シャークジャーナリストも興奮!謎多き“歩くサメ”をパプアニューギニアで発見

エポレットシャーク(撮影:中村卓哉)

エポレットシャークを撮影するシャークジャーナリストの沼口麻子さん(撮影:中村卓哉)

“ウォーキングシャーク(歩くサメ)”として知られるエポレットシャーク(英名)の仲間。

この胸ビレと腹ビレを器用に使って歩く不思議なサメは、シャークジャーナリストの沼口麻子さんが恋い焦がれるテンジクザメの仲間で、お正月にラジャンパットに会いにいったものの、残念ながら見つからず……。

どうしても会いたいとの情熱は止まず、やって来たのがパプアニューギニアのトゥフィですが、なんと初日にいきなり登場!

(パプアニューギニアの首都ポートモレスビーまで成田からおよそ6時間30分。トゥフィまでは、さらに国内線に乗り継いで40分ほど(経由便の場合はさらに時間が必要))

普段、おっとりした印象の沼口さんですが、エポレットシャークの登場を知らされた瞬間、水中での行動がいきなりスピードアップ。
エポレットシャークが隠れていたテーブルサンゴまで急行すると、サンゴの下をのぞき込み、ダイビングの終了を知らされるまで40分もの間、一歩も動かず。

パプアニューギニアのサンゴ

テーブルサンゴの下をのぞき込むダイバーたち。沼口さんはこのまま40分動かず

後からお聞きしたところ、エポレットシャークの仲間の中でも、めったに見られない、珍しい種類なんだとか。

ということで、興奮冷めやらぬ沼口さんに、エポレットシャークについてお聞きしました。

沼口麻子さん

Tシャツからネックレス、イヤリング、手帳……などなど、すべてがシャーク一色の沼口さん

―――日本でもメディアで取り上げられることがある、歩くサメ・エポレットシャークですが、珍しいサメなのでしょうか?

パプアニューギニア周辺海域にしかいない固有種で、「SHARKS OF THE WORLD」によると全部で8種類います。
ちょっとややこしいのですが、8種のうち6種がエポレットシャーク、もう2種がカーペットシャークと英名で呼ばれています。

日本のテレビに出てくる種類はエポレットシャークで、マモンツキテンジクザメという和名もあって、大阪の海遊館など、日本の水族館でも見られんですよ。

―――では、今回、発見されたエポレットシャークは別の種ということですか?

そうなんです!

今回、見られたのはミッシェルズエポレット(Hemiscyllium michaeli)という種類で、パプアニューギニアでもアロタウやトゥフィくらいしか見たという話は聞きません。
生態もよくわかっていない珍しいサメです。

私は、水族館では見たことがあるエポレットシャークをぜひ自然で見たいと思って来たのですが、まさか、こんなにレアな種類に出会えるとはと、興奮してしまいました!

―――その興奮は水中でもとてもよく伝わってきました(笑)。このサメの魅力は何でしょうか?また、実際に見られた時はどんな思いでしたか?

まず、「やっと会えた」というのが率直な感想です。
お正月のリベンジが果たせました。

魅力といえば、やっぱり、“歩く”こと。

ヒレの形態学的特徴を見ると、そもそも歩くように骨ができていて、その足(?)運びは、まるでトカゲやワニなどのように、まさに4足歩行。
パプアニューギニアのダイビング大使の石川肇カメラマンが初めてこのサメが歩くのを見た時、「コモドドラゴンみたいだった」と言っていたのですが、納得です。

また、ヒョウ柄の模様がチャーミング。
板鰓類(編注:ばんさいるい=サメやエイの仲間)は地味な種類が多いのですが、エポレットシャークの仲間はヒョウ柄で派手。

数少ないオシャレザメです。

エポレッドシャーク

沼口さん撮影のミッシェルズエポレット。「スチュアートリーフ」のリーフトップ、水深およそ6メートル

―――ミッシェルズエポレットは他の種類と比べてどんな印象でしたか?

見たこところ、他のエポレットシャークより体が細長く、鼻も長くてシャープな印象ですね。
まだ謎の多いサメなので、3日間くらい張り付いて観察したい……。

―――40分でも「すごいな~」と見ていたのですが、3日間! 何をするんでしょうか? (笑)

どこを歩いているか、何を食べているのか、などなど興味は尽きません。
ず~っと見ていたい。

欲を言えば、交尾が見られたら最高です。
サメの交尾はなかなか見ることができず、映像も少ないですからね。
エポレットシャークの交尾なんて、どこでも見たことないです。

―――今回は残念ながら歩くところを見られませんでしたが、歩く姿を見るコツはありますか?

まずは、あんまり驚かさないようにしたいですね。
遊泳力の高くないサメなので、驚かすと隠れて出てきてくれません。

また、基本的には夜行性なので、ナイトダイビングの方が確率は高いと思います。

ミッシェルズエポレッド

“エポレット”は“肩章”の意味。胸ビレを腕とするなら、その上にある黒斑はまさに肩章のよう

サメ天国パプアニューギニア

文献によれば、パプアニューギニアは板鰓類の宝庫で、淡水の種類も豊富。

実際、トゥフィのアウトリーフポイントは潮当たりが良く、コーナーやドロップオフで、グレリーフシャーク、ネムリブカ、シルバーチップなどのサメが優雅に目の前を行き交っています。

さらに、今回は、ハンマーヘッドシャークと遭遇!

ハンマーヘッドと沼口さん

ハンマーヘッドシャークを追いかける沼口さん。パプアの外洋ポイントでは、しばしばハンマーが登場する

サメ天国のパプアニューギニア。

シャーキビリティ(サメ、エイ全般に対する知識力や強い情熱という意味を持つ造語)の高いダイバーにはたまらない海です。

シャークジャーナリスト・沼口麻子

沼口麻子さん

■プロフィール
http://www.boa-agency.com/numaguchi.html

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PROFILE
法政大学アクアダイビング時にダイビングインストラクター資格を取得。
卒業後は、ダイビング誌の編集者として世界の海を行脚。
潜ったダイビングポイントは500を超え、夢は誰よりもいろんな海を潜ること。
ダイビング入門誌副編集長を経て、「ocean+α」を立ち上げ初代編集長に。

現在、フリーランスとして、ダイバーがより安全に楽しく潜るため、新しい選択肢を提供するため、
そして、ダイビング業界で働く人が幸せになれる環境を作るために、深海に潜伏して活動中。

〇詳細プロフィール/コンタクト
https://divingman.co.jp/profile/
〇NPOプロジェクトセーフダイブ
http://safedive.or.jp/
〇問い合わせ・連絡先
teraniku@gmail.com

■著書:「スキルアップ寺子屋」、「スキルアップ寺子屋NEO」
■DVD:「絶対☆ダイビングスキル10」、「奥義☆ダイビングスキル20」
■安全ダイビング提言集
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