これからどうなる安全停止!?

ダイビング歴45年。やどかり仙人のぶつぶつ多事争論。

前々回前回と、取りとめなく安全停止の話をしてまいりましたが、
「結局、したほうがいいのか、しなくてよいのかよくわからん!」と、
元某大学潜水部のテラ和尚からクレーム。そこでそろそろ締めくくりにはいましょう。

たぶんたぶんであります。

短時間のエキストラの停止である安全停止は、事実上の減圧停止に姿を変えて、
もっと長い停止に変わっていくでしょう。

理由は、コンピューター・ダイビングの普及は、
深いダイブと浅いダイブを1回のダイブの中で行なうマルチレベルダイビングの傾向が強くなり、
否応なく窒素の吸収の早い組織、遅い組織の両方に限界近くまで、窒素をためこむことなるからですな。

つまり、計算上手なダイブコンピューターは、
浮上することによるダイビング時間の延長と引き換えに、
どんどんと、体に負担のかかるダイビングをさせてくれることになります。
これはダイブコンピューターの宿命ですな。

となると、ダイブコンピューターを使ったダイビングで、
この高まったリスクを解消するには、窒素を限界までためないことですな。
そのためには、ダイビング時間を短縮するか、
たまってしまった窒素を体から排出する機会を作る、
つまりもはや安全停止といえないような長い停止をするしかありませんな。

DANの創設者のピーター・ベネット博士などは、
現在の安全停止(浅いところでやるので、シャローストップ)に加えて、
そのダイブの最大深度の半分のところでの安全停止
(深いところでするのでディープストップ)を付け加えることを提唱
されておりますな。

1回のダイビングで2回の停止これは大変ですぞ。

閉鎖式回路リブリーザーを使うリクリエーション・ダイビングがスタート目前です。
圧倒的に長時間のダイビングが可能になります。
これまた、無減圧ダイビングというリクリエーション・ダイビングの建前を脅かす、
あるいはひっくり返すことになります。

ということは、安全停止なんて本来しなくてもいいのに「ぜひやりなさい」
というインフルエンザのワクチンみたいな、
妙にあいまいなダイビング・テクニックは姿を消すかもしれないということであります。

それどころか、“リクリエーション・ダイビングは無減圧ダイビング”
というルールが有名無実になりかねない状況
なんですよ。

 

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PROFILE
1964年にダイビングを始め、インストラクター制度の導入に務めるなど、PADIナンバー“伝説の2桁”を誇るダイビング界の生き字引。
インストラクターをやめ、マスコミを定年退職した今は、ギターとB級グルメが楽しみの日々。
つねづね自由に住居を脱ぎかえるヤドカリの地味・自由さにあこがれる。
ダイコンよりテーブル、マンタよりホンダワラの中のメバルが好き。
本名の唐沢嘉昭で、ダイビングマニュアルをはじめ、ダイビング関連の訳書多数。
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