二度と潜れないダイバーも!? 耳を壊しやすいスキンダイビング

耳抜き中(撮影:寺山英樹)

オーシャナで書いていたとおり、スキンダイビングはスキューバダイビングの基本スキルとして重要ですし、スキンダイビング自身、大変楽しいスポーツです。

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アプネアダイビングに至っては、最高峰のアスリートだけができる憧れのスポーツといえるでしょう。

私も少年時代に水中マスクを買ってもらってから、スキンダイビングで水中世界を知り、感動に浸ったものです。
そして、とうとうダイビングインストラクターにまでなってしまったのです。

かつて、私がCカード講習を受けた30年前は、スキンダイビングはスキューバダイビングの基本とされていて、ライセンス講習では10m程度のスキンダイビングができなくては認定されない時代でした。

しかし、それが今はPADIあたりでは「オプション」になっています。
それはなぜなのでしょうか?

耳を壊しやすいスキンダイビング

当院へは、年間500人程度の耳抜き不良スキューバダイバーが来院します。

しかし、最近はアプネア競技のスキンダイバーのみならず、ドルフィンスイムの流行で、イルカと遊ぶためのスキンダイバーが増えました。
それに伴い、外リンパ瘻によって二度と潜水ができなくなってしまう人が急激に増えています。

その多くがドルフィンスイムのスキンダイバーなのです。

ひどい場合には外リンパ瘻に陥り、一生治らない難聴、耳鳴り、めまいの後遺症になる人もいるのです。

なぜ、スキンダイビングは耳に負担が大きいの?

耳管の出入り口付近は、血流が豊富です。

頭を下にして潜るヘッドファーストでは、頭に血が上るので耳管がうっ血し、耳管が狭くなって耳抜きがしづらくなるのです。

足からゆっくりと潜降できる、いわゆるフィートファーストで潜るスキューバダイビングでは頭が上なので、この耳管のうっ血が起きません。

ですので、治療によって耳抜き不良が治らないことは滅多にありません。

これまで7000人弱の耳抜き不良スキューバダイバーの治療を行って、ほんの数人だけしか治らなかった人はいませんでした。

しかし、ヘッドファーストでは、どんなに治療や訓練しても、一定の割合で絶対に耳抜きができない人がいるのです。
正確な統計は出しておりませんが、イメージでは4〜6%程度でしょうか。

スキューバダイビングの耳抜きよりも不利な点は?

まず第1に、前述の頭が下になる事による耳管のうっ血です。

第2が、潜降速度が速いので、よほどよく抜けていなくては耳抜きが追いつきません。

第3に、スキューバでは一般的に一日に2〜3本潜る程度ですから、潜降は2〜3回しか行わないわけですが、スキンダイバーは何十回も潜降することが多いのです。
そのことによる耳への負担が大きいのです。

以上のような理由で、スキンダイビングをCカード講習時のコアスキルにしてしまうと、必ず一定の割合で(4〜6%?)カード認定をしてもらえない人が出てしまうわけです。

さらに、講習で耳を壊して難聴の後遺症になり、アメリカで訴訟が相次いだという話も聞いたことがあります。

ですので、PADIではスキンダイビングをオプションにするようになったという経緯があるようです。

スキンダイビングには向き不向きがあることを、指導者が知ること

前述のごとく、耳抜きが快適な人であれば、スキンダイビングはとても良いスポーツです。

ただし、耳抜きが良くない人が無理をすると、たちどころに大きな耳の障害を起こしてしまいます。

私はスキンダイビングを推奨しますが、指導する側は向いていない人がいることを良く認識し、無理をさせないようにすることです。

毎日のように、耳を壊して来院するスキンダイバーが増えている事を良く認識して下さい。

その様なダイバーを毎日のように、「ダイビングは一生あきらめなさい」と引導を渡す私もつらいですし、当のご本人のショックは計り知れないのですから。

耳抜きに不安のある方は、一度、三保先生の「三保耳鼻咽喉科」での受診をオススメします

耳抜きに不安のある方は、一度、三保先生の「三保耳鼻咽喉科」での受診をオススメします

スキンダイビングと減圧症

スキューバダイビングの合間や潜水後まもなくスキンダイビングをすると、体内に残っている窒素が急浮上の繰り返しによって気泡化してしまい、減圧症になる事があります。
スキューバダイビングの浮上時に、せっかく気泡化しないようにゆっくりと浮上したのに、台無しになることがあるのです。

スキューバダイビング後は十分に水面休息時間を取るように心がけましょう。

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PROFILE
医大生時代にダイビングと出会いのめり込み、ダイビングのために時間とお金を捻出するために、他の趣味をどんどんやめてしまう。
クリニック開業後、好きが高じてダイビングインストラクターになり、現在は、テクニカルダイバーとして、ケーブダイビング、リブリーザーダイビング(rEvo)、大深度ダイビング(-100m越え)などの潜水を行なっている。
また、全国から潜水医学の講演依頼があり、ダイバーおよび耳鼻咽喉科医へ正しい潜水医学の普及をすべく活動。
その後、58才で耳鼻科開業医を引退し、第2の人生でメキシコ移住。メキシコセノーテを潜り三昧の日々を送る。
 
潜水歴30年、潜水本数約3000本。
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