題に関心のある企業パートナーの取り組みとマッチングできそうな“生態圏エンジニア”(※)を発掘し、研究開発やサステナビリティ活動とのコラボレーションをプロデュースするというもの。

※生態圏エンジニア
研究職としてではなく、個人の趣味で水生生物の飼育等を行っている人々を”生態圏エンジニア”と称し注目し、彼らの活動を「一つの水槽の中に、生き物も含めた環境維持システムの設計・構築を行う」という新たな概念としてイノカは捉えている。

「第1回 INNOVATE AQUARIUM AWARD」最終審査会、開幕

本アワードの最終審査会では、ファイナリストによるプレゼンテーション、パートナー企業賞の贈呈、最優秀賞の発表などが行われる。まずはイノカ代表取締役CEO・高倉葉太氏より開会の挨拶。「最初、アクアリウムは趣味の一環であるとして、ビジネスにおいて誰からも相手にされませんでした。しかしアクアリウムでのサンゴの産卵成功などをきっかけに、今では環境省などからも注目されるまでに。私はアクアリストの可能性を強く信じています」と、本アワードの開催経緯や意気込みについて語った。

また、本アワードの審査員としては、株式会社イノカ 取締役CAO・増田 直記氏をはじめ、アクアリストの可能性に期待をする企業の代表など総勢12名だ。

水中生物愛が止まらない…。ファイナリストによるプレゼンテーション

では、ここからファイナリストによるプレゼンテーションの様子をお届けしていく。まずトップバッターを務めたのは、マングローブ林に情熱を注ぐアクアリストだ。

五十嵐琢人氏

建設業に携わる傍ら、生態系を再現することにこだわりを持ち、なんと東京にある自宅を改造し、マングローブやアマモ場の環境を再現。特に多様な生物の棲家となっているマングローブに関して強いこだわりを持ち、生態系保全の観点から2030年までに内陸にマングローブ林をつくるという、“完全閉鎖循環マングローブ林”の実現を目指している。

工藤貴久氏

南米に生息する全長5〜6cmほどの熱帯魚「アピストグラマ」を飼育するための部屋を用意し、そこに水槽70個を設置。飼育のこだわりをSNSで発信したり、ブリーディングを行っている。アピストグラマが水の質といった生息環境に敏感で飼育のハードルが高いという課題に対して、水槽の水作りを自動化する「水質プリンター」のアイデアを発表。

K-ki氏

ニホンイシガメを愛し、できるかぎり自然のカメの暮らしぶりを観察したいという思いから、最高の環境で飼育するため、水質などのデータを自作のIoTデバイスで測定。そして、世の中の消費的なアクアリウム業界の課題を解決すべく、生態、飼育環境、飼育用品などといった飼育ナレッジを一元的に管理・共有できるサービスの普及を目指している。

岩田咲絵氏

通常、アクアリウムでは3年ほどが寿命と言われている「ヤマトヌマエビ」を11年間育成することに成功。ヤマトヌマエビを愛するがあまり、水を適温に保つため、夏は24時間エアコンをつけ、冬はエアコンをつけないほど。アクアリウム業界でも水槽の掃除屋として見られがちという、エビに対する世の中の認識を変えようと、大量に廃棄されるエビの殻を再利用した服を作ることが目標。

山端葵子(やまはたきこ)

ファイナリストの中で最年少となる小学5年生。池を模した水槽でアカハライモリを飼育し、イモリの生態を調査する実験を自ら行うなどして、卓越した飼育理論を持つ。飼育する中でアカハライモリの高い再生能力に着目し、将来的には、医療技術への貢献を目指し、探索研究を行っている。

AS氏

水中生物のブリーダーとして、タツノオトシゴを中心にさまざまな生体の繁殖に成功。繁殖が難しいとされる水中生物を含め、数十種類の繁殖経験がある。今後は、種の保存を行う水族館などが、知見を持つアクアリストと連携し、いわゆる属人化を防ぐ種の分散保全を提案。

ドキドキの授賞式…

本アワードでは、最優秀賞に30万円、パートナー企業8社の各賞として10万円が贈られる。見事、最優秀賞に輝いたのは、マングローブ林を内陸につくる提案をした五十嵐琢人氏。一種の生物のみならず、生態系全体の保全にも大きな影響を与える可能性があることが評価された。

パートナー企業賞については、以下の通り。
GEX賞:K-ki氏
カミハタ養魚賞:工藤貴久氏
JFEスチール賞:AS氏
デロイトトーマツ賞:五十嵐琢人氏
アオキンシンテック賞:岩田咲絵氏
長谷虎紡績賞:岩田咲絵氏
リバネス賞:山端葵子氏
ロート製薬賞:山端葵子氏

受賞された皆さま、おめでとうございます!

水中生物への一途な情熱が、地球や人類を救う日が来る日も夢ではないのかもしれない、そう思わせるファイナリストのプレゼンテーションだった。アクアリストと企業との連携もどのように発展していくか楽しみなところ。今後も注目していきたい。

また、「第二回 INNOVATE AQUARIUM AWARD」の開催がすでに決定しており、ジュニア部門も新設されるという。最新情報をチェックして、ぜひ挑戦してみよう。
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