Q.安全停止にはどんな効果があるの?

この記事は約3分で読めます。

ダイビング歴45年・やどかり仙人のアップアップ相談室

今日は、前回に続き、
「安全停止をなぜするのか? どんな効果があるのか?」ってお話しです。
※前回は→こちら

「人体はある程度まで窒素を溶け込ませることができ、溶け込ませたままにしておける。
そして安全に窒素を排出させることができる。しかし、組織に溶け込んだ窒素と
ダイバーを取り巻く周囲の圧力(水面なら大気圧)の差が限界を越えると、
体内に気泡が形成されて、減圧症が起きるとされている」

ダイバーなら、以上のような現在の減圧理論はご存じでしょう。

このような減圧理論は、多くの減圧理論の中でも、
組織に溶け込んだ窒素の圧力を重視するので、”溶解理論”といいます。
最も多くのダイブコンピューターに採用されている
ビュールマンモデルはその代表的存在であります。

ところが、この理論をもとに計算された無減圧リミットを守れば、
気泡はできなかったはずだったのですが、
無減圧リミットを守っても気泡ができていることがわかり、
つまり、この減圧理論の外にグレーゾーンがあることが分かってきたのです。
その対応手段として、本来はリクリエーションダイビングではタブーだった減圧停止に、
安全停止と名前をつけたというのが、ことの始まりであります。

安全停止はなぜ?のお話に入る前に、
一定の浮上スピードであっても、実際に水面に近づくほど、
周囲の圧力、つまり水圧は大きく下がることを思い出していただくとありがたい。
そして、思い出していただければ、溶解理論では、
減圧停止でも、安全停止でも、浅いところほど人体組織と周囲の圧力差が大きく、
窒素の排出も早いということが分かっていただけるでしょう。
ここでのキーワードは浅いところでの停止です。

一言で言えば、窒素を体にたっぷり溜め込んだまま、
気泡にならないギリギリの深度まで浮上してきて(大きな圧力差を作って)
すばやく放出しようというのが考え方の基本。

そのギリギリの深度が水面ならば無減圧ダイビングというわけで、
3mとか6mであれば、減圧停止ダイビングということになります。
ダイブコンピューターで言えば、デコストップです。
無減圧ダイビングのギリギリの深度0mに(水面)に着く前に、
いったん止まって、窒素を排出する機会を作って、
ギリギリの圧力比にならないように余裕をもちましょうというのが
安全停止ということになりますな。

さて、本題。
安全停止の効果ってなに?と聞かれれば、
ずばり、組織の圧力を下げることでしょう。

水面に出る前に少しでも人体に溶け込んだ窒素を排出することを
組織圧力を下げるなんて難しい言葉でいいます。
組織なんていうとどの臓器なんて想像しますが、
ここでは単に人体という意味ととらえておいてよいでしょう。

特に最近では、浮上後30分から1時間後ぐらいに
サイレントバブルがピークになることが分かってきて、
さらに安全停止で組織圧力を下げておく必要性が強調されております。

さて、海外でGWを満喫しているであろう和尚の「留守はよろしゅう!」という
酷い仕打ちにもめげず、明日は「なぜ5mに3分間なのか?」を送りして、
安全停止のお話は完結しようと思います。

\メルマガ会員募集中/

週に2回、今読んで欲しいオーシャナの記事をピックアップしてお届けします♪
メールアドレスを入力して簡単登録はこちらから↓↓

PROFILE
1964年にダイビングを始め、インストラクター制度の導入に務めるなど、PADIナンバー“伝説の2桁”を誇るダイビング界の生き字引。
インストラクターをやめ、マスコミを定年退職した今は、ギターとB級グルメが楽しみの日々。
つねづね自由に住居を脱ぎかえるヤドカリの地味・自由さにあこがれる。
ダイコンよりテーブル、マンタよりホンダワラの中のメバルが好き。
本名の唐沢嘉昭で、ダイビングマニュアルをはじめ、ダイビング関連の訳書多数。
FOLLOW